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竹林崇先生のコラム

Constraint-induced movement therapyは単独,集団,どちらで実施した方が良いのだろうか?

UPDATE - 2020.7.9

 

 

■抄録

Constraint-induced movement therapy(CI療法)は,長時間の練習時間を通して,実生活において麻痺手を使うといった行動変容をもたらす.これらの実施は,1部の療法士・対象者からはストレスが大きいものだと考えられている.本稿では,CI療法における集団プログラムの可能性について考える.

 

 

■目次

1. Constraint-induced movement therapyにおける診療方法を取り巻く状況
2. 集団CI療法の実際
3. 集団CI療法の効果

 

 

1. Constraint-induced movement therapyにおける診療方法を取り巻く状況

 一般的に,Constraint-induced movement therapy(CI療法)は,集中的課題指向型アプローチを中心に構成され,15-72時間といった多くの練習時間を設定しているプロトコルが一般的である.ただし,これら大量の練習時間は,対象者にも療法士にも大きな負担を強いる場合がある.例えば,対象者側からの意見としては,「一人では長時間の練習はなかなかできない」「練習中はまだクリニック内などの環境が整っているから大丈夫だが,練習終了後の孤独感あら練習に身が入らない」といった意見をいただくことがある.

 

 

 一方,療法士側の観点からも,1対1の介入では,技術的な問題,人的資源,臨床資源(スケジュール上の問題等),文化的な理由(医療点数や保険制度などの問題)により,それぞれの対象者に直接関連する課題を想定した環境下で実施するまでには至っていない,と報告されている1).

 

 

 こういった,対象者と療法士の両側の観点から,費用対効果,療法士の管理体制の最適化,待機者を減少,CI療法等のリハビリテーションアプローチへのアクセスの不平等,といった問題を解決するために,アプローチ方法を個別から集団プログラムへ切り替えることが提案されている2).Bunduraら3)によると,集団療法の適応は,対象者に提供される情報量,参加者同士の経験や情報の交換,社会的な支援ネットワークの構築,問題意識の共有,問題解決能力に対する相互補助,相互監視による安全性の向上,お互いに対する絆の構築と帰属意識の向上,自尊心といった全人的要素を満たす可能性が報告されている.

 

 

 これらの視点から,個別介入であったCI療法を集団で実施していく試みも世界的には運用がなされている.

 

 

2. 集団CI療法の実際

 Doussoulinら4)が,集団を用いたCI療法のプロトコルについて言及している.彼らは,集団を用いたCI療法では,4名が同じ場所で一緒にCI療法を行っている.介入はCI療法に対する専門の教育を受けた理学療法士と理学療法士を志す学生によるアシスタントにより,1日3時間の集中練習が実施された(トータルの介入日数は不明).また,介入の内容には,上記の時間中の課題指向型アプローチ(ShapingとTask practiceを実施)と,1日の起床時間の70%の非麻痺手の拘束,実生活において,練習による機能改善を実生活に転移するための心理行動学的戦略であるTransfer packageを提供したと報告している.彼らの介入については,特に,Shaping,Task practice,Transfer packageのいずれに関しても,米国のアラバマ大学バーミンガム校の正確なCI療法に関するプロトコルを利用しており,比較的妥当性のある介入がなされている.このような観点から,特に集団だからといって特別な工夫がなされているわけではなく,実施しているCI療法自体は,個別で実施したものとなんら変わりない.

 

 

3. 集団CI療法の効果

 上記の集団CI療法を実施した研究4)の中で,同人数の療法士が4名の集団の対象者とCI療法を行なった群(集団CI療法群)と,1対1でCI療法を行なった群(個別CI療法群)に36名の病期不明の脳卒中患者をランダムに割り付け,効果の比較を行なっている.この比較の結果,集団CI療法を行なった群が,個別CI療法を行なった群に比べ,介入前後から6ヶ月後のフォローアップにおいて,麻痺手の機能・運動障害,および実生活における麻痺手の使用頻度に有意な改善を認めたと報告している(表1).また,この研究の中で,観察事項からの論述にとどまっているが,集団CI療法群に含まれる対象者は,練習期間中にお互いのモチベーションを高めあう,励まし合うような振る舞いが見られたと報告している.さらに,ある患者においては,特により多く集中して,繰り返しやスピードが必要な課題を他患者が実施している際に,熱を帯びた応援行為が認められたと報告している.ただし,これらの論述は全て,観察事項から述べられていることと,客観的な数値による対照群との比較がなされていないので,あくまでも研究者の主観によるところが大きい.ただし,この限界を鑑みても,本結果は,集団CI療法が参加した対象者のモチベーションに寄与できている可能性を感じさせるものであり,本邦でも今後デイケアなど人的資源に限りある環境では,応用できる可能性が考えられた.

 

 

■引用文献

1、Fleet A, et al: Modified constraint-induced movement therapy for upper extremity recovery post stroke: what is the evi- dence? Top Stroke Rehabil 21:319–331, 2014

2、Henderson CA, et al: Group modified constraint-induced movement therapy (mCIMT) in a clinical setting. Disabil Rehabil 34:2177–2183, 2012

3、Bandura A: A social learning theory. Englewood Cliffs, NJ: Prentice Hall. 1977

4、Doussoulin A, et al: Effects of modified constraint-induced movement therapy in the recovery of upper extremity function affected by a stroke: a single-blind randomized parallel trial-comparing group versus individual intervention. Int J Rehabil Res 41: 35-40, 2018

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