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脳卒中後の上肢麻痺における予後予測に関するエビデンス

UPDATE - 2020.11.2

 

 

■抄録

脳卒中を呈した対象者に対するリハビリテーションにおいて,予後予測は重要な位置づけを占める.本コラムにおいては,ガイドラインにおいて,使用を推奨されている予後予測について解説を行う.

 

 

■目次

1. エビデンスが確立されている過去の予後予測指標
2. エビデンスが確立されている近年の予後予測指標

 

 

1. エビデンスが確立されている過去の予後予測指標

 現在,一般的な脳卒中後の上肢麻痺に関する機能回復の展望として,2つの代表的な論文が挙げられている.

 

 

1つは,1994年にNakayamaら1)によって報告された内容が挙げられる.20年以上前の調査報告になるが,今もまだなお金字塔のようにこの研究結果が参考にされている.彼らは,脳卒中後の上肢麻痺の機能回復の時間経過と程度について,1年間に入院した連続例の脳卒中患者421人を対象に実施された前向きのコホート研究である.脳卒中後の麻痺手の機能については,Scandinavian Stroke Scaleを用いて報告されている.この結果,脳卒中発症後3週間以内に,対象者の約80%,9週間以内に約95%の対象者が,その対象者の可能な限りの麻痺手の機能改善に達したと報告している.また,軽度の上肢麻痺を呈した対象者では,3週間以内に,対象者の約80%,6週間以内に95%,重度の上肢麻痺を呈した対象者は,3週間以内に,対象者の約80%,11週以内に95%の対象者が能な限りの麻痺手の機能改善に達したと報告している.これらを逆説的に考えると,対象者の自然回復は脳卒中発症から6週および11週後に終了する可能性があることに言及している.ただし,これらは25年以上前のデータであり,現在は脳卒中医療そのものの進歩もあることから,エビデンスの一つとして用いられているものの,全てが今の時代に則しているかは吟味が必要である.また,この論文では,脳卒中発症後の対象者の約14%が完全な回復を遂げ,30%が部分的な回復を遂げるとも述べている.

 

 

次に,Kwakkelら2)は,102名の脳卒中後の患者を対象に,Action research arm test,Motoricity index, Fugl-Meyer Assessment等の上肢麻痺に対する機能評価を用い,脳卒中後の上肢麻痺の予後を決定する因子を選定した.この結果,発症から6ヶ月の時点で,脳卒中を呈した対象者の38%に麻痺手の手指巧緻性の改善が認められ,11.6%の対象者に完全な機能回復を認めたと報告している.さらに、発症から6ヶ月後の上肢麻痺の機能低下と,全ての前方循環系の梗塞,右方麻痺,同名性半盲,半側空間無視,は有意な関連性を認めたと報告した.さらに,下肢のMotoricity indexが発症から1週目に25点以上改善し,発症から2週目のFugl-Meyer Assessmentの上肢項目が11点であった対象者が発症から4週目に19点以上改善した場合に,脳卒中発症後6ヶ月目に麻痺手の手指機能になんらかの改善(Action research arm testで10点以上の上肢・手指機能)が発現する可能性が74から94%に上昇することを報告している.

 

 

2. エビデンスが確立されている近年の予後予測指標

 近年の脳卒中後の上肢麻痺に関する予後予測の指標としては,以下の4つの指標が信頼性の高い報告とされている. 近年の予後予測の指標としては,能動的な手指の伸展と肩関節外転が用いられる事が基本となっている.

 

 

1)Smaniaら3)によると,手指の伸展機能は,脳卒中後の短期・中期・長期の強い予測因子であるという事が報告されている.

 

 

2)Houwinkら4)によると,脳卒中発症時に肩の外転と四肢の近位部の運動制御が最低限存在し,リハビリテーションの際に麻痺手の近位関節のコントロールが可能な対象者は,ある程度の手指機能が改善する可能性があることと比較し,近位関節のコントロールが可能でない対象者は手指機能の回復予後が悪い事が報告されている

 

 

3)予後予測の研究であるEPOSにおいて,脳卒中発症後2日目に手指伸展と肩関節の外転が存在した対象者では,6ヶ月後にある程度の手指機能の改善が98%の対象者に示された.一方,これらの初見が認められなかった対象者において,6ヶ月後にある程度の手指機能の改善が25%であり,非常に対照的であったと報告されている

 

 

4)Nijlandら5)は,72時間以内に指の進展が認められた対象者の60%において,脳卒中発症後6ヶ月後のAction research arm testにおいて完全回復を認めたと報告している.

 

 

■引用文献

1、Nakayama H, Jorgensen HS, Raaschou HO, Olsen TS. Recovery of upper extremity function in stroke patients: the Copenhagen Stroke Study. Arch Phys Med Rehabil 1994; 75:394-398.

2、Kwakkel G, Kollen BJ, van der GJ, Prevo AJ. Probability of regaining dexterity in the flaccid upper limb: impact of severity of paresis and time since onset in acute stroke. Stroke 2003; 34:2181-2186.

3、Smania N, Paolucci S, Tinazzi M et al. Active finger extension- A simple movement predicting recovery of arm function in patients with acute stroke. Stroke 2007; 38:1088-1090.

4、Houwink A, Nijland RH, Geurts AC, Kwakkel G. Functional recovery of the paretic upper limb after stroke: Who regains hand capacity? Arch Phys Med Rehabil 2013; 94(5):839-844.

5、Nijland RHM, van Wegen EEH, Harmeling-van der Wel BC, Kwakkel G. Presence of finger extension and shoulder abduction within 72 hours after stroke predicts functional recovery. Stroke 2010; 41:745-750.

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