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竹林崇先生のコラム

バーチャルリアリティ技術を用いた運動制御機能に対するアプローチは従来の作業療法に比べ,生態機能にどのような影響を与えるか?

UPDATE - 2022.4.8

<抄録>

 近年,バーチャルリアリティ技術を用いたリハビリテーションアプローチが爆発的に発展している.多くの研究においては,従来法に対して,有用な上肢機能の改善を認めており,リモートリハビリテーションを含めた,今後の重要なリハビリテーション戦略の一つと考えられている.本コラムにおいては,バーチャルリアリティ技術を用いたリハビリテーションアプローチが,生活期の脳卒中患者における臨床的な指標で確認できる上肢機能だけでなく,生態機能を測る様々な基礎検査において,どう言った変化をもたらすかについて,最新の知見を紹介する.

     

1.脳卒中後上肢麻痺に対するバーチャルリアリティ技術を用いたリハビリテーションアプローチについて

 リハビリテーションは,脳卒中を呈した対象者においては,非常に重要であるものの,長い介入期間を必要とするものである.また,その中で,練習量に応じて,身体制御の技能が上がるとともに,中枢神経の神経可塑性により,運動機能・制御技能の回復が生じる.これらからも,長期間の介入期間における多大な練習量を伴う運動制御に対するアプローチは,脳卒中患者においては,欠かせないものと考えられている.
 しかしながら,運動機能・制御技能に対するアプローチは,筋力増強練習や反復的な単関節運動の反復など,シンプルで面白みに欠けるものが多く,アプローチに対するモチベーションを欠き,アプローチ継続のコンプライアンスも一般的に低いと言われている.したがって,継続のコンプライアンスが低ければ,練習量を確保できず,中枢神経における脳の可塑性も生じないため,運動機能・制御技能の改善も認められない.そこで,近年においては,それら単調なプログラムを修正し,モチベーションと継続のコンプライアンスを向上させるためにバーチャルリアリティ技術が採用されている.
 近年では,バーチャルリアリティを用いたリハビリテーションでは,ベッドマウントディスプレイ等の外部機器を用いた没入型バーチャルリアリティシステムを用いた取り組みが多い.Songら1は,脳卒中患者に対して,両手動作練習を実施するために没入型バーチャルリアリティシステムを用いた練習を実施し,介入前後において,上肢機能に有意な改善を認めたと報告している.さらに,Ögünら2は,Leap motionを基盤とした3D没入型バーチャルリアリティシステムを用いた週3回,6週間の練習の効果を検証している.この研究では,65名の虚血性脳卒中患者をバーチャルリアリティ群と一般的なリハビリテーションを提供する対照群にランダムに割り付けた.結果,バーチャルリアリティ群は対照群に比べて,Fugl-Meyer Assessmentの上肢機能項目,Action research arm test,FIMにおいて,有意な改善を認めたと報告している.これらの結果から,バーチャルリアリティシステムを用いたリハビリテーションの効果のエビデンは少しずつ蓄積されていっている.

     

2.バーチャルリアリティシステムを用いた生活期脳卒中患者の上肢機能に対するアプローチは,炎症,酸化ストレス,中枢神経系における脳の可塑性に影響を与えるか?

 臨床試験において,脳卒中患者の上肢機能の改善においては,効果のエビデンを示しているバーチャルリアリティシステムを用いたリハビリテーションであるが,それらが細胞の炎症や酸化ストレス,さらには中枢神経系における脳の可塑性にどのような影響を与えるかについて,検討している研究は少ない.近年,Huangら3が,ランダム化比較試験を用いて,一般のリハビリテーションと没入型のバーチャルリアリティシステムを用いたリハビリテーション前後の,interleukin 6 (IL-6), intracellular adhesion molecule 1 (ICAM-1), heme oxygenase 1 (HO-1), 8-hydroxy-2-deoxyguanosine (8-OHdG), brain-derived neurotrophic factor (BDNF)の血液マーカと,Fugl-Meyer Assessmentによる上肢項目について,比較を実施している.
 この研究では,バーチャルリアリティシステムを用いた群は,一般的なリハビリテーションを実施した群に比べて,Fugl-Meyer Assessmentの上肢項目(肩肘前腕,手関節,手指のそれぞれのサブアウトカムにおいても)および血清IL-6,HO-1,8-OHdGにおいて有意な改善を認めたと報告している.これらの結果から,没入型のバーチャルリアリティシステムを用いたリハビリテーションは臨床指標における上肢機能を改善させるとともに,それらが細胞の炎症や酸化ストレス,さらには中枢神経系における脳の可塑性を示す基礎評価においても良好な結果を示すことが明らかになった.

     

引用文献
1.Song YH, et al. Effect of immersive virtual reality-based bilateral arm training in patients with chronic stroke. Brain Sci. 2021;11:1032.
2.Ögün MN, et al. Effect of leap motion-based 3D immersive virtual reality usage on upper extremity function in ischemic stroke patients. Arq Neuropsiquiatr. 2019;77:681–8.
3.Huang CY, et al. Effects of virtual reality-based motor control training on inflammation, oxidative stress, neuroplasticity and upper limb motor function in patients with chronic stroke: a randomized controlled trial. BMC Neurology. 2022; 22: 21.

     

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