TOPICS

お知らせ・トピックス
竹林崇先生のコラム

専門家である療法士以外のConstraint-induced movement therapyの試み

UPDATE - 2020.5.22

■抄録

 脳卒中片麻痺患者に対する上肢麻痺に対するアプローチは,『療法士』だけのものではない.むしろ,近年は,直接介入よりも適切な練習環境の設置等,マネジメントが重要とも考えられている.本稿では,療法士以外によるConstraint-induced movement therapyの現在を解説する

 

 

■目次

1.リハビリテーションは療法士『だけ』のものか
2.病棟実施型のCI療法
3.家族実施型のC I療法について

 

 

1. リハビリテーションは療法士『だけ』のものか
 本邦の医療環境を取り巻く財政は非常に厳しいものがある.毎年,診療報酬点数の調整・削減が実施され,右肩下がりで診療報酬点数は減少している.そう言った中で,如何に診療に関わるコストを下げるかは重要な観点と常々考えられている.

 

 例えば,今までの職能団体の思考としては,『対象者が意味のある回復を得られるように療法士の関われる時間を増やす』『意味のある結果をもたらした場合に加算や成果報酬を取り付ける』という観点のもと,政治や行政に求めることが多かった.しかしながら,その試みは身を結ばず,診療報酬点数はジリジリと減少している.その負担は現場の療法士の労働時間と良心を締め付け,現場は疲弊している.

 

これらの問題は現場に丸投げされているのが現状であるが,近年,上記の従来型の職能団体の働き方に対するアプローチとは別に,医療コストを必要としない人材を療法士がマネジメントし,療法士の介入時間以外の別途アプローチのマネジメントに注目が集まっている.脳卒中後の上肢麻痺に対するアプローチについても,このような取り組みは随所で広がってきている.本稿では,Constraint-induced movement therapy(C I療法)について,現在行われている介入について解説する.

 

 

2. 病棟実施型のCI療法

 専門家である療法士ではなく,病棟看護師の協力下でCI療法を運用する病棟実施型CI療法がある.こちらについては,我々が回復期,急性期において,効果検証を進めている.1), 2)回復期については,前向きのケースシリーズであるが,臨床上意味のある最小変化量を超える麻痺手の機能・運動障害の向上を認めている.さらに,急性期では,従来のCI療法よりも病棟実施型CI療法の方が麻痺手の有意な使用頻度の向上を認めた.ただし,通常のリハビリテーション介入を実施した群と通常のリハビリテーションに加え,病棟実施型CI療法を実施した群の比較を行ったケースコントロール研究では,麻痺手の機能・運動障害の有意な変化を認めなかったことも解っている.

 

 

3. 家族実施型のC I療法について

 我々のグループでは,病院内に入院しリハビリテーションを実施していく際にも,『家族実施型CI療法』4-6,という療法士と家族が連携し,CI療法のコンセプトを分業するシステムの提案を行なっている.実際に,理学療法の分野では病棟内歩行練習を家族や他職種に依頼することはよくある.その上肢練習バージョンを構造化し,システムとして日常的に稼働することが重要である.本邦では我々のグループが事例報告レベルではあるが具体的な内容を報告しているので参考にされたい.これらの報告では,基本的に入院中のリハビリテーションにおいて,作業療法士が関わる約1時間のアプローチの間に,その日の自主練習で実施する練習課題やその難易度調整を決定し,それを家族に同席してもらい教育を行う,もしくは家族に伝える媒体を作成する.そして,その教育もしくは媒体をもとに,作業療法士が関わる1対1のリハビリテーションの時間以外で家族をコーチとして自主練習を実施するというものである.

