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竹林崇先生のコラム

体幹を拘束するConstraint-induced movement therapyは効果があるか?

UPDATE - 2020.6.25

 

 

■抄録

脳卒中後の上肢麻痺に関わるリハビリテーション場面において『体幹による代償』は悪しき動作として認識されている.本稿では,体幹を抑制した状態が,Constraint-induced movement therapyに良影響を与えるかどうかについて,解説を行う.

 

 

■目次

1.脳卒中片麻痺患者における体幹による代償動作
2.体幹抑制のConstraint-induced movement therapy

 

 

1. 脳卒中片麻痺患者における体幹による代償動作

一般的に健常人が前方の物品に手を伸ばす際,肩甲骨の屈曲・外転(プロトラクション)と肩関節の屈曲,肘関節の伸展が大きな役割を果たすことになる.これらは,多くの基礎研究によっても明らかにされている.また,この様な到達動作の中では,健常人の場合,肩甲骨の屈曲(プロトラクション)と肩関節の屈曲,肘関節の伸展運動が主となるため,体幹の動きは生じたとしてもわずかである.

 

 

さて,脳卒中患者における到達動作では,複数の研究者1)2)が,肩関節の屈曲,肘関節の伸展の動きの減少と,体幹の動きの増加の間には,有意な相関関係があると言われている.これは,健常人ではほとんど認められない体幹の動きが,到達動作中の主要な動きである,肩甲骨の屈曲(プロトラクション)と肩関節の屈曲,肘関節の伸展運動を代償し,出現している証である.したがって,多くの臨床家が体幹による代償動作を忌み嫌う、根拠の一つとなっている.

 

 

多くのアプローチ方法では,この代償動作に依存しすぎると,代償動作によって動作そのものを行う様式が定着するといった誤学習が進むとも考えられている3).従って,多くの脳卒中後の上肢麻痺に対するアプローチが,代償動作を最小限に制限し,肩・肘関節の動きを促す様に設計されている2).

 

 

2. 体幹抑制のConstraint-induced movement therapy

脳卒中後の上肢麻痺に対するアプローチの一つにConstraint-induced movement therapy(CI療法)というアプローチがある.この方法は,非麻痺手をミットなどの拘束具を用いて抑制し,麻痺手によって課題指向型練習や,練習の結果獲得した上肢機能を生活に活かすための行動学的戦略であるTransfer packageを実施するものである.ただし,このアプローチは,従来のリハビリテーションにおいて,主に使用されていた療法士が直接ハンドリングという手法を使って,対象者の身体に触れながら練習を行う神経筋促通術などと異なり,対象者の身体に触れることが極端に少ない.この影響もあり,集中練習中に多少の体幹による代償動作が出現すると複数の研究者が報告している3)4).これら誤学習を促す恐れのある体幹の代償を抑制するために,Bangらのグループは体幹を抑制しながら,CI療法を行う練習方法を探索的に実施した.

 

 

2015年に,亜急性期,生活期の脳卒中患者を対象に,非麻痺手の拘束に加え,不要な動きを抑制する目的で,代償機構となる体幹の動きを抑制したCI療法の効果を検証した1), 5).対象者は,体幹抑制を行いながらのCI療法を行う群と,CI療法単独を実施する群の2群にランダムに割り付けられ,1日1時間,20回のセッションを週5日,4週間受けた.結果,体幹抑制を行いながらのCI療法を行う群は,CI療法単独を実施する群に比べ,有意な麻痺手の機能・運動障害,麻痺手の使用頻度・主観的な使用感,一般的な日常生活活動,において有意な改善を認めたと報告している.

 

 

次に,同じグループの研究となるが,彼らは,24名の急性期の脳卒中後片麻痺患者(発症後2週間から4週間までの対象者)における,体幹の動きを抑制したCI療法の効果を検証している6).対象者は,体幹抑制を行いながらのCI療法を行う群と,CI療法単独を実施する群の2群にランダムに割り付けられ,1日1時間,20回のセッションを週5日,4週間受けた.結果を表1に示す.生活期の研究と同様に,体幹抑制を行いながらのCI療法を行う群は,CI療法単独を実施する群に比べ,有意な麻痺手の機能・運動障害,麻痺手の使用頻度・主観的な使用感,一般的な日常生活活動,の改善を認めた.加えて,この研究では,体幹抑制を行いながらのCI療法を行う群は,CI療法単独を実施する群に比べ,有意な到達動作中の随意的な肘関節の伸展角度の改善も認められたと報告している.

 

 

もちろん,Bungらの研究は,どちらの研究も対象者の数が小さく,限界もある.しかしながら,群間の効果量も0.73~2.35と大きいため,体幹を抑制しながらのCI療法は,体幹に全く示唆を与えずに実施したCI療法に比べて,有効な可能性がある.本邦のCI療法でも,課題の難易度調整を行うことで,必要以上の代償動作は制限し,ターゲットとする必要な関節運動の反復が必要とされている.これらから,過剰な体幹代償は,上肢麻痺の適切な改善を阻害する可能性が示唆された.

 

 

■謝辞

 本コラムは,当方が主催する卒後学習を目的としたTKBオンラインサロンの 根本直宗氏,嶋田隆一氏,宮下栄輝氏,高瀬駿氏に校正のご協力をいただきました。心より感謝申し上げます。

 

 

■引用文献

1、Bang DH, et al: Effects of modified constraint-induced movement therapy combined with trunk restraint in chronic stroke: A double-blinded randomized con- trolled pilot trial. Neuro Rehabilitation, 37, 131-137, 2015

2、Greisberger A et al: Clinical relevance of the effects of reach-to-grasp training using trunk restraint in individuals with hemipare- sis poststroke: A systematic review. Journal of Rehabilitation Medicine, 48, 405-416, 2016

3、Michaelsen SM, et al: Task- specific training with trunk restraint on arm recovery in stroke: Randomized control trial. Stroke, 37, 186-192, 2006

4、Cirstea MC: Compensatory strategies for reaching in stroke. Brain, 123, 940-953, 2000

5、Bang D et al: Effects of modified constraint-induced movement therapy combined with trunk restraint in chronic stroke: A double-blinded randomized con- trolled pilot trial. Neuro Rehabilitation, 37, 131-137, 2015

6、Bang DH, et al: Effects of modified constraint-induced movement therapy with trunk restraint in early stroke patients: A single-blinded, randomized, controlled, pilot trial. NeuroRehabil 42: 29-35, 2018

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