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竹林崇先生のコラム

Constraint-induced movement therapyは脳卒中発症後いつ行うのが適切か?

UPDATE - 2020.7.19

 

 

■抄録

 脳卒中後の上肢麻痺に対するアプローチとしてConstraint-induced movement therapyがある.このアプローチは脳卒中発症後どの時点で実施するのが対象者として最も良いのか,この点について解説を行う.

 

 

■目次

1. 脳卒中後の機能アプローチを行う時期に関する雑感
2, 時期別に実施されたCI療法の効果比較

 

 

1. 脳卒中後の機能アプローチを行う時期に関する雑感

 脳卒中後に生じる上肢麻痺において,急速な機能回復は発症後数日から数週以内に生じると言われている.その要因としては,一次運動野,皮質脊髄路における浮腫軽減,減圧,血流の再開などが挙げられている.よって,病変部位の大きさや,急性期における医学的

 

 

治療の成否が影響を与えることが多い.その後,回復の速度は徐々に陰りを見せ,3ヶ月から6ヶ月にかけて,回復曲線はなだらかになる.Nakayamaら1)も,機能回復の95%が発症から11~16週以内に終息すると述べている.識者は,この現象をプラトーと呼んでいる(図1).また,このプラトーという現象を過剰解釈し,1990年代には,「脳卒中後180日を超えた後にアプローチを行なっても意味がない」と言った臨床での経験論が横行し,「生活期では麻痺手を触らない」,「対象者の障害受容を妨げるので良くならない麻痺手は触らない」といった誤解が生まれた.ただし,Kwakkelらに,脳卒中後の回復とは,回復(損傷した神経組織の機能回復),置換(失われた機能を再学習するために部分的にスペア的な神経経路の再構築),補償(対象者の環境適応的なスキル学習)を含む自然発生的およ学習依存的なプロセスを組み合わせた複雑なものと考えられている.  

 

 

これらに対して,2011年にLanghorneらは,エビデンスが確立されている適切なアプローチが実施された場合,たとえプラトーの時期に達していたとしても,通常予測される機能改善よりも,より良い改善が生じる可能性について述べている.この主張からも,「プラトーに達する時期だから機能改善の可能性は低い」といった考えは,今や非常識といった趣すらある.

 

 

上記の論文からも,昨今は,脳卒中後上肢麻痺に対するアプローチにおいても,プラトーに達する時期である生活期に至っても,適切なアプローチ(Constraint-induced movement therapy [CI療法])を提供した場合,麻痺手の機能改善が得られると考えられている.しかしながら,適切なアプローチをどの時期に実施した場合に,より良い結果が出るのか,これらの点については,検討が不十分である.一般的には,「急性期・回復期に介入を行った方が良い」といった.臨床における経験を基盤とした暗黙の了解があるが,果たしてその考えが正しいのかについて,先行研究の内容から述べる.

 

 

2, 時期別に実施されたCI療法の効果比較

 治療開始時期の効果に与える影響については,Wolfら4)の研究がある.彼らは,割付け直後にCI療法を実施するEarly CI療法群(割付け時:発症からの期間は平均178±64日)と割付けから1年後にCI療法を実施するDelay CI療法群(割付け時:187±67日[CI療法実施はこれに365日加えた日数])にランダムに割付け,効果を検証した.結果,介入直後では,Early CI療法群の方がDelay CI療法群に比べて,WMFTとMALが有意に改善した.しかしながら,介入から1年後の上肢機能の予後については有意な差が認められなかったと報告している.

 

 

 さらに,Stockらは,発症から28日以内にCI療法を実施したEarly CI療法群(割付け時:発症からの期間は平均16.6±7.2日)と,発症から6ヶ月以上にCI療法を実施したDelay CI療法群(割付け時:18.0±6.5日[CI療法実施はこれに180日加えた日数])にランダムに割付け,効果を検証した.結果,介入直後では,Early CI療法群の方が,Delay CI療法群に比べて,有意な改善効果を認めたが,発症から1年後の麻痺手の機能予後に関しては,有意な差がなかったとされている.

 

 

 これら2つのクロスオーバーランダム化比較試験では,発症からの日数が早ければ早いほど,麻痺手の短期的な麻痺手の機能回復の効率は良いが,長期的な予後においては変わらないということが明らかになっている.この結果は,CI療法は,どの時期に実施したとしても,同等の効能を示すことができる可能性を示している.とはいえ,急性期から適切かつエビデンスが確立されているアプローチを継続して行うことが必要であり,臨床では最も意識すべきことだと思われる.

 

 

■謝辞

 本コラムは,当方が主催する卒後学習を目的としたTKBオンラインサロンの金子隆生氏,堀本拓究氏,井本裕堂氏に校正のご協力をいただきました。心より感謝申し上げます。

 

 

■引用文献

1、Nakayama H, et al: Compensation in recovery of upper extremity function after stroke: the Copenhagen Stroke Study. Arch Phys Med Rehabil 75: 852-857, 1994

2、Kwakkel G, et al: Understanding the pattern of functional recovery after stroke: functional recovery after stroke: facts and theories. Restor Neurol Neurosci 22: 281-299, 2004

3、Langhorne P, et al: Stroke rehabilitation. Lancet 377: 1693-1702, 2011

4、Wolf SL, et al: The EXCITE stroke trial: Comparing early and delayed Constraint-induced movement therapy. Stroke 41: 2309-2315, 2010

5、Stock R, et al: Early versus late-applied constraint-induced movement therapy: A multisite, randomized controlled trial with a 12-month follow-up. Physiother Res Int 23: Epub, 2018

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