 

家族実施型のCI療法については,Barzelら7が,療法士に教育を受けた家族が週1回CI療法を実施した群と,同時間療法士が1対1のリハビリテーション(ボバースコンセプト,Proprioceptive neuromuscular facilitationをはじめとした手技を利用した介入)を実施した群を比較した際,麻痺手の機能・運動障害の改善に有意な差は認めなかったが,実生活における麻痺手の使用頻度については,家族が実施したCI療法の方が有意な改善効果を認めたと報告した.これらは,生活期の脳卒中患者を対象としており,完全に自宅での実施という形で進められている.上記の病棟実践型CI療法よりも,対象者とコーチとしての家族が療法士から独立して運用していくアプローチ方法である.

 

さて,自宅における家族実施型のCI療法については,海外の取り組みの中で,対象者および家族共々概ね成功していると主体的に感じている場合が多いとのStarkら8の報告がある.実際に自宅でCI療法を実施した対象者と家族に対するインタビューでは,CI療法を通して,アプローチと仕事,家庭の役割を両立していく中で,効率という側面で重要な役割を担うと参加者は認識しているとのことであった.ただし,対象者と療法士以外のコーチによる練習を行なった際に,練習におけるポジティブな経験,アプローチに関する意見,動機やストレスに対する認識の違いについて問題視するコメントもあった.これらに対して,療法士のマネジメントが必要になることが予測できる.

 

一般的に,対象者が自宅にて,単独で練習を継続するのは非常に困難であると考えられており,このアプローチ継続に関する問題を,医療コストをかけずに解決できる実現可能な方法として提案されている.

 

このように,上肢麻痺に対するアプローチにおけるマネジメントに関してのニーズが上がりつつある.今後,療法士の必要な能力として,リハビリテーションアプローチにおけるマネジメント能力が必須になると思われる.

 

 

■謝辞

 本コラムは,当方が主催する卒後学習を目的としたTKBオンラインサロンの原田薫氏,須藤淳氏,池田浩旦氏,高瀬駿氏に校正のご協力をいただきました。心より感謝申し上げます。

 

 

■執筆者

竹林崇 先生
作業療法士
大阪府立大学
地域保健学域 総合リハビリテーション学類
作業療法学専攻 教授

 

 

■ご案内

これらのトピックスは、リハテックリンクス株式会社が運営する『リハデミー』にて掲載されているトピックスです。リハビリテーションに関する500時間を超える豊富な動画資料と700記事を超える研究論文の翻訳・要約版を取り揃えております。現在1ヶ月無料キャンペーン中!こちらも是非ご利用ください。
(リハデミー: https://rehademy.com/special/register

 

 

■引用文献

1、山本勝仁,他: 脳卒中急性期上肢麻痺患者に対する病棟実施型CI療法の効果.作業療法,印刷中

2、徳田和宏,他.脳卒中後上肢麻痺における急性期傾向スコアデータプールの構築について.作業療法,印刷中

3、西村翔太,他:回復期リハビリテーション病棟入院中の脳卒中患者に対する病棟実施型CI療法の試み- ケースシリーズスタディ.作業療法37: 96-103

4、掘翔平,他: 家族参加型の自主練習とTransfer packageを実施し,麻痺手の使用行動に変化を認めた一例.作業療法 38: 593-600, 2019

5、原田朋美,他: 家族参加型の上肢集中練習により希望であった麻痺手での作業を達成できた一症例.作業療法36: 437-443, 2017

6、山本勝仁,他: 脳卒中亜急性期での家族仲介型CI療法によりADL・上肢機能に改善を認めた1例.作業療法ジャーナル51: 615-619, 2017

7、Barzel A, et al: Home-based constraint-induced movement therapy for patients with upper limb dysfunction after stroke (HOMECIMT): a cluster-randomised, controlled trial. Lancet Neurol 14: 893-902, 2015

8、Stark A: Stroke patients’ and non-professional coaches’ experiences with home-based constraint-induced movement therapy: a qualitative study. Clin Rehabil 33: 1527-1539, 2019

前の記事

上肢切断者に対する義手の操作向上のためのConstraint-induced movement therapy

次の記事

有酸素運動とConstraint-induced movement therapyの関係性