<抄録>
Corresponding authorとは,日本では責任著者と訳されることが多いが,直訳すると”Corresponding author(対応する著者)という意味となる.論文投稿等をされない方には,聴き慣れない言葉ではあるが,Corresponding authorを取り巻く周辺状況について,本コラムにおいては,解説を行っていく
1.Corresponding authorの定義について
論文投稿を行う際には,Corresponding authorの設定を出版社側に求められる.Corresponding authorとは,日本では責任著者と訳されることも多く,基本的に投稿される論文のすべての過程において,責任を負う著者のことを指す.実際,ケンブリッジ大学のHPにおいて,Corresponding authorの定義としては,論文の作成,査読,校正,著者間の承認を含む,出版プロセスにおいて,学術雑誌側の編集者との間に信頼関係を結んだ,責任者のことを指すとされている1.さらに,Corresponding authorの最も重要な役割としては,出版後の問い合わせ(著作権の交渉,システマティックレビューやメタアナリシスなどのデータの二次使用次の許諾,Letter to editorに代表される論文内容の関する議論の対応等)の窓口となることが求められる.これらを履行するために,できるだけ長期間にわたって,正確かつ迅速に連絡が取れ,データマネジメントに関わっている筆者がこの役割にあたるべきだと一般的に考えられている.
Corresponding authorの具体的な責務としては,1)原稿の修正および再投稿から受理までの対応,2)共著者の代理もしくは代表として,Author Publishing Agreementに同意,もしくは共著者の著名を収集した上で,第三者の著作権所有者の著名の手配をする,3)論文の出版等に関わる追加費用が必要な場合は,それらを調達し,支払いを手配する,4)オープンアクセス協定に基づく,論文の出版等に関わる追加費用の割引または免除の適用を判断するために,対応する著者の所属を利用し,吟味する,5)出版後に,出版倫理,コンテンツの再利用(システマティックレビューやメタアナリシスにおけるデータの二次使用も含む),あらゆる情報源からの問い合わせに共著者を代表して対応すること,等を含んでいる.
また,学術雑誌によっては,正当な理由があればCorresponding authorを2名配置することを認めているものもある.この場合は,投稿前に事前に出版社Double Corresponding authorの可否について問い合わせを行った上で,論文の投稿を考えるべきである(多くの投稿システムは,Corresponding authorを1名しか入力できない形をとっており,編集者にあらかじめ、Double corresponding authorの意思表示と実施方法について,問い合わせておくのが良いと思われる).
2.Corresponding authorを出版後に変更することはできるのか?
基本的に,論文投稿時にCorresponding authorを指定するのだが,場合によっては,論文投稿後もCorresponding authorの変更については,妥当な理由があれば可能と考えられている(Corresponding authorに加え,著者の順番や新たに著者を加える,減らすことも場合によっては可能である[ただし,それぞれ不正の可能性も否定できないため,聴きとり調査等が慎重に行われている]).
Corresponding authorの変更に関しては,出版倫理委員会(COPE:Committee on publication ethics)が提供しているガイドライン2を参考に,正式な手続きをとることが望ましいとされている.さらに,それらが正確に行われているかどうかについて,出版社側から審査の対象とされることもある.ただし,COPEの中にしょうも,編集者はこれらの変更が著者の不正行為にまつわるものか,それとも必要不可欠で正当な理由によるものかを判断するのは困難である,と示している(国によっては,Corresponding authorが権威や名誉の象徴とされている国もあるため).COPEは出版社側に,それらの背景から不正に関わる可能性については,一定の調査を行うべきとしている一方で,出版社側が著者間に生じている問題を解決はできないため,正式な手段を踏んだ申し出に対しては,対応するする必要があるとも述べている.
従って,著者側は,Corresponding authorの変更等を申し出る際には,COPEがガイドライン内で規定している”Changes in authorship”の項に準じて,実施すべきであるとコンセンサスが得られている.ただし,最終決定権は,出版社側にあるとされているので,著者としては,不正がないよう,真っ当な理由(Corresponding authorの死亡等による伝聞不能等の理由)に従って,正しい手続きで,対応することが必要となる.
引用文献
1.Website in University of Cambridge: Corresponding Author.https://www.cambridge.org/core/services/authors/journals/corresponding-author
2. COPE’s guideline: Change in authorship: removal of author -after publication.
https://publicationethics.org/resources/flowcharts/request-removal-author-after-publication
<最後に>
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1,注意障害–総論から介入におけるIoTの活用まで–
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5,失行
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