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竹林崇先生のコラム

脳卒中患者のComputed tomography(CT)による予後予測について(2)

UPDATE - 2022.8.24

<抄録>

 脳出血は,脳内の小血管の障害による一般的な病気の一つである.これらの病態の診断や予後予測には,画像診断が非常に有効であると考えられている.1980年代初頭から,複数の研究者によって,造影剤を使用しないComputed tomography(CT)技術が発展している.造影剤を用いる検査に比べ,造影剤を使用しないCTは,脳出血に対する救急医療においても,例外なく使用されており,臨床現場や臨床試験において,血腫拡大のリスクを層別化するための安価に入手できるツールとして期待されている.また,最近では,CTによるバイオマーカーが研究され,有用な脳出血後の予後予測の指標としても注目されている.本コラムにおいては,CTによる予後予測について,解説を行う.

     

1.CTによる脳出血患者に対する最近の予後予測のあり方

1)出血の体積

 出血の体積は,他の交絡因子や発症からの時間から独立した単純かつ最も確立された出血拡大のリスク指標と考えられている.出血量の体積は,楕円体近似法を用いて調べることができる.楕円体近似法とは縦×横×高さ/2で求めることができる.大きな出血量の場合,出血拡張のリスクが高いことが示され,小さな出血量の場合は,出血拡張のリスクが少ないと考えられている1. 2.
 Boulouisら3も,1342名の脳出血患者におけるレビューとメタアナリシスにおいて,発症後90日後のmodified Rankin Scaleで測定する日常生活の自立度における予後不良の有意な因子として,単変量解析ではCTにおける出血の中に低吸収域(Swirl sigh, Black hole sign)が存在することが挙げられた.また,同じ研究において,入院時のGlasgow Coma Scale,ワルファリンの使用,脳内出血,ベースラインの出血量,損傷部位等の条件を調整した後も,CTにおける出血の中に低吸収域の存在は,予後不良の独立した因子として報告された(オッズ比で1.70).
 Swirl signの定義は非常に難しいものだが,Selariuら4は,高吸収域で示される出血領域の中に,低吸収域または等減衰の領域が存在する出血相と定義し,予後に関わる研究を行った.彼らの研究では,小さな出血にはswirl signが少なく,出血拡大のリスクが低いことを間接的に示唆することを報告した.
 次に,Black hole signはLiら5によって予後予測能力について検討されている.Black hole signは,出血相の中に内包される,境界線が明瞭な低吸収域領域のことを指している(隣接する出血領域と比較して,28 hounsfild units以上の格差を示す兆候).この研究においては,出血相のなかにBlack hole signが存在することが,出血拡大のリスク上昇の独立した因子であり,調整後オッズ比で4.12,特異度0.94と優れた指標であると報告されている.
 さらに,Blancquiereは,脳出血の形態について規則的(丸く滑らかな縁),最も不規則(多結節の節目を持つ縁)まで5段階に群わけした結果,有意な脳出血の拡大について,感度0.69及び特異度0.46で,縁が不整と出血拡大の間に独立した関連を報告した.さらに,1029名の脳卒中患者を対象としたBoulouisら6の研究でも,不整形出血は出血の拡大の独立した因子であると報告されている(調整オッズ比で1.72,感度0.66,特異度0.56).
 一般的には,CTを用いた予後予測では,出血量にのみ注目が集まりがちであった.しかしながら,昨今では,出血領域の中に低吸収領域が存在するかどうか,さらにはその低吸収領域の種類は何か(swirl sigm,black hole sign)によっても予後は大きく変わることが示唆されている.さらには,出血領域の形の滑らかさによっても,その後の出血の拡大の可能性が変化するということもわかっている.これらの知識を鑑み,出血後のCTを多角的な観点からアセスメントすることで,より正確な予後予測ができる可能性がある.

     

引用文献
1.Dowlatshahi D, Smith EE, Flaherty ML, Ali M, Lyden P, Demchuk AM; VISTA Collaborators. Small intracerebral haemorrhages are associated with less haematoma expansion and better outcomes.Int J Stroke. 2011; 6:201–206.
2.Dowlatshahi D, Yogendrakumar V, Aviv RI, Rodriguez-Luna D, Molina CA, Silva Y, et al.; PREDICT/Sunnybrook ICH CTA study group. Small intracerebral hemorrhages have a low spot sign prevalence and are less likely to expand.Int J Stroke. 2016; 11:191–197.
3.Boulouis G, et al. Noncontrast computed tomography hypodensities predict poor outcome in intracerebral hemorrgafe patients. Stroke 47: 2511-2516, 2016
4.Selariu E, Zia E, Brizzi M, Abul-Kasim K. Swirl sign in intracerebral haemorrhage: definition, prevalence, reliability and prognostic value.BMC Neurol. 2012; 12:109.
5.Li Q, Zhang G, Xiong X, Wang XC, Yang WS, Li KW, et al.. Black hole sign: novel imaging marker that predicts hematoma growth in patients with intracerebral hemorrhage.Stroke. 2016; 47:1777–1781.
6.Blacquiere D, Demchuk AM, Al-Hazzaa M, Deshpande A, Petrcich W, Aviv RI, et al.; PREDICT/Sunnybrook ICH CTA Study Group. Intracerebral hematoma morphologic appearance on noncontrast computed tomography predicts significant hematoma expansion.Stroke. 2015; 46:3111–3116. doi: 10.1161/STROKEAHA.115.010566.
7.Boulouis G, Morotti A, Brouwers HB, Charidimou A, Jessel MJ, Auriel E, et al.. Association between hypodensities detected by computed tomography and hematoma expansion in patients with intracerebral hemorrhage.JAMA Neurol. 2016; 73:961–968. doi: 10.1001/jamaneurol.2016.1218.

     

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