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竹林崇先生のコラム

脳卒中後に生じる上肢麻痺に対するセンサー類を用いたモニタリングシステムに必要とされている機能について(1)

UPDATE - 2023.1.16

<抄録>

 1990年代後半から,脳卒中後に生じた上肢麻痺に対して,様々な治療的リハビリテーションプログラムが開発されてきた.また,その開発に際して,公衆衛生学や疫学の作法に則り,正確な研究デザインによる研究を通した効果検証も併せて実施されてきた.それらが進む中で,リハビリテーションプログラムの効果判定に関わるアウトカムについても少しずつ変化が見られている.当初はFugl-Meyer Assessmentで測ることができる麻痺の改善について焦点が当てられていたが,徐々にAction Research Arm TestやWolf Motor Function Testで測ることができるパフォーマンスレベルの改善に移り変わり,現在となっては,Motor Activity Logや活動量計と言ったセンサー系アウトカムが重要視されている.本コラムにおいては,現在重要視されつつある,センサー系アウトカムについての現状と,今後の開発における課題等について,3回にわたりまとめていく.第一回は,センサー系アウトカムの現場について解説を行う.

     

1.脳卒中後に生じた麻痺側上肢の実生活における使用行動を測るアウトカムの現状について

 脳卒中後は,ここ十年で発症直後の死亡率については,現代医療の発達によって低下した.しかしながら,永続的な後遺症(特に上下肢の運動障害と認知機能障害)をもたらす
疾患の代表格とされており,米国では毎年80万人,日本でも20万人近くの対象者が脳卒中を発症後,後遺症を有していると言われている.脳卒中を発症後,日本においては,急性期および回復期病院において,様々なリハビリテーションプログラムを対象者は受けることになる.しかしながら,脳卒中後上肢麻痺を有した対象者の65%程度は,永続的な上肢麻痺を後遺症として有したまま,回復期リハビリテーション病院を退院すると言われている1.特に,上肢機能障害については,対象者の日常生活の必須であった活動を妨げ,Quality of lifeを著しく低下させると言われている2.
 上記から,脳卒中を罹患した対象者にとって,麻痺手の機能改善,そしてそれ以上に実生活における麻痺手を使用する能力の改善は,重要であり,それらに対するアプローチの開発は急務とされている.さて,1990年代に,麻痺手に対する治療的なリハビリテーションプログラムとしてConstraint-induced movement therapyが登場してから,ロボット療法および電気刺激療法等が次々と開発され,その効果についても公衆衛生学や疫学のルールに則り,できるだけ正確な研究デザインを用いた研究的手法によって,検証がなされてきた.その中で,検証に用いられるアウトカムも刻一刻と変化を遂げてきた.例えば,当初は上肢麻痺の程度を測定するためのアウトカムであるFugl-Meyer Assessmentがプライマリアウトカムとして使用されていたが,徐々に麻痺手がどの程度検査場面で実働できるのかと言った疑問から,パフォーマンス評価であるAction Research Arm TestやWolf Motor Function Testが重要視されてきた.さらに,近年になると日常生活において,麻痺手がどの程度使用できているのか,そして役に立っているのか,さらには対象者の重要な活動が実現できているのか,と言った視点が重要視されるようになった.その結果,麻痺手の使用行動を評価するためのアウトカムである対象者質問式のMotor Activity Logやウェラブルデバイスであるセンサー系アウトカムである活動量計や加速度計の値が加えられるようになった.
 過去数十年にわたり,ウェアラブルデバイスは大きな注目を浴びてきた.脳卒中後の麻痺手に関する行動評価として,最も広く使われているウェアラブルデバイスのフレームとしては手に装着するタイプのデバイスである.主に腕粗い大きな動きを捉えることを目的にした活動量計がそれにあたる.しかしながら,それらに対しては,対象者の目標や重要な活動の成就に関連する細かな上肢の動きが評価できないと言った批判もあり3, 4,近年ではより細かな評価が可能なセンサーを搭載した加速度計が用いられ,研究が進んでいる5, 6.
 現在は,両手に加速度計を装着し,左右比を見ることが一般的と言われている7.また,近年ではそれらに加え,使用強度(平均的な使用頻度)3,設定された閾値を超えた活動を示す時間の長さ5や,加速度計の値が大きく変動する幅(使用変動)を指標としている研究もある8.

     

まとめ

 上記で示したように,麻痺手の使用に関して,ウェアラブルデバイスの開発は古くから続けられている.その中で,ある程度それらによって求められる値も限定されてきている.しかしながら,一般的なアウトカムとして取り扱うには,まだ限界も大きい.第二回はそれらの限界について述べていく.

     

引用文献

  1. 1.Chen SY, Winstein CJ. A systematic review of voluntary arm recovery in hemiparetic stroke: critical predictors for meaningful outcomes using the international classification of functioning, disability, and health. Journal of Neurologic Physical Therapy. 2009;33(1):2–13. pmid:19265766
  2. 2.Faria-Fortini I, Michaelsen SM, Cassiano JG, Teixeira-Salmela LF. Upper extremity function in stroke subjects: relationships between the international classification of functioning, disability, and health domains. Journal of Hand Therapy. 2011;24(3):257–265. pmid:21420279
  3. 3.Hayward KS, Eng JJ, Boyd LA, Lakhani B, Bernhardt J, Lang CE. Exploring the role of accelerometers in the measurement of real world upper-limb use after stroke. Brain Impairment. 2016;17(1):16–33.
  4. 4.Bailey RR, Klaesner JW, Lang CE. An accelerometry-based methodology for assessment of real-world bilateral upper extremity activity. PloS one. 2014;9(7):e103135. pmid:25068258
    5, Kim Y, Jung HT, Park J, Kim Y, Ramasarma N, Bonato P, et al. Towards the Design of a Ring Sensor-based mHealth System to Achieve Optimal Motor Function in Stroke Survivors. Proceedings of the ACM on Interactive, Mobile, Wearable and Ubiquitous Technologies. 2019;3(4):1–26.
  5. 5.Lee SI, Liu X, Rajan S, Ramasarma N, Choe EK, Bonato P. A novel upper-limb function measure derived from finger-worn sensor data collected in a free-living setting. PloS one. 2019;14(3):e0212484. pmid:30893308
  6. 6.Smith BA, Lang CE. Sensor measures of symmetry quantify upper limb movement in the natural environment across the lifespan. Archives of physical medicine and rehabilitation. 2019;100(6):1176–1183. pmid:30703350
  7. 7.Urbin M, Bailey RR, Lang CE. Validity of body-worn sensor acceleration metrics to index upper extremity function in hemiparetic stroke. Journal of neurologic physical therapy: JNPT. 2015;39(2):111. pmid:25742378

     

<最後に>
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