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竹林崇先生のコラム

メンタルプラクティスを臨床においてどのように運営すればよいか?– Constraint-induced movement therapyとの併用療法から考える−

UPDATE - 2022.3.11

<抄録>

 効果のエビデンスが確立されている脳卒中後上肢麻痺に対するリハビリテーションアプローチの一つに,メンタルプラクティスがある.メンタルプラクティスは,他者や自身の健側の動きを加工した提示された正確な動作を観察することで,機能回復を促す方法の一つである.多くのランダム化比較試験による検証において,有効性が確保されている.しかしながら,その単独での介入効果は,臨床上意味のある変化を導かないとも言われており,介入に用いるためには,工夫が必要と考えられている.本コラムにおいては,効果のエビデンスが確立されているConstraint-induced movement therapy(CI療法)との併用療法から、臨床における運用方法について解説を行う.

     

1.メンタルプラクティスの効果

 脳卒中後の上肢麻痺は対象者のQuality of lifeの低下に関連が深いと言われており,リハビリテーションの場面において,早急に解決しなければならない問題の一つと考えられている.2016年に発刊されたアメリカ心臓/脳卒中学会のガイドラインにおいて,脳卒中後の上肢麻痺に対するアプローチとして,推奨できる5つのアプローチが提示された.この5つとは,1)課題指向型アプローチ,2)Constraint-induced movement therapy(CI療法),3)電気刺激療法,4)メンタルプラクティス,5)ロボット療法,である.
 さて,ここでは,アメリカ心臓/脳卒中学会のガイドラインにおいても,推奨されたアプローチの一つであるメンタルプラクティスについて,考えていこうと思う.メンタルプラクティスとは,正確な運動を参照しながら,イメージすることで,実際に運動した際と似た脳の興奮性を誘発できる手法として注目されている.上にも挙げた効果のエビデンスが確立されているアプローチの多くは,対象者自身の反復的な随意運動が必要なものがほとんどである.その中でも,メンタルプラクティスは,正確な運動をイメージする手法であり,対象者自身の明確な随意運動を必要としないアプローチと考えられている.そのため,随意運動を自ら惹起できない重度から中等度の上肢麻痺を有した対象者に,利用できる数少ないアプローチとして,期待が高い.ただし,随意的な運動を必要としない代わりに,高いイメージ能力と療法士等からもたらされる言語的な指示について,正確に理解,履行できる能力が必要とされている.
 メンタルプラクティスの健常人における試験では,ヒトの運動におけるパフォーマンスに抑制をかけるStriatum areaのアクティビティを改善すると報告している.さらに,メンタルプラクティスによって,他人の正確な動きを観察することで,効率的な運動出力に寄与する運動誘発電位を改善するとも言われている.これらの研究からも,メンタルプラクティスは,脳卒中後の上肢における機能やパフォーマンスの改善に寄与する可能性があると考えられている.ただし,ガイドラインも含めて,メンタルプラクティスによる介入だけでは,臨床上意味のある変化を導くことは困難だとも言われているため,近年では他のエビデンスが確立されているアプローチの効果をより増幅するためのコンディショニングのためのアプローチとして,利用されることが多い.

     

2.メンタルプラクティスとCI療法の併用療法に関する研究

 2009年に,いち早くメンタルプラクティスの効果に着目したPageらは,メンタルプラクティスとmodified CI療法(修正CI療法:1日の練習時間30分にまで短縮し,毎日練習を行わず,週に3回程度の集中練習を10週間の間実施するアプローチ)を併用した介入群と修正CI療法を単独で実施した対照群の比較を,ランダム化比較試験を用いて効果を検証したところ,介入群の方が対照群に比べ,有意な上肢機能およびパフォーマンスの改善を認めたと報告した.しかしながら,この研究は小規模な探索的研究だったため,その結果については限界も多く認められた.
 その後も,大規模なランダム化比較試験はいまだに実施されていないが,小規模な追加試験は複数実施されている.そのうちの一つにKimらの研究がある.彼らは14名の対象者を,メンタルプラクティスと修正CI療法を併用した介入群と修正CI療法を単独で実施した対照群の比較を,ランダム化比較試験を用いて効果を検証したところ,対照群に比べて,介入群において,大脳皮質の興奮性,麻痺側上肢機能,日常生活活動における使用行動が有意に改善したことが報告された.
 これらの研究からも,メンタルプラクティスは単独で実施するよりも,各種運動療法のコンディショニングとして,導入することで,現状のアプローチの効率化を図ることができる可能性が示唆されている.

     

引用文献
1.Lacourse MG, Orr EL, Cramer SC, et al. Brain activation during execution and motor imagery of novel and skilled sequential hand movements. Neuroimage. 2005;27: 505–519.
2.Williams J, Pearce AJ, Loporto M, et al. The relationship between corticospinal excitability during motor imagery and motor imagery ability. Behav Brain Res. 2012;226: 369–375.
3.Page SJ, Levine P, Khoury JC. Modified constraint-induced therapy combined with mental practice: thinking through better motor outcomes. Stroke. 2009;40:551–554.
4.Kim H, Yoo EY, Jung MY, et al. The effects of mental practice combined with modified constraint-induced movement therapy on corticospinal excitability, movement quality, function, and activities of daily living in person with stroke. Disabil Rehabil. 2017;

     

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