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竹林崇先生のコラム

聴覚フィードバックによる体幹抑制を施したConstraint-induced movement therapyの試み

UPDATE - 2020.8.13

 

 

■抄録

脳卒中後の上肢麻痺に対するアプローチとして,Constraint-induced movement thearpyがある.このアプローチを実施する際に,多くの場合で,体幹による代償動作が問題とされる.今回は,その動作を低下させるための聴覚を用いたユニークな方法について紹介したい.

 

 

■目次

1. 体幹抑制とConstraint-induced movement therapy
2. 聴覚フィードバックをCI療法の体幹抑制に利用してみた
3. 体幹抑制とCI療法

 

 

1. 体幹抑制とConstraint-induced movement therapy

 以前のコラムでも取り上げたが,Constraint-induced movement therapy(CI療法)を実施する際に,体幹による代償を悪と捉え,その代償動作を抑制するための方策が練られている.例えば,その一つの方法が,以前のコラムでも紹介した,椅子などに身体を固定することによる「体幹の動きを抑制する方法」である(体幹を拘束するConstraint-induced movement therapyは効果があるか?を参照←前回のコラムに誘導つけてください).これらの手法においても,麻痺手の機能・運動障害と日常生活における使用行動について,従来方よりも良好な結果が得られたと報告されている.ただし,これらの拘束を伴う練習方法は,1)身体を実際に椅子などに拘束することから,臨床的な危険性を伴う方法であること,2)身体拘束による対象者に対する倫理的な問題,3)身体拘束という実際には存在しない受動的な制限による行動統制が強いられること,などが問題および限界として挙げられており,それらの点に関する新しい方法が探索されている.

 

 

 これらの問題を解決するために,近年はCI療法においても,聴覚フィードバックによって体幹の代償を最小限にする方法が考えられている.最近では,Thielmanら1)のシステマティックレビューにより,聴覚フィードバックは,他のバイオフィードバックのように運動学習に良好な影響を与えることが示唆されている.また,受動的な制限に比べ,能動的な制限の方が,自然な動作の獲得につながるとも報告されている2).したがって,これら手法をCI療法における体幹抑制の方法論に組み込んだ試みが実施されている.

 

 

2. 聴覚フィードバックをCI療法の体幹抑制に利用してみた

 実施方法は図1の方式である.椅子の背もたれの部分(身体でいう背中の部分[第七胸椎]が触れる部分)にセンサーを配置している.Bangら2)は,この状態で,身体がセンサー部分から離れると,聴覚センサーが働き,対象者に対して聴覚にてフィードバックを与える機器を開発した.この機器に脳卒中後の患者が座り,CI療法を展開していくといったプロトコルである.

 

 

練習時間は1日1時間,週5回,4週間,全20回の介入から構成されている.対象者は,練習中に麻痺手を用いた日常生活における重要な課題10項目に取り組むように指示をなされている(表1).この研究は,58名の亜急性期の脳卒中患者を対象に実施された(サンプリングの方法は記載なし).最終的に20名の対象者を,1)聴覚フィードバックによる体幹抑制を併用したCI療法が実施された群(介入群),2)通常のCI療法を実施する群(対照群),にランダムに割り付けられている(論文内にランダム割り付けの方法が記載されていないので,割り付け方法が適切かどうかは不明である,ちなみに評価者に対する盲検化についても記載がないので,どのような手法で実行バイアスを排除したかについても不明).

 

 

結果,上肢の運動麻痺を評価するFugl-Meyer Assessment,日常生活動作の自立度を示すBarthel index,実生活における麻痺手の使用行動を示すMotor Activity Logの使用頻度について,対照群に比べ,介入群では有意な改善を認めたと報告している(図2).

 

 

3. 体幹抑制とCI療法

 前回のコラムに記載した物理的な体幹抑制を施したCI療法の効果を測定する研究に続き,聴覚による体幹抑制についても良好な結果が示された.これらを鑑みると,何らかの刺激により体幹に抑制を行うことには一定の意味があると思われる.また,Thielmanら1)の体幹制御のための研究では,物理的な拘束による体幹抑制は,介入実施後の持続効果に乏しいと報告している.これらから,音声によるフィードバックは,もしかしたら長期的な改善効果があるのかもしれない.

 

 

本邦のCI療法におけるプロトコルでも,体幹の代償動作や異常な共同を少なくとも2-3割程度に,口頭フィードバックや課題の難易度調整によって抑制を行う.その根底にある理論は,過剰な代償動作は誤学習を促進する可能性に配慮をした部分にある.今後は,どの程度の代償動作の抑制が最も安定的な麻痺手の機能・運動障害,および日常生活における麻痺手の使用行動に直結するか,この点が焦点になる部分であると思われる.

 

 

■謝辞

 本コラムはTKBオンラインサロンの高野駿氏,森屋崇史氏,に校正の協力をいただき,発刊しました.心より感謝申し上げます.

 

 

■引用文献

1、Thielman G, et al: Rehabilitation of reaching after stroke: comparing 2 training protocols utilizing trunk restraint, Neurorehabil Neural Repair 22: 697-705, 2008

2、Thelman G, et al: Rehabilitation of the upper extremity after stroke: a case series evaluating REO therapy and an auditory sensor feedback for trunk control. Stroke res treat 2012: 348631, 2012

3、Bang DH, et al: Effect of modified constraint-induced movement therapy combined with auditory feedback for trunk control on upper extremity in subacute stroke patients with moderate impairment: randomized controlled pilot trial. J Stroke Cerebrovascular Disease 25: 1606-1612, 2016

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