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上肢麻痺のリハビリテーションに用いられるロボットの種別(1)

UPDATE - 2021.5.27


End-effector rehabilitation robotについて

 
 脳卒中後上肢麻痺に対して、エビデンスが確立されているアプローチにロボット療法がある.このアプローチ方法は,麻痺手をロボットに装着し,対象者のイメージや随意運動をロボットがアシストした環境下で実施し,練習量を確保する手法である.エビデンスとしては,American Heart / Stroke Associationやその他のガイドラインにおいても推奨度が高く設定されており,エビデンス のレベルも高いと公表されている.さて,ロボット療法(英語名ではRobotic Assisted Training)として,一括りにされているが様々な種別のロボットが世の中には公表されている.今回は,それらのうちの一つ”エンドエフェクター型リハビリテーションロボットシステム(End-effector rehabilitation robot)”について解説していく.

 エンドエフェクター型リハビリテーションロボットシステムとは,患者の手部や前腕部など,上肢の一部がロボットと接触し,結合しているタイプのロボットを用いたリハビリテーションシステムを指している.つまり,接触部は上肢のみで,次回解説する”エクソスケルトン型リハビリテーションロボットシステム(Exoskeleton Rehabilitation Robot)に比べると比較的独立した機構を有するシステムである.例えば,海外でもよく使用されている米国のマサチューセッツ工科大学が開発したMIT-munus(InMortion ARMTM)やドイツのFree Universty Berlinが開発したBi-Manu-TrackTM,日本でも最近取り上げられることが多くなっているオーストラリアのGraz University of Technologyが開発したAmadeoTMや帝人ファーマ株式会社が開発しているReoGo-Jなどの機器がエンドエフェクター型リハビリテーションロボットシステムにあたる.

 さて,近年のエンドエフェクター型ロボットの歴史は1993年Lumら1)が開発した”hand object hand system”から始まったとされている.hand object hand systemは,2箇所のクランププレートに麻痺手を固定した状態で,患者がロボットを操作するもので,エンドエフェクター型ロボットの先駆けと言って差し支えないと思われる.さらに,1995年にLumら2)は手でロボットアームを持ち上げる形で練習を行うBimanual lifting rehabilitatorを開発し,3名の対象者に探索的に使用し,良好な結果を示したと報告している.この開発が起点となり,様々な開発が進み,エンドエフェクター型リハビリテーションロボットシステムのバリエーションは徐々に増加していく.

 1995年には世界のリハビリテーションロボット領域においても最も功績を残している一人であるKrebsらが,MIT-munusを開発した.MIT-munusは手先具のモジュールを変更することで,肩肘,手関節,手指に対する練習を支援することが可能なロボットである.また,比較的早期にランダム化比較試験を用いた対照となるリハビリテーション手法との比較を行い,有意な上肢・手関節・手指の機能改善をFugl-Meyer Assessment,Box and Block Test,Jebsen-Tylor testなど,既存のリハビリテーションにおけるアウトカムを通して証明を行った3).

 2000年には,スタンフォード大学がMINEを開発した.MINEは設置された鏡に映る自己の対側の良好な手の動きを確認しながら練習を行うといったミラー療法のコンセプトを取り入れた機器である4).また,2002年には,世界で初めてバーチャルリアリティ技術を取り入れたGENTLESなども開発された.これらの機器は,ランダム化比較試験までは実施されていないが,介入前後によって良好な麻痺手の機能回復を示した5).

 本邦では,2008年から2010年にReoGo-Jの前身機であるイスラエルのMotorika社が開発したReoGoを用いたランダム化比較試験が行われ,2016年に結果がStroke誌に報告されている6).この研究では,亜急性期の対象者に一般的なリハビリテーションとReoGoを用いた自主練習を行なった群と,一般的なリハビリテーションと一般的な自主練習を行なった群に対象者をランダムに割り付け,比較検討を行った.結果,ReoGoを用いた自主練習を実施した群の方が,一般的な自主練習を行なった群に比べて,有意に上肢機能が改善したと報告した.

 これらのような歴史の中で,今もなお,エンドエフェクター型リハビリテーションロボットシステムは開発を進められている.これらの内容から,筆者は,ロボット療法と一括りにされている中で,様々な形態のロボットが存在することを理解しておくことも必要であると考えている.


<参考文献>


1,Lum PS, et al. Feedforward stabilization in a bimanual unloading task. Experimental Brain Researc 89: 172–180, 1992
2,Lum PS, et al: The bimanual lifting rehabilitator: an adaptive machine for therapy of stroke patients. IEEE Transactions on Rehabilitation Engineering 3: 166–174, 1995.
3,Kahn LE, et al. Robot-assisted reaching exercise promotes arm movement recovery in chronic hemiparetic stroke: a randomized controlled pilot study, Journal of Neuroengineering and Rehabilitation 3: 12–290, 2006.
4,Daud OA, et al. Performance evaluation of a VR-based hand and finger rehabilitation program. in 2011 IEEE International Symposium on Industrial Electronics, pp. 934–939, Gdansk, Poland, June 2011.
5,Amirabdollahian F, et al. Multivariate analysis of the Fugl-Meyer outcome measures assessing the effectiveness of GENTLE/S robot-mediated stroke therapy. Journal of NeuroEngineering and Rehabilitation 4: 4, 2007.
6,Takahashi K, et al. Efficacy of upper extremity robotic therapy in subacute post stroke hemiplegia: An exploratory randomized trial. Stroke 47: 1383-1388, 2016


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