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竹林崇先生のコラム

脳卒中後の上肢に生じる痙縮に対するテーピングを用いた抑制方法について

UPDATE - 2022.5.6

<抄録>

 脳卒中後の上肢の麻痺に付随する後遺症の一つに痙縮がある.痙縮は多くの対象者に生じ,上肢の機能回復や日常生活における麻痺手の使用等の阻害因子となる.また,重症度が高い症例においては,痙縮によって手が開かないことによる掌の不潔の原因となったり,更衣動作中に手が引っかかり,自立度の阻害になることが多い.これらに対して,様々な手法が開発され,臨床にも取り入れられている中で,昨今,キネシオテープを用いたテーピングによる介入が示されている.本コラムにおいては,キネシオテープを用いた痙縮の抑制や,それに伴う上肢機能練習の実際について,いくつかの知見を紹介する.

     

1.痙縮に対するテーピングの位置づけと効果について

 なんらかの原因で脳損傷や脊髄損傷といった上位運動ニューロン疾患の対象者では,非神経性(ここでは,拘縮や萎縮等,組織の粘弾性の問題により生まれる関節運動の問題),および神経性(痙縮等による不適切な筋活動の不能により生じる関節運動の問題)の問題が,関節運動の不備につながる原因とされている.このうち,後者については,脳卒中患者全体の85%において,脳損傷後の上肢麻痺に伴った当該の問題を抱えているとされている1.
 ただし,非神経性および神経性の関節運動の問題については,アプローチの方法が双方で全く異なるため,それらの病態を明確に確認した上で,適切なアプローチを提供することが必要と考えられている.
 さて,上肢麻痺に伴う痙縮においては,近年様々な手法が開発され,臨床においても使用されている.例えば,米国心臓/脳卒中学会が示しているガイドラインにおいてエビデンスが確立されている手法としては,ボツリヌス毒素A型施注,経口鎮痛薬としてのバクロフェン,ダントロレンナトリウム,チザニジン等の薬剤療法が主に示されている2.ただし,一般的な臨床現場では,電気刺激療法やストレッチ,関節可動域練習等が,エビデンスが不十分であるものの,実施されている現状がある.
 これらの手法に加えて近年,キネシオテープを用いたテーピングを用いたアプローチが注目を集めている.一般的に市販されているキネシオテープを,遠位指節間関節,近位指節間関節,中手指節関節,手関節に跨がるように,指から手背にかけてキネシオテープを,手指が伸展位をとるように設定する.これを全ての指に実施し,リハビリテーション に関わる時間とそれ以外の時間,双方にてその肢位を保持したまま,時間を過ごすといったものである.コンセプトとしては,長時間持続的に伸長肢位をとることを目的としており,持続的なストレッチ効果と良肢位の保持に有用な,静的装具療法と類似していると考えられている.
 さて,キネシオテープを用いた臨床試験について解説していく.まず,Huangら3は,6ヶ月以内に発症した脳卒中患者を対象に,上肢の痙縮および上肢機能に対するキネシオテープを用いた介入の効果について検討を行った.対象者は,麻痺手にキネシオテープを実施した群と,何も実施していない群にランダムに割り付けられ,週5日,3週間の一般的なリハビリテーションを受けた.結果は,3週間の介入から2週後において,対称群よりもキネシオテープを実施した群において,有意なFugl-Meyer Assessmentの遠位部における機能改善を認めたと報告している.次に,Castanoら4は,10名の対象者を,麻痺手にキネシオテープを実施した群と何も実施していない群にランダムに割り付け,それぞれの群に運動学習を促すための運動療法を実施した.その結果,キネシオテープを実施した群において,有意な上肢の異常な共同運動の軽減を認めたと報告している(ただし,この研究はサンプルサイズ,および研究デザインの正確さが非常に低い).最後に,Hsiehら5は,35名の対象者を,キネシオテープを実施し,Constraint-inudced movement therapy(CI療法)を実施した群,CI療法のみ実施した群,キネシオテープのみ実施した群にランダムに割り付け,比較検討を行っている.これらの結果では,3群間において,全てのアウトカムで有意差は認めなかったが,各群の前後の経過を観察すると,キネシオテープを設置し,CI療法を行った群では,Fugk-Meyer Assessmentの手の部分,modified Tradieu scale,Brunnstorme stage, Stroke Impact Scaleにおいて,介入前後で有意な改善を認めたと報告している(対照群のCI療法単体の群は,Stroke Impact Scaleにのみ前後で有意な改善).統計的な問題や解釈の問題を多く含む知見ではあるが,筆者らはこれらの結果から,キネシオテープ設置下での運動療法が,痙縮をはじめとした上肢機能の改善に良い影響を与える可能性を述べている.
 これらから,キネシオテープによるテーピングは,条件を満たした対象者においては,痙縮の予防,上肢機能の改善に,ある一定の効能はあるように思える.ただし,エビデン者不十分であり,かつ,臨床上の経験では皮膚が脆弱な対象者では,皮膚の剥がれ,かぶれ等のアクシデントも付き物であり,対象者の特性に応じて,医師と相談の上,実施することが望ましいと思われる.

     

引用文献
1.Kwakkel G, et al. Constraint-induced movement therapy after stroke. The Lancet Neurology. 2015;14(2):224–34.
2.Winstein CJ, et al. Guideline for adult stroke rehabilitation and recovery. A guideline for healthcare professionals form the American Heart Association/American Stroke Association. Stroke 2016; 47(6): e98-e169
3.Huang YC, et al. Effects of kinesio taping on hemiplegic hand in patients with upper limb post-stroke spasticity: a randomized controlled pilot study. Eur J Phys Rehabil Med 2019; 55(5): 551-557
4.Castano PRL, et al. Effect of kinesiotaping combing with the motor relearning method on upper limb motor function in adults with hemiparesis after stroke. J Bodyw Mov Ther 2020; 24(4): 546-553
5.Hsieh HC, et al. The clinical effect of Kinesio taping and modified constraint-induced movement therapy on upper extremity function and spasticity in patients with stroke: a randomized controlled pilot study. Eur J Phys Rehabil Med 2021; 57(4): 511-519

     

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