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どのようなConstraint-induced movement therapyが急性期で効果を示しているのか?

UPDATE - 2021.5.12


1, 急性期のConstraint-induced movement therapy(CI療法)は効果がないと言われる所以について



脳卒中後に生ずる上肢麻痺は,Quality of lifeに悪影響を与える因子とされており,脳卒中患者に対するリハビリテーションの中でも直近で取り組まなければならない課題の一つとされている.


脳卒中後の上肢麻痺に対するアプローチの中で,特に効果のエビデンスが確立されている介入の一つにCI療法がある.


これらの治療法は,American Heart / Stroke Associationや脳卒中ガイドラインなど,複数の国や地域におけるガイドラインで高い効果のエビデンスと推奨度を誇っている.


さて,脳卒中後の上肢麻痺に対するアプローチとして,評価の高いCI療法ではあるが,急性期・亜急性期においては,その効果に対して,疑義を持たれている側面もある.


その理由となっているエビデンスは,Dromerickら1のランダム化比較試験の結果である.


Dromerickら1は,発症から14日以内の超急性期の脳卒中患者を,1)1日3時間の麻痺手に対する集中練習と日常生活活動(Activity of Daily Living: ADL)における1日の起床時間の90%以上非麻痺手の拘束を行う群,2)1日2時間の麻痺手に対する集中練習とADLにおける1日5時間の非麻痺手の拘束を行う群,3)1日2時間の一般的な作業療法を行い,ADLにおける非麻痺手の拘束は行わない群,といった3群にランダムに割り付けた.


そして,CI療法による介入の前後と,介入から6ヶ月後に麻痺手の機能を測るアウトカムを測定した.


その結果,介入から6ヶ月までの麻痺手の機能を示すアウトカムの推移は,2)1日2時間の麻痺手に対する集中練習とADLにおける1日5時間の非麻痺手の拘束を行う群,3)1日2時間の一般的な作業療法を行い,ADLにおける非麻痺手の拘束は行わない群の間には,有意な差が認められなかったが,1)1日3時間の麻痺手に対する集中練習とADLにおける1日の起床時間の90%以上非麻痺手の拘束を行う群は,3)1日2時間の一般的な作業療法を行い,ADLにおける非麻痺手の拘束は行わない群,に比べて有意に,介入後6ヶ月までの麻痺手の機能を示すアウトカムの推移が悪かった.


この結果を取り上げて,『急性期において,CI療法は効果が認められない』と示されていることが多い.




2,どのようなCI療法が急性期に効果が示されているか?



さて,前項で述べたように,急性期においては,CI療法は効果が認められない,それどころか,むしろ麻痺手の機能予後を悪化させ,害となる可能性まで示唆されている.しかしながら,Liuら2のシステマティックレビュー・メタアナリシスを読み解くと,その解釈も変わってくる.


Liuらは,メタアナリシスを実施する際に,急性期・亜急性期に実施されたCI療法の効果に対して,『練習時間(高い強度のCI療法:1日3時間以上の練習かつ1日の起床時間の90%以上の非麻痺手の拘束,低い強度のCI療法:1日2時間以下の練習量かつ1日5時間以下の非麻痺手の拘束)』に応じたサブ解析を実施している.


Action research arm testに関するメタアナリシスでは,高強度の2つの研究では,加重平均値は2.02(-7.18-11.29)と対照群に比べて有意な変化を認めなかった.


しかしながら,低強度の5つの研究では,加重平均値は8.34(1.98-14.71)と対照群に比べ,有意な変化を認めたとされていた.


また,同じ研究の中では,Fugl-Meyer Assessmentやmodified Barthel indexについても同様の解析が実施されている.


それらの解析では,高強度・低強度ともに対照群に比べ,有意な麻痺手の機能改善を認めて言うものの,その95%信頼性の範囲は,2つのアウトカムともに,低強度のCI療法の方が比較的高かった.


また,本研究では16本ものランダム化比較試験が取り上げられているが,その中でも,特に2009年に発表されたDromerickらのランダム化比較試験の結果が,他の同病期に実施された試験よりもずば抜けて悪い結果が示されている.


ランダム化比較試験は,エビデンスを示す上で,システマティックレビュー・メタアナリシスに次ぐ信頼性がある.


しかしながら,Tajikaらは,ランダム化比較試験と言っても,特に小規模なものは,結果が覆るまたは,効果量が小さくなる場合があるとも述べていることからも,一つのランダム化比較試験の結果から断定するのではなく,多角的な解釈を通して,効果の因子を検討することが必要である.




<引用文献>

1,Dromerick AW, et al. Very early constraint-induced movement during stroke rehabilitation (VECTORS): A single-center RCT. Neurology 73: 195–201, 2009

2,Xi-hua Liu, et al: Constraint-induced movement therapy in treatment of acut and sub-acute stroke: a meta-analysis of 16 randomized controlled trials. Neural Regen Res 12: 1443-1450, 2017

3,Tajika A, et al: Replication and contradiction of hihly cited research papers in psychiatry: 10-year follow-up. Br J Psychiatry 207: 357-362, 2015




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