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竹林崇先生のコラム

Constraint-induced movement therapyにおける練習量の意味

UPDATE - 2020.7.24

 

 

■抄録

Constraint-induced movement therapy(CI療法)は,麻痺手に対する集中的アプローチである.このアプローチにおいて,練習量が与える影響は重要な観点となる.本稿では,練習量の実際について,解説を行う.

 

 

■目次

1. Constraint-induced movement therapyの練習時間
2. 具体的な練習回数に関する知見

 

 

1. Constraint-induced movement therapyの練習時間

Baddeleyら1)は,CI療法に限らず,タイピングなど集中力が必要な課題において,1日の限界時間として2時間を提示し,それ以上練習時間を担保したところで,学習効率は向上しなかったと述べている.このように集中力といった観点から長い練習時間が良影響を与えるかどについての検討は古くからなされている.

 

 

Constraint-induced movement therapy(CI療法)が発展を続ける中でも,最適な練習量に対する疑問が常につきまとってきた.急性期のCI療法において(『急性期におけるConstraint-induced movement therapy』を参考にされたい:こちらのコラムへの誘導リンク貼ってください)は,基本的に1日2時間以内の集中練習と,5時間以内の非麻痺手の拘束があげられている.これ以上の練習量を提供した場合には,Dromerickら2)が示した研究のように悪化する場合も報告されている.このように,ただ大量の練習量を提供すれば、無条件で麻痺手の能力が改善する訳ではないことが明らかになっている.

 

 

では,次に回復期以降に関する研究を示す.この時期には,1日ではなく,CI療法全体の期間によって検討されている.Sterrら3)は,生活期の対象者について,1日3時間非麻痺手に対する拘束を行なった群と,1日6時間非麻痺手に対する拘束を行なった群で比較検討した結果,1日6時間拘束を行なった群が3時間拘束を行なった群に対して,有意な日常生活における麻痺手の使用頻度の改善を認めたと報告した.また,Peuralaら4)は,15-72時間の練習時間に対するプロトコルをシステマティックレビューを用いて効果の比較を示している(図1)が,CI療法全体の練習時間が20-56時間で収まるプロトコルが最も効果が高い可能性について言及している.ただし,最適プロトコルは現在のところ全く提示されておらず,実現可能性の観点から対処的に提供されているのが現状である.

 

 

2. 具体的な練習回数に関する知見

全体の練習時間による知見だけでなく,昨今では具体的な練習回数に関する検討も散見されている.Hanら5)はCI療法に対するシミュレーションの結果から,1日420回以上の練習を実施した場合,実生活における麻痺手の使用頻度が向上する可能性について報告している(図2).この論文が近年の上肢麻痺における1日の練習時間を決める礎となっていることが多い.ただし,昨今では具体的な回数に言及している論文が他にもある.

 

 

Waddellらは,生活期の78名の対象者に対し,1日に「個人ができる最大回数を実施する群」,「100回実施する群」,「200回実施する群」,「300回実施する群」にランダムに割り付け,比較した結果,麻痺手の機能・運動障害を図るAction research arm testおよび麻痺手の活動量を測定する活動量計に有意な差を認めなかったと報告している.つまり,麻痺手の機能・能力障害の改善に,練習量は関係がないことを示唆した.

 

 

一方,Abdullahiらは,48名の脳卒中発症後4週間の対象者に対し,CI療法における課題指向型アプローチの一つであるShapingの回数を,1日に「3時間の練習を実施する群」「300回実施する群」「600回実施する群」,さらに通常のリハビリテーションを行なった対照群にランダムに割り付け,比較した結果,300回および600回実施したCI療法群はWolf motor function testで測定した麻痺手の機能・運動障害が,3時間の練習を実施した群,対照群に比べ,有意な改善を認めたと報告している(図3).これらから,1日の練習量が結果に影響するかどうかも今後さらに検討が必要だと思われる.ただし,練習量の他にも適切な難易度調整や課題の文脈など,統制しなければいけない因子は多々あるため,練習量の効能だけを切り出して求めることは非常に困難が伴うとも筆者は考えている.

 

 

■謝辞

 本コラムは,当方が主催する卒後学習を目的としたTKBオンラインサロンの村谷翔一氏,横山広樹氏,籔中雅之氏,に校正のご協力をいただきました。心より感謝申し上げます。

 

 

■引用文献

1、Baddeley, et al: The influence of length and frequency of training sessions on the rate of learning to type. Ergonomics 21: 627-635, 1978

2、Dromerick AW, et al: Very Early Constraint-induced movement during stroke rehabilitation (VECTORS). A single-center RCT. Neurology 73: 195-201, 2009

3、Sterr A, et al: Longer versus shorter daily constraint-induced movement therapy of chronic hemiparesis: an exploratory study. Arch Phys Med Rehabil 83: 1374-1377, 2002

4、Peurala SH, et al: Effectiveness of constraint-induced movement thrapy on activity and participation after stroke: asystematic review and meta-analysis of randomized controlled trials. Clin Rehabil 26: 209-223, 2012

5、Han CE, et al: Stroke rehabilitation reaches a threshold. PLoS Comput Biol 4: e1000133, 2008

6、Waddell KJ, et al: Does task-specific training improve upper limb performance in daily life poststroke? Neurorehabil Neural Repair 31: 290-300, 2017

7、Abdullahi A: Effects of number of repetitions and number of hours of shaping practice during constraint-induced movement therapy: A randomized controlled trial. Neurol Res Int 2018: 5496408, 2018

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