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Constraint-induced movement therapy(CI療法)において効果を導くために必要な反復回数について 〜説明変数を練習時間から反復回数に置き換える理由について〜

UPDATE - 2021.12.6

<抄録>

 脳卒中後の上肢麻痺における効果のエビデンスが確立された方法に,Constraint-induced movement therapy(CI療法)が存在する.CI療法は,1)麻痺手の量的練習,2)反復的課題指向型練習,3)練習によって確立した機能を実生活に反映するための行動学的戦略(Transfer Package),から構成されており,1),2)の部分において,量的な反復練習が必要なことがわかる.昨今では,CI療法において,練習時間を説明変数に置くことについて否定的な意見が多く,練習回数を説明変数として設定することが求められている.本コラムにおいては,反復回数が脳卒中後の麻痺手に対するCI療法の効果にどのように影響を与えるかについて,勘弁に解説を行う.

     

1.Constraint-induced movement therapy(CI療法)の説明変数は,練習時間と反復回数どちらを採用すべきか??

 脳卒中後の上肢麻痺に対する効果のエビデンスが確立された手法に,Constraint-induced movement therapy(CI療法)がある.CI療法は,Morrisら1の報告によると,1)麻痺手の量的練習,2)反復的課題指向型練習,3)練習によって確立した機能を実生活に反映するための行動学的戦略(Transfer Package),から構成されており,1),2)の部分において,量的な反復練習が必要なことがわかる.では,練習量において,過去のCI療法のプロトコルを遡ってみると,「練習時間」と言う説明変数を用いている研究が非常に多い.しかしながら, Kaplonらが,標準的なCI療法のプロトコルを検証した際に,提供された6時間のうち,療法士との会話や小休止等を除くと,課題を実施していた時間は3.65時間程度であったと報告している.2 したがって,練習時間は練習量を正確に示している可能性は低く,より明確な「反復回数」を説明変数として,あげるトレンドが形成されている.

     

2. どの程度の練習量が必要か?

 近年,上記でも述べたように,説明変数を「練習時間」から「反復回数」に変更すべき,と言ったトレンドが形成されている.実際に,Stockらも,参加者はCI療法中に,課題練習を行うために割り当てられた時間の全てにおいて,課題練習を遂行しているわけではないと報告している.これらの報告からも,練習時間の設定では,対象者の練習内容にばらつきが生じ,本当に必要な練習量が把握できないと言ったことが考えられている.そこで,Abdullahiら2が,CI療法における反復回数を用いたプロトコルの比較などを行い,これらが新たなCI療法の効果に関する説明変数となりうる可能性を示唆した3.こういった流れは,今後,研究や臨床においてCI療法のプロトコルを設計する際にも非常に重要な観点となることが予測される.
 先行研究において,動物研究や下肢の研究では,機能改善を促す練習回数について,1日の反復回数を300回から1000回が機能改善に寄与できる可能性が示されている3, 4.さて,CI療法の説明変数として,反復回数を設定したとして,どの程度の反復回数が,CI療法の効果を示すか,と言った点について論述していく.Abdullahiら5は, 1762編の論文から,8つの研究を厳密に選別し,システマティックレビューによって,探索的な検討を行っている.この研究においては,CI療法のプロトコルでは,麻痺手を用いた反復的な課題指向練習を1日に45回から1280回実施されており,研究ごとにおいて,非常にばらつきのある結果となった.さらに,これらの練習量で設定されたプロトコルを用いた研究においては,麻痺側上司の運動機能,Quality of life,酸素摂取量,歩行速度,日常生活動作,痙縮等,多くのアウトカムの改善に有効であると報告している.このシステマティックレビューからは,どのくらいの練習量が最適か,と言うことには触れていない.しかしながら,効果の説明変数を反復回数で述べることの重要性について,この結果から推奨している.
 また,過去の練習時間で区切ったプロトコルにおいては,多くの研究者が指摘している通り,練習時間を公立的に課題練習に当てられていない可能性が示唆されている.この点について,今回示された300回〜1000回かつ45回〜1280回の範疇で,実現可能な時間数の中で達成できる反復回数を設定することで,より現実可能性の高いCI療法を展開できる可能性がある.反復回数といった説明変数を念頭に,研究や臨床におけるCI療法のプロトコルを刷新してみることが,有用となるかもしれない.

     

引用文献

  1. 1.Morris DM, et al. Constraint-induced movement therapy: characterizing the intervention protocol. Eura Medicophys 42: 257268, 2006
  2. 2.Kaplon RT, et al. Six hours in the laboratory: quantification of practice time during constraint induced therapy. Clin Rehabil 21: 950–958, 2007
  3. 3.Schröder J, et al. Feasibility and effectiveness of repetitive gait training early after stroke: a systematic review and meta-analysis. J Rehabil Med 51:78–88, 2019
  4. 4.Birkenmeier RL, et al. Translating animal doses of task-specific training to people with chronic stroke in 1-hour therapy sessions: a proof-of-concept study. Neurorehabil Neural Repair 4(7):620–635, 2010
  5. 5.Abdullahi A, et al. Is time spent using constraint-induced movement therapy an appropriate measure of dose? A critical literature review. Int J Ther Rehabil 21: 140-146, 2014

     

<最後に>
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