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National Institutes of Health Stroke Scale(NIHSS)について

UPDATE - 2021.12.20

<抄録>

 National Institutes of Health Stroke Scale(NIHSS)とは,脳卒中,脳出血,クモ膜下出血など脳卒中の神経学的重症度を評価するスケールの一つである.一般的には,救急や脳神経外科,神経内科の医師が使用するケースが多く,世界的にも広く使われている代表的なスケールである.リハビリテーション領域においては,主に急性期病院などでは,医師のカルテにて確認することが多いかもしれない.つまり,NIHSSによって評価された数値を見ることによって,その状況を理解することが療法士においても求められる.本コラムにおいては,NIHSSの成り立ちについて簡単に解説を行う.

    

1. National Institutes of Health Stroke Scale(NIHSS)について

 National Institutes of Health Stroke Scale(NIHSS)は,急性期における脳血管障害を有する対象者の重症度を評価する一般的な評価スケールの一つであり,救急,脳神経外科,神経内科など,脳血管疾患に関わる医師・看護師,そして理学療法士,作業療法士,言語聴覚士等にも広く使用されている.NIHSSは,意識水準,意識障害-質問,意識障害-従命,注視,視野,顔面神経麻痺,左右上下肢運動,失調,感覚,言語(失語),構音障害,消去現象と注意障害(無視)の15項目から構成され,各項目において 0点から2点,0点から3点,0点から4点のいずれかの点数にて評価がなされる(合計点数は42点).点数が高くなるにつれて重症度が重いことを示す評価である.

 NIHSSは,International Classification of Functioning, disability and health(ICF)のドメインとしは,身体構造・機能に割り付けられている.評価の対象としては,運動機能と認知機能を対象とした検査である.基本的に,脳血管障害においては,発症から2ヶ月以内の急性期の入院医療においての使用が推奨されている.

 NIHSSの脳血管障害における重症度については,Brottら1が,25点以上:非常に重症,15-24点:重症,6-14点:軽症から中等症,1-5点:軽症と述べている.また,Schlegel2やRundkら3の研究によると,NIHSSによる転帰の予測としては,5点未満:80%以上の対象者は,自宅退院が可能,6-13点:急性期・亜急性期における一般的なリハビリテーションが必要,14点以上:スキルが必要な医療的・介護的なケアが長期間必要,と言った形で示されている.

  なお,信頼性については,Brottら1の医療関係者および非医療関係者を対象とした試験においても検者内信頼性が,Kappa係数にて0.66-0.77,検者間信頼性が,Kappa係数にて0.69と中等度から高度の一致率を認めていた.さらに,臨床医における検討では,検者内信頼性が,級内相関係数にて0.94,検者間信頼性が,級内相関係数にて0.95と非常に高い一致率を示したと報告されている.

 また,NIHSS自体が,妥当性を検証する際のアンカーとなるべき指標であり,その妥当性の検証は困難であるが,いくつかの研究においては,それらについて挑戦的に検証している.例えば,NIHSSで評価した機能的状況と発症後早期のMagnetic resonance imaging(MRI) scanによる出血,梗塞像における病巣体積(相関係数r=0.57)5,発症後1週間時点において取得されたComputed tomography(CT)scanによる脳梗塞像の病巣の大きさ(r=0.68 )1,発症後2週間の時点におけるMRI scanにおける脳梗塞巣の体積(r=0.61)6と有意な中等度の相関を認めている. これらの研究結果より,NIHSSを用いた評価の妥当性はある程度担保されていると考えられている.

 実際の臨床場面においては,理学療法士・作業療法士・言語聴覚士がNIHSSを用いて,対象者の現状を評価することは稀であると思われる.しかしながら,特に急性期病院のカルテにおいては,これらの指標はmodified Rnkin Scaleと並び,記載されていることが多い.これらの数値の意味を正確に解釈,理解し,医療サイドとの連携をとりつつ,急性期におけるリハビリテーションを進める必要があると思われる.また,回復期リハビリテーション病院においては,急性期病院からのサマリーなどにこの数値が記載されていることが少なからずあることが想定できる.その場合に,対象者の急性期の状態と,現状とを比較・検討することで,対象者の予後予測の一助となる可能性がある.

     

引用文献

1. Brott T, et al. Measurements of acute cerebral infarction: a clinical examination scale. Stroke 20: 864-870, 1989

2. Schlegel D, et al. Utility of the NIH Stroke Scale as a predictor of hospital disposition. Stroke 34: 134-137, 2003

3. Rundek T, et al. Predictor of resource use after acute hospitalization: the Northern Manhattan Stroke Study. Neurology 55: 1180-1187, 2000

4. Goldstein LB, et al. Reliability of the National Institutes of Health Stroke Scale. Extension to non- neurologists in the context of a clinical trial. Stroke, 28 : 307─310, 1997. 

5. Leinonen JS, et al. Low plas- ma antioxidant activity is associated with high lesion volume and neurological impairment in stroke. Stroke, 31 : 33─39, 2000. 

6. Schiemanck SK, et al. Rela- tionship between ischemic lesion volume and func- tional status in the 2nd week after middle cerebral artery stroke. Neurorehabil Neural Repair, 19 : 133─ 138, 2005.

     

<最後に>
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