TOPICS

お知らせ・トピックス
竹林崇先生のコラム

脳卒中後の感覚障害に対するアプローチの評価と実際(4)

UPDATE - 2022.9.19

<抄録>

 感覚障害は脳卒中後に生じる障害において,最もポピュラーなものの一つである.感覚障害によるフィードバックの欠如は,時に運動障害にも影響を与え,身体のパフォーマンスを低下させる恐れがある.本コラムにおいては,それらに対するアプローチの実際と評価について,論述を行うものとする.

     

1.脳卒中後の感覚障害に対するアプローチの評価と実際(4)

 脳卒中後のリハビリテーションにおいて,多くの研究が実施され,効果のエビデンスも多数報告されている.しかしながら,その多くの研究は,運動を基盤としたアプローチがほとんどである.一方,ある研究者は,運動を基盤としたアプローチは,体性感覚障害について良い影響を与えないどころか,もしろその状況を悪化させる可能性すらあると報告している1.
 脳卒中後に生じる体性感覚の自然回復について,6ヶ月間にわたる運動と感覚障害,それぞれに対して,継続的な検査を行う観察が行われている.現在までに,脳卒中後の感覚障害に対する複数のリハビリテーションプログラムが開発されているが,その方法論は様々な形態を取っており,手法によってばらつきが存在する.1998年から2007年にかけて行われたシステマティックレビューにおいては,14の研究を対象に分析がなされているが,リハビリテーションプログラムの対象者が様々であることや,アプローチの方法が多様であること(受動的,能動的,異なる感覚モジュールを対象に実施されていた等),さらには,結果の測定方法として用いられるアウトカムが研究ごとに異なり,多様であったこと等が原因で,感覚障害に対するリハビリテーションプログラムが有効であるというエビデンスは限られたものであったとされている2.この結果は,脳卒中後に生じる感覚障害の複雑さと,この複雑な現象に対して効果的にアプローチするための現時点における大きな課題を浮き彫りにしたことが考えられている.
 脳卒中後の感覚障害に対するアプローチに関して,Byleら3は,学習型の感覚運動トレーニングの方法を用いて,質感(テクスチャー),形/形状,過敏/鈍麻,触覚のモダリティの識別や,圧覚の調整等の複雑な固有感覚を含む活動を行う中で,運動機能単体ではなく,感覚機能も必要とする多くの物品操作を行った.他には,Careyら4は,受動的な感覚暴露と比較して,質感(テクスチャー),位置,物体識別を目的とした能動的な感覚識別課題の効果を調査するためにランダム化比較試験を実施した.
 この2つの研究に多くの共通点があり,どちらの研究においても,多次元比較(質感[テクスチャー],形状/形態,重量,硬さ/柔らかさ,位置)を用い,神経可塑性を誘発することが知られている原理(例:高強度の反復,難易度の高い識別による段階的練習)に従って,高いレベルの反復を行った.また,両研究において,資格はほとんどの課題で遮断がなされていた(精度のフィードバックには視覚は使用された).また,課題においても,対象者の特性を評価するために,多くの対象物の操作することを要求された.また,両研究において,成果指標となるアウトカムとして,触覚,固有感覚,物体・形状認識といった様々なモダリティの感覚識別が可能となるように,多角的なスコアが利用されていた.
 その結果,両研究ともに,アプローチ後の感覚識別能力に関しては有意な変化を認め,Byleらの研究に限って言えば,感覚機能の改善とともに運動機能の改善も認められたと報告されている.

     

2.おわりに

 今回は,『脳卒中後の感覚障害に対するアプローチの評価と実際』と題して,4回に渡って,世界的に使用されている感覚障害を測るアウトカムの長所と短所,そして,代表的な感覚障害に対する介入試験について紹介した.運動障害のリハビリテーションに比べ,感覚障害に関するリハビリテーションは,非常に限られている.しかしながら,研究においては明確な成果も挙げている.今後,これらの知識を基盤とした感覚障害への介入も発展が期待されている分野であると思われる.

     

引用文献
1.Park SW, Wolf SL, Blanton S, Winstein C, NicholsLarsen DS. The EXCITE Trial: Predicting a clinically meaningful motor activity log outcome. Neurorehabil Neural Repair. 2008;22(5):486-493.
2.Schabrun SM, Hillier S. Evidence for the retraining of sensation after stroke: A systematic review. Clin Rehabil. 2009;23(1):27.
3.Byl NN, Pitsch EA, Abrams GM. Functional outcomes can vary by dose: Learning-based sensorimotor training for patients stable poststroke. Neurorehabil Neural Repair. 2008;22(5):494
4.Carey L, Macdonell R, Matyas TA. SENSe: Study of the Effectiveness of Neurorehabilitation on Sensation: A randomized controlled trial. Neurorehabil Neural Repair. 2011;25(4):304-313.

     

<最後に>
【9月13日他開催:基礎から応用まで学ぶ自動車運転と地域移動の作業療法】
本講習会では、自動車運転に関わる基本的な知識から行うべき評価、そして介入、運転中断者への知見に至るまで幅広く網羅します。
https://rehatech-links.com/seminar/22_9_13/

     

【オンデマンド配信:高次脳機能障害パッケージ】
1,注意障害–総論から介入におけるIoTの活用まで–
2,失認–総論から評価・介入まで–
3,高次脳機能障害における社会生活支援と就労支援
 –医療機関における評価と介入-
4,高次脳機能障害における就労支援
 –制度とサービスによる支援・職場の問題と連携–
5,失行
6,半側空間無視
 通常価格22,000円(税込)→8,800円(税込)のパッケージ価格で提供中
https://rehatech-links.com/seminar/koujinou/

前の記事

脳卒中後の感覚障害に対するアプローチの評価と実際(3)

次の記事

Constraint-induced movement therapy(CI療法)における神経可塑性のメカニズム(1)