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竹林崇先生のコラム

橈骨神経麻痺に対するConstraint-induced movement therapy

UPDATE - 2020.8.23

 

 

■抄録

 Constraint-induced movement therapy(CI療法)は脳卒中後の上肢麻痺に対するアプローチとしてエビデンスが確立されている.近年では,脳卒中以外の障害に対しても,試行錯誤がなされている.本稿では,橈骨神経麻痺に対するCI療法について,解説していく.

 

 

■目次

1. 橈骨神経障害について
2. 橈骨神経障害に対するConstraint-induced movement therapyの実際

 

 

1. 橈骨神経障害について

 橈骨神経障害とは,なんらかの原因により,末梢神経の一つである橈骨神経が障害され,感覚障害や痺れといった異常感覚,運動麻痺などを生じる病態である.特徴的な所見としては,下垂手,下垂指などが上げられる.下垂手は手関節の背屈障害を示すもので,下垂指は手指のMP関節の伸展障害が主症状である.また,感覚障害や異常感覚が生じる場所としては,Ⅰ〜Ⅲ指の手背面,Ⅰ指の側面に生じるとされている.

 

 

 橈骨神経障害が生じる原因としては,骨折等の外傷による橈骨神経の圧迫や損傷によるところが多い.身近なところでは,腕枕症候群やハネムーン症候群など,長時間対象部位に圧迫が起こることで生じる.また,疾患では,ガングリオンや腫瘤,腫瘍,神経難病に伴う神経炎,などが挙げられる.

 

 

 圧迫による一時的な麻痺については,保存的治療が用いられるが,骨折や脱臼などの外傷や腫瘤によるものは,早期の手術が必要となる.また,神経炎に伴う症状は,神経炎の原因となる疾患の治療が進められる.また,神経の損傷が疑われる際には,メチコバールやビタミンB12などの内服薬が処方される場合が多い.

 

 

 また,回復予後についても不明瞭な部分は多々残されているが,近年の研究では,神経修復過程における機能的転帰に関して,末梢神経系因子よりも中枢神経系因子の方がより影響力が強いと報告されている1),2).従って,中枢神経に対して実績を持つアプローチを末梢神経障害によって生じた機能・運動障害に応用することが一部の研究者の間で,考えられている.

 

 

2. 橈骨神経障害に対するConstraint-induced movement therapyの実際

 Rostamiら3)が,2015年にABAデザイン(A期にCI療法を実施,B期は何も実施しなかった)を用いて,正中神経障害および橈骨神経障害を呈した患者にCI療法を実施している.内容としては,健手をスプリントで固定・抑制し,起床時の90%程度,健康手を固定した状態で生活を実施し,加えて集中練習を1日1時間,週5日,4週間にわたって集中的に提供している.麻痺手の機能を測るアウトカムとしては,Semmes-weinstein monofilaments(SWM)にて感覚障害を,Box and Block test(BBT)にて,上肢の機能・運動障害を,実生活における麻痺手の使用障害に対する質問表(Disabilities of arm, shoulder, and hand questionnaire: DASH)を用いて測定している.これらの結果,介入実施後に麻痺手の感覚障害の変化は認めなかった.しかしながら,BBTによる麻痺手の機能・運動障害については,最小可変量を超える改善が確認された.また,DASHも大幅に向上した.また,B期においてもA期にて改善された麻痺手の機能は維持され,さらに,2度目A期にてさらに全ての麻痺手の機能・運動障害に関するアウトカムが向上したと報告した.

 

 

 これらの知見をベースに同じ筆者ら4)が,小規模のランダム化比較試験を実施している.36名の橈骨神経麻痺を呈した対象者を,1)対象者にとって意味のある活動を含むCI療法を実施した群,2)非健手は拘束し,集中練習を行うが,単純な運動を繰り返し実施した群,3)健手を拘束せずに,一般的な機能練習を実施した群(対照群),にランダムに割り付け,介入を実施した.1),2)の群は,1日3時間の集中練習を週3日間,4週間実施した.3)の群は毎日1.5時間の練習を4週間実施した.麻痺手の機能を測るアウトカムとしては,作業遂行度・満足度を測るCanadian occupational performance measure (COPM),BBT,2点識別覚,DASHを用いた.評価は,介入前後および介入後1ヶ月に実施された.結果,1),2)の介入群は,3)の対称群に比べ,全てのアウトカムにおいて有意な改善を認めた.さらに,1)の群は,2)の群に比べ,COPMの遂行度および満足度ともに有意な改善を認めた.また,BBTと2点識別覚,DASHについても,介入後一ヶ月の時点で,1)の群が2)の群に比べ有意な改善を示した(表1).

 

 

 これらの結果から,対象者にとって意味のある作業に焦点を当てたCI療法は,橈骨神経麻痺に対するリハビリテーションアプローチとして意味のある手法となる可能性が示唆された.

 

 

■謝辞

 本コラムはTKBオンラインサロンの高瀬駿氏,田中卓氏,堀本拓究氏,に校正の協力をいただき,発刊しました.心より感謝申し上げます.

 

 

■引用文献

1、Taylor KS, et al: Cutting your nerve changes your brain. Brain 132: 3122-3133, 2009

2、Lundborg G, et al: Enhanced sensory relearning after nerve repair by using repeated forearm anaesthesia: aspects on time dynamics of treatment. Acta Neurochir Suppl 100: 121-126, 2007

3、Rostami HR, et al: Feasibility of the modified constraint-induced movement therapy in patients with median and ulnar nerve injuries: a single-subject A-B-A design. Clin Rehabil 29: 277-284, 2015

4、Rostami HR, et al. Occupation-based intervention versus rote exercise in modified constraint-induced movement therapy for patients with median and ulnar nerve injuries: a randomized controlled trial. Clin Rehabil 31: 1087-1097, 2017

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