TOPICS

お知らせ・トピックス
竹林崇先生のコラム

Constraint-induced movement therapyは,麻痺手の使用頻度に対して影響を与えることができるのか?–システマティックレビューとメタアナリシスの観点から–

UPDATE - 2022.1.17

<抄録>

 脳卒中後の上肢麻痺に対するエビデンスが確立されているアプローチの1つにConstraint-induced movement therapy(CI療法)がある.CI療法とは,一見,麻痺側上肢の機能練習と考えられているが,その本質は,麻痺手の使用行動を改善するためのツールである.多くのランダム化比較試験によって,実生活における麻痺側上肢の使用頻度の向上を認めており,米国心臓/脳卒中学会のガイドラインでは,実生活において麻痺側上肢を使うために有効な手法であると示されている.上記のように単発のランダム化比較試験においては,比較的結果を残している療法であるものの,包括的な効果の傾向をみるシステマティックレビューやメタアナリシスではどのように捉えられているのだろうか.本、コラムにおいては,近年の脳卒中後の成人対象者に関するCI療法のステマティックレビューおよびメタアナリシスの結果を複数紹介し,そのトレンドを確認する.

     

1.脳卒中後の麻痺側上肢の使用行動を変容するConstraint-induced movement therapyの最近の動向 –システマティックレビューおよびメタアナリシスの観点から–

 脳卒中後に生じる上肢麻痺に対する効果のエビデンスが確立されている療法の1つにConstraint-induced movement therapy(CI療法)がある.CI療法は,多くのランダム化比較試験により,国際生活分類の機能レベルのアウトカムを改善する,脳卒中後の麻痺手に対する機能練習として認識されることが多いが,その本質は別のところにあると複数の研究者達は考えている.例えば,CI療法を開発したアラバマ大学のTaubらの元で,CI療法のプロトコルを執筆したMorrisら1は,『CI療法の最も重要な目的の1つとして,実生活における麻痺手の使用行動の改善が挙げられる』と述べられている.また,筆者も,アラバマ大学にて,CI療法に関するトレーニングを受けた際に,講義にて,『CI療法の本質は,麻痺側上肢の機能改善ではなく,麻痺手の使用行動の改善にある』とTaub自身が述べていたことも記憶に新しい.それらの考えから,米国心臓/脳卒中学会においても,CI療法は実生活において麻痺側上肢を使うために有効な手法であると認識され,推奨されている2.
 では,近年の脳卒中後の成人対象者に関するCI療法のシステマティックレビューやメタアナリシスにおいて,CI療法が実生活における麻痺手の使用行動にどのような影響を与えると考えられているのであろうか.例えば,2021年のAbudullahiら3は,9つのランダム化比較試験からシステマティックレビューおよびメタアナリシスを実施している.その結果,介入前後において,9つの研究ともに,麻痺手の使用行動の有意な改善は認めたものの,対照群となるその他のリハビリテーションに対して,有意な差は認められなかったと報告している.一方,2015年に発表されたKwakkelらのシステマティックレビューおよびメタアナリシスでは,介入直後においては,1本の論文からオリジナルのCI療法,30本の論文から修正CI療法ともに,対照群に比べ,有意な改善を認めたと報告している.また,介入後4ヶ月から5ヶ月が経過した長期フォローにおいても,1本の論文からオリジナルのCI療法,13 本の論文から修正CI療法ともに,対照群に比べ、有意な改善を示したと報告がなされている.
 実生活における麻痺側上肢の使用行動の変化に対し,システマティックレビューおよびメタアナリシスを実施している研究は,近年では非常に限られている.さらに,研究ごとで,結果も大きく異なっている.それらの要因としては, CI療法のプロトコルが,研究ごとで大きく異なる点が挙げられる.基本的に前述したMorrisら1のプロトコルでは,1)麻痺側上肢を用いた量的練習,2)反復的課題指向型練習,3)集中練習によって,獲得した機能を実生活に転移するための行動心理学的手法(Transfer package),という麻痺側上肢の機能と使用行動を改善するための,3つの重要なコンセプトが挙げられている.しかしながら,研究ごとを精査すると,特に3)集中練習によって,獲得した機能を実生活に転移するための行動心理学的手法(Transfer package)を実施していない研究が散見される.
 先行研究においては,CI療法において,麻痺側上肢に対する集中練習に加えて,このTransfer packageの実施によって,実生活における麻痺手の使用行動の改善が有意に異なるといった報告も複数認められている.従って,システマティックレビューおよびメタアナリシスを実施する際に,取り上げたCI療法に関する論文の内容によっても,これらの結果は大きく異なることが考えられた.

     

引用文献
1.Morris DM, et al. Constraint-induced movement therapy: Characterizing the intervention protocol. Euro Medicophys 42: 257-268
2.Abdillahi A, et al. Effect of constraint-induced movement therapy on persons-reported putcomes of health status after stroke: a systematic review and meta-analysis. Int J Rehabil Res 44: 15-23, 2021
3.Kwakkel G, et al. Constraint-induced movement therapy after stroke. Lancet Neurol 14: 224-234, 2015

     

<最後に>
【1月14日他開催:病態理解に基づくパーキンソン病のリハビリテーション】
パーキンソン病の病態、広範な症状、治療、unmet clinical needsへの対応、実生活場面の管理や指導について、全6回に渡り説明する。
https://rehatech-links.com/seminar/22_1_14/

     

【オンデマンド配信:高次脳機能障害パッケージ】
 1,注意障害–総論から介入におけるIoTの活用まで–
 2,失認–総論から評価・介入まで–
 3,高次脳機能障害における社会生活支援と就労支援
  –医療機関における評価と介入-
 4,高次脳機能障害における就労支援
  –制度とサービスによる支援・職場の問題と連携–
 5,失行
 6,半側空間無視
 通常価格22,000円(税込)→16,500円(税込)のパッケージ価格で提供中
https://rehatech-links.com/seminar/koujinou/

前の記事

脳卒中後に上肢麻痺を呈した対象者に対するConstraint-induced movement therapy(CI療法)はQuality of lifeにどのような影響を与えるのか?

次の記事

脳卒中後に生じる上肢麻痺に対する介入における練習量とタイミングについて