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竹林崇先生のコラム

外骨格型の下肢に対するロボット療法について

UPDATE - 2020.10.12

 

 

■抄録

ロボットリハビリテーションは脳卒中後のリハビリテーション において,エビデンスレベルAと言われており,推奨されている.しかし,結果に関しては,機器ごとに詳細に分析を進める必要がある.今回はHALについての知見の今を解説する .

 

 

■目次

1. 脳卒中後の下肢練習について
2. HALの脳卒中後下肢麻痺に対する研究
3. まとめ

 

 

1. 脳卒中後の下肢練習について

 脳卒中において片側麻痺は一般的な症状であり,その症状は脳卒中患者の歩行機能にも大きな影響を与えることが知られている.昨今まで多くの練習方法が試行されており,その方法は,神経筋促通術,反復的な課題指向型アプローチ,装具療法,体重負荷/免荷式のトレッドミルを用いた練習など,多岐にわたっている.また,昨今ではより多くの練習量を電気制御の機器によって支援する練習方法(Electromechanically-assisted gait training: EAGT)を理学療法に含んだ練習が結果を残しているとの報告が一部に見られる1)

 

 

 本邦におけるEAGTとして,Hybrid Assistive limb(HAL)がある.HALは外骨格型のロボットとされており,装着者の自発的な動作に連動した制御システムを有している.この機器を用いて,実際のリハビリテーション 場面における歩行練習がなされている.本邦では,一部の神経難病(注*)について,保険適応がなされており,実臨床において運用がなされているロボットの一つである.

 

 

(注*)脊髄性筋萎縮症,球脊髄性筋萎縮症,筋萎縮性側索硬化症,シャルコー・マリー・トゥース病,遠位型ミオパチー,封入体筋炎,先天性ミオパチー,筋ジストロフィーに対して,入院や外来診療費を除く、HALによる歩行運動処置料(保険点数)は(1)初回から9回目までの導入期5週間まで算定できる点数は1回当たり3800点、(3)それ以降は1回当たり1800点―となる.

 

 

2. HALの脳卒中後下肢麻痺に対する研究

 HALは脳卒中後の下肢麻痺患者に対しては,Wallらが『Systematic review』と名打った論文にて,HALの亜急性期における効果を示している.しかしながら,この論文を精査した所,6件の研究は単群研究であり,1件は探索的な小規模ランダム化比較試験から構成されていた.この論文では,これらの論文のバイアスリスクに関して,Scottish Intercollegiate Guidelines Network(SIGN)の基準(SIGN, online1)に基づいて研究の質を評価しているが,全ての研究がバイアスリスクの基準を一部もしくは全く満たしていないといった最低評価の論文であった.結果,論文内の結論として,亜急性期のHALの効果を示唆している.

 

 

 多くの研究が,単群による前後比較研究を採用し,介入前後の歩行機能の有意な改善を主張する論文が多い中で,Watanabeらはランダム化比較試験を行っている.しかしながら,この試験は,盲検化がなされておらず,対象者も介入者,さらには評価者も本研究における情報バイアスを調整することが全くできていない.この中で,結果はFunctional Ambulation Categories(FAC)という評価者の主観である歩行観察から歩行の介助度を査定する検査において,HALを用いた練習を実施した群が,対照群(一般的な理学療法)に比べて有意な改善を認めたと報告している.ただし,上記にもあげたように,研究デザインの側面から疑義を残す結果となった.

 

 

 その後,Wallらが,Prospective, randomized, open labeled, blinded evaluation (PROBE)法を用いた,小規模のランダム化比較試験を実施した.この研究では,参加者32名をランダムにHALを用いた歩行練習を実施する群と,従来の理学療法を実施する群に割り付けている.両群ともに,1週間に4日,4週間の練習を実施している.しかしながら,1日当たりの練習時間の明確な定義はなく,HALを用いた歩行練習を実施する群は対象者ができる限りの距離を歩行するよう促されている(論文内には効果的な歩行時間はせいぜい60分程度との記載あり).一方,従来の理学療法を実施した群は,1日30分から60分の介入がHALを用いた歩行練習を実施する群と同じ頻度で実施されている.この結果,主要アウトカムのFAC(図1)をはじめ,副次アウトカムのFugl-Meyer Assessment,2分間歩行テスト,Berg Balance Scale,Barthel Indexにおいて,両群間に有意な差は認めなかったと報告している.さらに,この研究後の6ヶ月間のフォローアップの結果から,歩行の自立予測因子としては,治療内容による影響は検出されず,年齢による影響のみが検出された.研究の限界としては,これらの機器から最も恩恵を受け得る対象者を探索することが今後の課題と記されている.

 

 

3. まとめ

 上記のように,テクノロジーを用いた機器は多々開発され,医学的な介入方法としてのエビデンスを確立するために,疫学的手法を用いて,その効果検討がなされている.リハビリテーション領域においては,機器だけでなく,様々な手技についても同様の検証がなされるべきとされているが,多くのケースで実現していない.本研究群はそれらを実施し,事実からより良い使用方法,対象者の探索を示唆しており,非常に真摯な検証であり,医学における介入試験のあるべき姿だと思われた.

 

 

【利益相反について】

日本リハビリテーション医学会の利益相反利益相反について、筆者は、帝人ファーマ株式会社との間にコンサルテーション契約および受託研究契約を結んでいる。ただし、当利益相反については、大阪府立大学利益相反委員会の審査により、利益相反管理に関する規定運用基準に適合しており、問題はない。

 

 

■引用文献

1、Schweighofer N, et al: A functional threshold for long term use of hand and arm function can be determined: Predictions from a comoutational model and supporting data from the Extremity Constraint-Induced Therapy Evaluation (EXCITE) Trial. Phys Ther  89:1327-1336, 2009

2、Lang CE, et al: Upper extremity use in people with hemiparesis in the first few weeks after stroke. J Neurol Phys Ther 31: 56-63, 2007

3、MacLellan CL, et al: A critical threshold of rehabilitation involving brain-derived neurotropic factor is required for post-stroke recovery. Neurorehabil Neural Repair 20:740-8, 2011

4、Han CE, et al: Stroke rehabilitation reaches a threshold. PLoS Comput Biol 4: e1000133, 2008

5、Abdullahi A: Effects of number of repetitions and number of hours of shaping practice during constraint-induced movement therapy: A randomized controlled trial. Neurol Res Int 2018: 5496408, 2018

6、Waddell KJ, et al: Does task-specific training improve upper limb performance in daily life poststroke? Neurorehabil Neural Repair 31: 290-300, 2017

7、Teasell, R., Hussein, N., Viana, R., Madady, M., Donaldson, S., Mcclure, A., & Richardson, M. Stroke rehabilitation clinician handbook. London, ON: Evidence-Based Review of Stroke Rehabilitation, 2020

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