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竹林崇先生のコラム

視覚バイオフィードバックはConstraint-induced movement therapyに影響を与えるのか?

UPDATE - 2020.7.14

 

 

■抄録

近年,長時間の練習により,モチベーションの低下を来す対象者に対して,ゲーム的な要素を加える方法や,効果を増大させるために視覚バイオフィードバックを用いたアプローチが存在する.Constraint-induced movement therapyにおいても同様で、こう言った試みが実施されている.本稿では効率を増大させる視覚バイオフィードバックについて,情報提供を行う.

 

 

■目次

1. Constraint-induced movement therapyとバイオフィードバックの関係
2. CI療法における視覚性バイオフィードバックの効果

 

 

1. Constraint-induced movement therapyとバイオフィードバックの関係

 近年,長時間の練習により,モチベーションの低下を来す対象者に対して,ゲーム的な要素を加える方法や,効果を増大させるために視覚バイオフィードバックを用いたアプローチが存在する.前者は練習にエンターテイメントの要素を加えることにより,モチベーションの増加を狙ったアプローチである.ただし,筆者は,Constraint-induced movement therapy(CI療法)の目的は,ただ単に麻痺手を動かし続けることではなく,対象者の麻痺手を用いた価値のある活動といった目的指向的な行動変容であると考えている.従って,ゲーム的要素を加えた練習が,練習におけるモチベーションをあげ,麻痺手の使用頻度を向上させたとしても,実生活における麻痺手の使用および,行動変容に伴う長期的なCI療法の効果に繋がるとは考えにくい.

 

 

 こういった理由から,CI療法の効果をより効率化するための視覚バイオフィードバックに本質的な意味があるかもしれない.実際に視覚以外のバイオフィードバックを用いたCI療法の研究では,Kimら1)の研究がある.この研究では,脳卒中後片麻痺を呈した患者を,CI療法に筋電バイオフィードバックを併用した群と,通常のCI療法を実施した群に割り付けた.結果,介入実施から4週間後の時点で,CI療法に筋電バイオフィードバックを併用した群の方が,通常のCI療法を実施した群に比べて,麻痺手の機能・運動障害の有意な改善を認めたと報告している.しかしながら,実生活における麻痺手の使用頻度については,群間差は認めなかったとしている.

 

 

次に視覚バイオフィードバックに関する研究は,リハビリテーション分野においても実施されており,これを併用することで既存のアプローチの運動に与える影響を漸増できる可能性が考えられている2).実際に,Kimら3)の研究では,脳卒中後の片麻痺患者を対象とした視覚バイオフィードバックを併用した到達運動課題を用いた研究を実施している.この研究では,生活期の対象者を40名,無作為に20名ずつ,1日1時間,週3回,4週間の到達運動練習と視覚性バイオフィードバックを併用した群と,到達運動練習を単独で実施した群に割り付け,比較検討を行った.この結果,介入直後に,到達運動練習と視覚性バイオフィードバックを併用した群が,到達運動練習を単独で実施した群に比べ,有意な麻痺手の機能・運動障害の改善を示したと報告している.これらの結果から,CI療法に視覚性バイオフィードバックをはじめとした介入を併用することは,ICFにおける機能・構造に関わるアウトカムに良い影響を与える可能性が考えられた.

 

 

2. CI療法における視覚性バイオフィードバックの効果

 視覚性バイオフィードバックとは,図1に示すように,対象者は様々な手の構えでコントローラーを操作する際,その操作に反応し,モニターの映像が動いたり,ゲームを遂行したり,ゲージで動作の質をパラメーターで示すなどのフィードバックを指す.こういった視覚性バイオフィードバックとCI療法を併用し,練習を実施するものである.

 

 

 さて,Seokら4)は,発症から3ヶ月以上経過した脳卒中後上肢麻痺を呈した対象者32名を1日1時間,2週間にわたり,CI療法と視覚性バイオフィードバックを併用した群,視覚性バイオフィードバックを単独で実施した群,通常の作業療法(ROMex, ADL練習, 上肢の筋力増強練習,神経筋促通練習)を実施した群,にランダムに割り付け,比較検討を行った.結果,CI療法に視覚性バイオフィードバックを併用した群は,視覚性バイオフィードバックを単独で実施した群と通常の作業療法を行った群に比べ,介入前から介入後2週間におけるFugl-Meyer Assessmentで測定された麻痺手の機能・運動障害の改善を認めたと報告している.この研究では,麻痺手の使用行動を示す,Motor Activity Logは測定されていないため,視覚性フィードバックとCI療法が,行動面に与える影響は不明である.また,比較対象が,視覚性バイオフィードバックを単独で実施した群を設定しているため,CI療法と視覚性バイオフィードバックの相互作用については,検証できていない.今後,これらが調査されることで,CI療法と視覚性バイオフィードバックの併用療法の効果が明らかになると思われる.

 

 

■謝辞

 本コラムは,当方が主催する卒後学習を目的としたTKBオンラインサロンの石川弘明氏,森屋崇史氏,高瀬駿氏,籔中雅之氏,に校正のご協力をいただきました。心より感謝申し上げます。

 

 

■引用文献

1、Kim KS, et al: Effects of upper extremity exercise training using biofeedback and constraint-induced movement on the upper extremity function of hemiplegic patients. Taehan Kanho Hakhoe Chi 33: 591-600, 2003

2、Urra O, et al: The impact of visual feedback on the motor control of the upper-limb. Conf Proc IEEE Eng Med Biol Soc 2015:3945–3948, 2015

3、Kim CY, et al: Effect of spatial target reaching training based on visual biofeedback on the upper extremity function of hemiplegic stroke patients. J Phys Ther Sci 27: 1091-1096, 2015

4、Seok HS, et al: Can Short-Term Constraint-Induced Movement Therapy Combined With Visual Biofeedback Training Improve Hemiplegic Upper Limb Function of Subacute Stroke Patients? Ann Rehabil Med 40: 998-1009, 2016

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