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竹林崇先生のコラム

生活期における超高強度の上肢機能練習は脳卒中後に生じた麻痺の改善に有効か?

UPDATE - 2021.10.25

1.脳卒中後の上肢麻痺に対する練習量の考え方

 一般的に,脳卒中後に生じた上肢麻痺は,自然回復により最初の3ヶ月で大きな改善を認める.同時に,その期間を過ぎた後には,大きな改善は認められないとも言われている.しかしながら,そういった流れの中でも,練習そのものの回数,及び各練習(セッション)における練習量を多く取ることで,上肢機能の改善を導く可能性が示唆されているものの,先行研究を確認してみると,多くの研究が,特に急性期及び生活期において,臨床現場を劇的に変えるほどの変化を表現しているとは言い難い. ただし,生活期の臨床現場や実生活において,インパクトがある結果を残せていない論文の多くが,練習量を想定しうるものに比べ,低く抑えたものが多い(18-36時間).この練習時間の設定の理由は,脳卒中後の対象者が,多くの練習量に耐えられない,といった医療者の配慮によるものとされている.しかしながら,先行研究において,12週間にわたり,約300時間の上肢練習を実施した結果,少ない練習時間によって介入した研究よりも遥かに大きな上肢機能の改善を認めたと報告している1.この研究の結果から,より多くの練習時間を設定した方が脳卒中後の上肢麻痺が改善する可能性が考えられているものの,300時間をこえる麻痺手に対する介入を実施するには困難が多い.従って,実現可能性を踏まえたアプローチ方法の開発が望まれている.

     

2.超高強度の上肢機能練習の実際

 近年,脳卒中後の上肢麻痺に対して,様々な練習時間を設定したアプローチが開発されている.その中でもConstraint-induced movement therapy(CI療法)などは有名どころである.さて,そう言った高い強度を誇るアプローチの中に,The Queen square upper limb neurorehabilitation programがある.
 Queen square upper limb neurorehabilitation programは,日常生活における麻痺手の運動制御方法を再教育・再学習することを目的としている.このプログラムでは,個別に設定された,当事者における意味のある作業活動を繰り返し,動きの質を改善することに焦点を当てつつ,課題の習得を目的としている.具体的な方法としては,1)対象者にとっての意味のある作業活動を獲得するために,その活動を分析し,ここの要素に分け,練習課題に取り入れる,2)麻痺手の機能が消失または不足している場合に,機能的装具の作成やその他,環境設定によって活動の遂行を援助する,3)麻痺手の機能強化やよりダイナミックな随意運動を可能とするために,腕の徐重や補助を行う,4)対象者自身が,自主練習の中で,自ら計画を立てつつ練習を行う,と言ったコンセプトが練習の中に含まれている2.
 これらのコンセプトを練習内で遂行するためには,対象者と療法士の間に生じるインタラクション,特にコーチングが重要な要素として考えられている.コーチングを通して,対象者が新しいスキルや知識を対象者自身の日常生活に定着させることを目的としている.
 練習は,通常の理学療法,作業療法,リハビリテーションアシスタントやロボットの補助下における反復練習,感覚再教育,動的および機能的装具の使用,神経筋電気刺激,グループワーク,有酸素運動の中から,対象者の個別の病態に合わせて,複数のアプローチが組み合わされ,実施された.
 生活期(中央値,発症から18ヶ月の対象者群)における脳卒中後の対象者224名が,1日6時間の麻痺手に対するアプローチを,週5日,3週間(総練習時間90分)のQueen square upper limb neurorehabilitation programを受けた結果,プログラム開始前と介入後6ヶ月時点の上肢・手の麻痺の程度を示すFugl-Meyer Assessmentが,26点が37点に,麻痺手の能力を示すAction Research Arm Testが,18点から27点に,同じく麻痺手の能力を示すChedoke arm and hand activity inventoryは40点から52点に変化したと報告している.また,当プログラムにおける麻痺手の改善因子としては,発症前の上肢麻痺の程度を示す,発症前Fugl-Meyer Assessmentの値のみが挙げられてたと報告している.
 これらのように,生活期においては,18-36時間といった量の練習量ではなく,より多くの練習機会を提供することが,長期的な麻痺手の機能改善に繋がる可能性が示唆されている.よって,療法士が関わる臨床場面,もしくはそれ以外の場面で,如何に練習量を提供できるかが,上肢麻痺の予後に影響を与える因子となるかもしれない.

     

引用文献

  1. 1.Mccabe J, Monkiewicz M, holcomb J, et al. comparison of robotics, functional electrical stimulation, and motor learning methods for treatment of persistent upper extremity dysfunction after stroke: a randomized controlled trial. Arch Phys Med Rehabil 2015;96:981–90. 
  2. 2.Ward N, Brander F, Kelly K. Intensive upper limb neurorehaiblitaiton in chronic stroke: outcomes form the Queen Square programme. J Neurol Neurosurg Psychiatry 2019; 0: 1-9.

     

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