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竹林崇先生のコラム

脳卒中後上肢麻痺に対して,ロボット療法と組み合わせるのは,Constraint-induced movement therapy(CI療法),両手動作練習のどちらが良いか?

UPDATE - 2020.4.27

■抄録

 近年,脳卒中後上肢麻痺に対する多くのランダム化比較試験が認められている.ただし,多くの研究が対照群に『通常のアプローチ』を設定しており,アプローチ間の比較検討が不十分な現状がある。本稿では,それらの一助となる異なった介入同士の比較について,解説を行う

 

 

■目次
1.脳卒中後の上肢麻痺に対する研究
2.比較の背景
3.両手動作練習とCI療法
4.3つの療法の特徴の違い

 

 

1. 脳卒中後の上肢麻痺に対する研究

 2000年代初頭のConstraint-induced movement therapy(CI療法)の台頭により,脳卒中後上肢麻痺に対するアプローチにおいて,多くのランダム化比較試験による効果検証が進められてきた.しかしながら,多くの研究において,比較対象となる対照群に設定されているのが,『通常の理学療法・作業療法,リハビリテーション』といった一般的なアプローチが設定されている.さて,一般的なアプローチとの比較でも,ある特異的な介入については検証をすることができる.ただし,臨床家が本当に知りたいと思っている,『どういった対象者に,どのようなアプローチが適応であり,どの程度の効果があるのか?』という事実については,前述の一般的なアプローチとの比較だけでは明らかでない点が多い.

 

 これらの疑問を解決するためには,対照群に一般的なリハビリテーションアプローチではなく,『効果が証明されている特異的なアプローチ』を設定し,比較することが重要となる.今後,こちらのコラムではこういった療法間の比較検討について多く触れていきたいと思っているが,本稿では『脳卒中後上肢麻痺に対して,ロボット療法,CI療法,両手動作練習』に関する知見について紹介を行う.

 

2. 比較の背景 

 脳卒中後上肢麻痺に対するアプローチとして,ロボット療法,CI療法,両手動作練習,が挙げられている.これらのアプローチは,比較的エビデンスが確立されており,ロボット療法やCI療法に関しては,American Heart/Stroke Association(アメリカ心臓/脳卒中学会)においてエビデンスが証明されている.さらに,両手動作練習についても,複数の研究者によって,その効果が示されている1, 2.これらの両手動作練習に関する論文を読み解いていくと,上記で示したように,対照群に一般的なアプローチ方法だけでなく,エビデンスが確立されているCI療法を設定しているものが認められる.いかに,これらの知見から,両手動作に関して,両手動作練習とCI療法の違いに関して解説を行う.

 

3. 両手動作練習とCI療法の違い

例えば,Linらの2009年の論文では,生活期の脳卒中患者60名の対象者を,両手動作練習を実施した群,CI療法を実施した群,神経筋促通術および代償的なADL練習を実施した群(対照群),の3群にランダムに割付け,比較検討を行なった.その結果,麻痺手の機能・運動障害が,対照群に比べ,両手動作練習およびCI療法において,有意に改善した.また,麻痺手の近位の機能・運動障害については,両手動作練習がCI療法に比べ,有意な改善を示したと報告している.一方,実生活における麻痺手の使用頻度およびQuality of lifeに関しては,CI療法が両手動作練習および対照群に比べ有意な改善を認めたと報告している.Linらの2010年の研究では、その比較対象を両手動作練習とCI療法に絞って比較を行っている.この研究では,生活期の脳卒中患者33名を,CI療法を実施する群,両手動作練習を実施する群にランダムに割り付け,比較検討を行なった.結果は,両手動作練習は,CI療法に比べ,麻痺手の機能・運動障害の有意な改善を認めた.特に,両手動作課題のオンラインエラーと時間的・空間的操作能力において,両手動作練習はCI療法に比べて有意な改善を認めた.一方,実生活における麻痺手の使用頻度においては,CI療法が両手動作練習に比べ,有意な改善を認めたと報告している.

 

 これらから明らかになった事実は,両手動作練習は,実生活で必要になる両手動作の協調性および麻痺手の機能・運動障害の改善については,CI療法よりも優れているものの,実生活における麻痺手の使用行動に対する影響力は劣るということが示唆された.

 

4. 3つの療法の特徴の違い

 Hangらは,30名の生活期の脳卒中上肢麻痺を呈した対象者を,ロボット療法とCI療法を実施した群,ロボット療法と両手動作練習を実施した群,ロボット療法を2クール繰り返した群の3群で比較している.この研究では,麻痺手の機能・運動障害を示すFugl-Meyer AssessmentとChedoke arm and hand activity test,アプローチ前に計画を立てた目標の達成度を示すGoal attainment Scaling(GAS)を測定した.結果は,GASの結果のみ,ロボット療法に両手動作練習を加えた群が他の2群より有意な改善を認めたと報告した.上記で示した論文のように,麻痺手単独の使用頻度に触れていない所が残念ではあるが,両手を必要とする目標達成には両手動作練習は必要な要素である可能性が示唆されている.

  

 

■動画資料

 

 

■謝辞

 本コラムは,当方が主催する卒後学習を目的としたTKBオンラインサロンの朋成畠氏,石川弘明氏,堀本拓究氏,高瀬駿氏に校正のご協力をいただきました。心より感謝申し上げます。

 

 

■執筆者
竹林崇 先生
作業療法士
大阪府立大学
地域保健学域 総合リハビリテーション学類
作業療法学専攻 教授

 

 

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■引用文献

 

1、Lin K, et al: The effects of bilateral arm training on motor control and functional performance in chronic stroke: A randomized controlled study. NeuroRehabil Neural Repair 23: 441-448, 2009

2、Lin K, et al: The effects of bilateral arm training on motor control and functional performance in chronic stroke: A randomized controlled study. NeuroRehabil Neural Repair 24: 42-51, 2010

3、Hung CS, et al: Hybrid rehabilitation therapies on upper-limb function and goal attainment in chronic stroke. OTJR: 1-8, 2019

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