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竹林崇先生のコラム

脳卒中後に生じる痙縮について

UPDATE - 2021.11.1

<抄録>

 脳卒中後の障害の一つに痙縮という問題がある.痙縮はLanceらによって『上位運動ニューロン症候群の1つの構成要素として,身長反射の過剰な興奮生に起因する痙攣を伴う腱の強直性身長反射(筋緊張)の速度依存的な増加を特徴とする運動障害』と定義されている。本コラムでは,痙縮の背景について,解説を行う.

     

1. 痙縮の歴史

 痙縮は1980年にLanceら2によって『上位運動ニューロン症候群の1つの構成要素として,身長反射の過剰な興奮生に起因する痙攣を伴う腱の強直性伸長反射(筋緊張)の速度依存的な増加を特徴とする運動障害』と初めて定義された.ただし,初期の痙縮に対する考え方は,他動的な動きに伴う筋緊張の変化であり,随意的な動作に関与することは想定されていなかった.
 その後,1994年にYangら2は,Lanceらが提唱した,他動的な運動にのみ伴う現象と言った側面に加え,神経生理的な考え方を加え,他動的な動作に起因する臨床的な所見(筋緊張の異常)とは全く関係なく,その現象について定義を行った.Yangらの痙縮の定義は,『一次求心性入力の脊髄内における処理の異常を発端とした速度依存性の強直性身長反射の増加を特徴とする運動障害』と示されている.しかしながら,LanceやYangらの痙縮の定義が全世界のスタンダードとして認められているかというとそういうわけでもなく,未だに明確なコンセンサスは得られていない.この背景が,痙縮という症状がどれだけ多様かつ複雑であるかを反映していると言える.
 さて,Lanceらは,痙縮を上位運動ニューロン症候群の一つと位置付けているが,上位運動ニューロン症候群には,どのような症状が含まれるのであろうか.これらについて,表1にまとめる.

     

2. 痙縮の疫学

 痙縮は,脳卒中後の一般的な症状の一つであり,脳卒中患者の約30%が脳卒中発症後数日から数週間以内に有すると報告されている4.しかしながら,脳卒中発症後急性期に痙縮を認めない症例でも,回復期・生活期のいずれの時期においても,痙縮が発現する可能性が報告されている5.Wisselら6の研究では,痙縮を生じた患者の内,79%が肘関節,66%が手関節,66%が足関節に痙縮を有すると報告されている.また,上肢では肩の内旋・内転・肘・手関節・手指の屈曲方向への痙縮がパターンとしては最も多いと言われており,これらを司る筋が痙縮の影響を受けやすい事がわかる.
 また,同研究6において,痙縮が長期間において残存する要素としては,1)四肢になんらかの麻痺が残存している,2)脳卒中発症後16週目の麻痺の状況が発症当初よりも重篤である(進行している),3)脳卒中発症後6週以内に少なくとも一つの関節にModified Ashworth Scaleにて2以上の痙縮が存在する,4)脳卒中発症時に2つ以上の関節にて筋緊張が亢進している,5)脳卒中発症後6週の時点で,肩麻痺が残存している,6)脳卒中発症時のBartheal Indexが低得点である,事が予測因子として挙げられている. 
 痙縮は,麻痺側上下肢の痛みや強直,筋・腱の短縮,筋力低下を誘発し,リハビリテーションの進捗を阻害する一因子であると言われている.さらに,痙縮は,Quality of lifeに対し悪影響を及ぼすだけでなく,日常生活活動をも阻害すると考えられている.これらから,脳卒中後のリハビリテーションにおいて,優先的に介入が必要な症候である事がわかる.従って,ガイドライン等から痙縮に対する介入方法を参考に,積極的な介入が必要であると思われた.

     

引用文献

  1. 1.Lance J. Spasticity: disorders motor control. In: Feldman RG, Young RP, Koella WP editors. Symposium synopsis. Miami, FL: Year Book Medical Publishers; 1980.
  2. 2.Young RR. Spasticity: A review. Neurology 1994;44(S9):S12–S20.
  3. 3.Dietz V, Sinkjaer T. Spastic movement disorder: Impaired reflex function and altered muscle mechanics. Lancet Neurology 2007;6: 725–733.
  4. 4.Mayer NH, Esquenazi A. Muscle overactivity and movement dysfunction in the upper motoneuron syndrome. Physical Medicine & Rehabilitation Clinics of North America 2003;14:855–883, vii–viii.
  5. 5.Ward AB. A literature review of the pathophysiology and onset of post-stroke spasticity. European Journal of Neurology 2012;19: 21–27.
  6. 6.Wissel J, Schelosky LD, Scott J, Christe W, Faiss JH, Mueller J. Early development of spasticity following stroke: A prospective, observational trial. Journal of Neurology 2010;257:1067–1072.

     

<最後に>
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