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竹林崇先生のコラム

Nintendo Wiiを用いたリハビリテーションプログラムが脳性麻痺を有した対象者の上肢麻痺に対して,どのような影響を与えるのか?

UPDATE - 2023.1.2

<抄録>

 Nintendo Wiiは様々なセンサーが内蔵されたコントローラーを片手もしくは両手に持ち,粗大な動作を伴いながら,モチベートフル,エモーショナルなゲームをこなす中で,麻痺側上肢の機能改善を目指すアプローチである.これらの療法はNintendo Willを用いた療法(NWT: Nintendo Wii-based therapy)と呼ばれており,従来のリハビリテーションプログラムに対して,ランダム化比較試験を用いた検討が多くなされている.本コラムにおいては,脳性麻痺後に上肢麻痺を有した対象者に対するNWTのこれまでの簡単な歴史と,それらの効果,運用の仕方について,本コラムにおいてまとめていく.

     

1.Nintendo Wiiを用いたリハビリテーションプログラムのこれまでの歴史と効果

 脳性麻痺は,出生児および発達中に脳の損傷を受けた結果として生じる疾患である.
 現在、脳性麻痺は小児期の身体障害の原因の主要な要因の1つとされており,その有病率は1000人あたり,2-3名程度とされている1.脳性麻痺は,筋緊張,関節拘縮,筋力低下,痛み,麻痺などの障害を生じるが,特に上肢関連機能および手指の巧緻性の低下が顕著に表在化すると報告されている2.脳性麻痺を有する対象者の約83%に上肢の運動障害が残存すると言われており,36%の対象者には手指や手首の筋緊張の亢進や拘縮が存在すると考えられている3.
 従来の脳性麻痺後に生じる上肢麻痺に対するリハビリテーションプログラムとしては,上肢の麻痺や筋力,拘縮,手指の巧緻性を改善するために,受動的もしくは能動的に繰り返し,長時間,単調なプログラムを繰り返し実施するプログラムが比較的多かった.しかしながら,脳性麻痺を有する対象者の大部分は,小児例であり,長時間の単調なプログラムに対するモチベーションやアドヒアランスは低下しやすいと考えられている4.近年,中枢神経系のリハビリテーションプログラムのオプションとして,Virtual Reality(VR)デバイスを用いた取り組みがトレンドである.VRデバイスは対象者が現実として認識できるシュミレーション環境を提供でき,非没入型,半没入型,没入型のVRデバイスを使い分けることで,対象者のモチベーションやアドヒアランスに影響を与えるとしている.特に先行研究では,バランス練習や上肢の運動障害に対する研究棟が盛んに行われている.
 さて,ここで脳性麻痺後に生じた上肢の運動障害に対するVRを用いたリハビリテーションプログラムの効果に関する例を挙げると,Johansenらは,脳卒中後に上肢麻痺を有した対象者に対して8件のランダム化比較試験を抽出した後,それらに含まれる226名を対象にメタアナリシスを実施したところ,VRを用いたモーションコントロールを利用したアプローチは従来のリハビリテーションに比べ,麻痺側上肢の有意な機能改善を提供する可能性が示唆された.しかしながら,市販のビデオゲームといっても国特有もしくは効果なものも含まれており,より一般的なビデオゲームによる効果はどのような現況になっているのであろうか.
 そこで,Montoro-Cardenasらは,世界で有数の流通を誇るNintendo Wiiを用いた療法(NWT: Nintendo Wii-based therapy)の効果について,システマティックレビューとメタアナリシスを実施している.その結果,9件のランダム化比較試験が抽出され,それらに含まれる276名が対象とされた.NWTは握力およびて指のピンチ力,把握能力,日常生活における機能的な能力に関して,従来のリハビリテーションプログラムに加えて有意な改善を認めたと報告している.

     

まとめ

 本コラムにおいては,NWTに関する歴史と効果について紐解いた.家庭量産型のビデオゲームを用いたリハビリテーションでも,ある程度の結果がシステマティックレビューやメタアナリシスで確認できていることは希望があった.しかしながら,効果を示すフォレストプロットの95%信頼性はなんとか有意を示している程度であった.また,エビデンスのレベルも低い状況である.今後も対象者の自主練習や在宅リハビリテーションプログラムの提供といった点でこれらのデバイスを用いたアプローチも選択肢の1つとしても良いかもしれないと思われた.

     

引用文献

1. Rosenbaum P, et al. A report: The definition and classification of cerebral palsy April 2006. Dev. Med. Child Neurol. 2007;49:8–14.

2. Tonmukayakul U, et al. Health-related quality of life and upper-limb impairment in children with cerebral palsy: Developing a mapping algorithm. Dev. Med. Child Neurol. 2020;62:854–860

3. Makki D, et al. Prevalence and pattern of upper limb involvement in cerebral palsy. J. Child. Orthop. 2014;8:215–219

4. da Silva Ribeiro N.M, et al. Virtual rehabilitation via Nintendo Wii® and conventional physical therapy effectively treat post-stroke hemiparetic patients. Top. Stroke Rehabil. 2015;22:299–305

5. Johansen T, et al. Effectiveness of training with motion-controlled commercial video games for hand and arm function in people with cerebral palsy: A systematic review and meta-analysis. J. Rehabil. Med. 2020;52:10

6. Montoro-Cardenas D, et al. Nintedndo®︎ Wii Therapy improves upper extremity motor function in children with cerebral palsy: A systematic review with meta-analysis. Int J Environ Res Public Health 19: 12343, 2022

     

<最後に>
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