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追加療法としてのConstraint-induced movement therapy(CI療法)とロボット療法の効果の差について

UPDATE - 2021.12.13

<抄録>

 脳卒中後の上肢麻痺において,効果のエビデンスが確立されたアプローチが複数開発されている.アメリカ心臓学会/脳卒中学会のガイドライン2016では,脳卒中後の上肢麻痺に対するアプローチ方法として,効果のエビデンスが比較的確立されているものに,課題指向型アプローチ,Constraint-induced movement therapy(CI療法),電気刺激療法,メンタルプラクティス,ロボット療法がある.それぞれ効果を示すアウトカムが様々であり,それらを眼前の対象者の病態を鑑みた上で,組み合わせて利用すべきだと考えられている.本コラムにおいては,その中でもCI療法とロボット療法との比較を通して,それらのアプローチの特徴を解説および考察していく.

     

1.過去の研究におけるConstraint-induced movement therapy(CI療法)とロボット療法の特徴について

 1990年代から,脳卒中後の上肢麻痺に対する上肢機能アプローチについては,複数の手法が開発されてきている.それらの手法は,開発以降も公衆衛生学のルールに則った臨床試験によって,その効果が多くの研究者や臨床家によって検証され,効果のエビデンスが確立されつつある.例えば,脳卒中後の上肢麻痺に対するアプローチにおいて,効果のエビデンスが確立されてきたアプローチに,課題指向型アプローチ,Constraint-induced movement therapy(CI療法),電気刺激療法,メンタルプラクティス,ロボット療法がある.
 ここにあげた手法については,それぞれ特徴があり,それぞれが影響を及ぼすアウトカムなども明らかになっている.さて,ここではCI療法とロボット療法の特徴について,先行研究を例に挙げながら解説を進めていく.CI療法は,脳卒中後の上肢機能アプローチとして,多くの研究がなされているが,近年では実生活における麻痺手の使用行動について,他療法よりも強い影響力を持っていると考えられている.例えば,Barzelら1やHuseyinsinogluら2の研究においては,PNFやボバースコンセプトを提供された群と,CI療法を提供された群をランダム化比較試験によって,その効果を比較したところ,International Classification of Functioning, Disability and Health(ICF: 国際生活機能分類)における身体,身体構造のカテゴリに所属するWolf-Motor Function Testにおいては,両群間に有意な変化を認めなかったが,ICFの活動・参加のカテゴリに所属するMotor Activity Log(MAL)においては,他療法に比べて,CI療法の方が有意な改善を認めたと報告した.このように,CI療法はICFにおける機能・身体構造レベルのアウトカムにおいては,他療法と大きな差はないが,活動・参加レベルのアウトカムにおいては,影響力が強いということが窺える.
 一方,ロボット療法においても同じような検証がなされている.例えば,Takahashiら3は,脳卒中患者に対して,ランダム化比較試験において,一般的なアプローチに自主練習として,従来のアプローチを提供した群と,ロボット療法を提供した群で比較検討を実施した.結果,ロボット療法を実施した群にICFにおける機能・身体構造のカテゴリに所属するFugl-Meyer Assessment(FMA)において,ロボット療法が他療法に比べ,有意な改善を示したと報告している.しかしながら,ICFにおける活動・参加のカテゴリに所属するMALにおいては有意な差は認めてないことからも,ロボット療法は特に機能・身体構造のアウトカムに強みを持つ介入である可能性が示唆された.

     

2.ランダム化比較試験におけるCI療法とロボット療法の直接的な比較検討

 Trerranovaら4は,従来のリハビリテーションに加えて,CI療法を実施する群と,ロボット療法を実施した群で,ランダム化比較試験を用いた比較検討を行っている.軽度から中等度の麻痺を有する対象者51名に対し,それらを実施したところ,両群ともに介入前後でFMAとWMFTにおける有意な改善を認めた.しかしながら,両群間におい比較では,FMAおよびWMFTのアウトカムに有意な改善差は認めなかったと報告している.さらに,この研究においては,実生活における麻痺手の使用とその際の使いやすさを検討するArm Motor Ability testにいても,両群の間に有意な改善差は認めなかったと報告している.この結果から鑑みると,専攻研究の結果とは異なる知見が,この比較研究においては認められる.したがって,これら療法の特徴を断定的に語ることはまだまだできない.今後,多くの研究がなされ,システマティックレビュー、及びメタアナリシスが実施されることが望まれる分野である.

     

引用文献

  1. 1.Barzel A, et al. Home-based constraint-induced movement therapy for patients with upper limb dysfunction after stroke (HOMECIMT): a cluster-randomised, controlled trial. Lancet Neurol 14: 893-902, 2015
  2. 2.Huseyinsinoglu BE, et al. Bobath concept versus constraint-induced movement therapy to improve arm functional recovery in stroke patients: a randomized controlled trial. Clin Rehabil 26: 705-715, 2012
  3. 3.Takahashi K, et al. Efficacy of upper extremity robotic therapy in subacute poststroke hemiplegia: an exploratory randomized trial. Stroke 47: 1385-1388, 2016
  4. 4.Terranova TT, et al. Robot-assisted therapy and constraint-induced movement therapy for motor recovery in stroke. Results form a randomized clinical trial. Front Neurorobot 15: 684019, 20201

     

<最後に>
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