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脳卒中の病型や認知機能障害から予測される日常生活活動の予後について

UPDATE - 2022.7.22

<抄録>

 脳卒中後の日常生活活動(ADL)における予後予測は,対象者と療法士が目標設定をする上で非常に重要である.また,目標設定から派生するアプローチ方法の考案等についても,非常に重要な役割を担っている.現在,世界の主要な脳卒中後のリハビリテーションに関するガイドラインにおいて,予後予測は推奨されている必須の手続きの一つである.本コラムにおいては脳卒中の病型および認知機能障害の有無から予測されるADLの予後について,いくつかの研究内容を用いて解説を行う.

     

1.脳卒中の病型(出血性および虚血性脳卒中に)から予測されるADL の予後について

 Paolucciら1)は,270名の虚血性脳卒中患者を対象に,脳卒中発症初期の重症度、年齢,性別,脳卒中発症からの期間をマッチングさせた出血性脳卒中患者との間で,ADLの機能的な予後について比較検討を行った.その結果,出血性脳卒中患者は,虚血性脳卒中患者よりも,Barthel Indexにおいて,有意なADLの自立度の向上が見られたと報告した.また,ADLの改善の可能性はオッズ比で2.48,予測精度87.6%であったと示されている.また,Matsubaraら2)の研究においても,3122名の脳卒中患者を対象に,出血性脳卒中患者と虚血性脳卒中患者のADLの自立度を測るFIMの運動項目の改善量を比較検討している.その結果,出血性脳卒中患者が,虚血性脳卒中患者に比べ,FIMの運動項目の改善量が有意に改善したと報告した.また,回復期リハビリテーション 病院における入院期間についても,虚血性脳卒中患者よりも,出血性脳卒中患者の方が有意に短かったと報告している.これらの研究からも,脳卒中の病型がADLの自立度に影響を与える因子である可能性が考えられる.

     

2.認知機能から予測されるADL の予後について

 認知機能とADLの関係については複数の報告が認められる.Herutiら3)は,入院時の認知機能が良好な場合,年齢,性別,発症から入院までの期間,入院期間,脳卒中の重症度を調整した所,入院時の認知機能が高い患者ほど,リハビリテーション後のFIMの結果が良好であった(オッズ比で2.0)と報告した.また,Lesniakら4)は,認知機能障害を呈する脳卒中患者を1年間フォローアップした所,1年後のBarthal Indexを予測する因子として,認知機能における遂行機能障害を有していることが,ADLの機能低下を因子であると報告されている(オッズ比で5〜6.94).さらに,Zinnら5)は,認知機能の低下とADL,手段的ADLの関係性について,脳卒中発症から6ヶ月間追跡した結果,認知機能障害を有する群に比べて,ない群の方が有意なIADLの改善を示したと報告している.
 次に,半側空間無視がADLに与える影響について,Katzら6)は,脳卒中患者を半側空間無視の有無によって二群に割り付け,それぞれのADLとIADLの状況を発症から1年後まで追跡を行っている.その結果,ADLとIADLにおいて,半側空間無視を有する群は,有さない群に比べて,有意にパフォーマンスが低かったと報告した.従って,半側空間無視は入院から発症後1年後までの追跡において,ADLとIADLの転帰を予測する主要な予測因子であると報告した.
 失行に関しては,渡邉ら7)は,失行の程度とADLの改善量の関係性の間に中等度の有意な相関を認めたと報告している.Meijerら8)は,脳卒中後の亜急性期におけるADLの予後予測因子を調査するためにシステマティックレビューを実施している.その中で,方法論が正確で科学的根拠がある論文1本において,観念運動失行,観念失行が予後予想因子出あったと報告している.また,非常に古い論文となるが,Saekiら9)は,183名の脳卒中患者に対して,IADLの一つである復職について,失行の有無が与える影響について,調査をしている.その結果,失行がないことが復職の確率が高い可能性があることを示唆した(オッズ比で4.16).

     

引用文献
1.Paolucci S, Antonucci G, Grasso MG, et al:Functional outcome of ischemic and hemorrhagic stroke patients after inpatient rehabilitation:a matched comparison. Stroke 34:2861—2865, 2003
2.Matsubara M, et al. ADL outcome of stroke by stroke type and time from onset to admission to acomprehensive inpatient rehabilitation ward. J Stroke Cerebrovasc Dis 30: 106110, 2021
3.Heruti RJ, Lusky A, Dankner R, et al:Rehabilitation outcome of elderly patients after a first stroke:effect of cognitive status at admission on the functional outcome. Arch Phys Med Rehabil 83:742—749, 2002
4.Leśniak M, Bak T, Czepiel W, et al:Frequency and prognostic value of cognitive disorders in stroke patients. Dement Geriatr Cogn Disord 26:356—363, 2008
5.Zinn S, Dudley TK, Bosworth HB, et al:The effect of poststroke cognitive impairment on rehabilitation process and functional outcome. Arch Phys Med Rehabil 85:1084—1090, 2004
6.Katz N, Hartman—Maeir A, Ring H, et al:Functional disability and rehabilitation outcome in right hemisphere damaged patients with and without unilateral spatial neglect. Arch Phys Med Rehabil 80:379—384, 1999
7.渡辺 直,倉林正彦,真塩 清:亜急性期脳卒中のFIMを指標としたADL予測因子の検討.北関東医56:137—142,2006
8.Meijer R, et al. Prognostic factors for ambulation and activities of daily living in the subacute phase after stroke. A systematic review of the literature. Clin Rehabil 17: 119-129, 2003
9.Saeki S, et al. Return to work after stroke. A follow-up study. Stroke 26: 399-401, 1995

     

<最後に>
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