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在宅リハビリテーションにおけるExergames(エクサゲーム:エクササイズの要素を含むゲームプログラム)の効果について

UPDATE - 2022.11.7

<抄録>

 世界各国では,遠隔リハビリテーションプログラムが非常に注目を浴びている.昨今,情報通信技術(ICT)の発展と,コロナ禍による非接触が推奨されることから,遠隔リハビリテーションプログラムが大きく発展している.本コラムにおいては,それらに効果について,システマティックレビューおよびメタアナリシスの結果について解説を行う.

     

1.在宅リハビリテーションにおけるExergames

 世界中の多くの施設は,国民皆保険制度に対する比重が低く,疾患罹患後継続的にリハビリテーションプログラムを受診できる期間が非常に短い.そう言った背景からも,対象者自信による自宅での継続的なリハビリテーションプログラムが非常に重要になると考えられている.そういった事情もあり,世界各国では,遠隔リハビリテーションプログラムが非常に注目を浴びている.昨今,情報通信技術(ICT)の発展と,コロナ禍による非接触が推奨されることから,遠隔リハビリテーションプログラムが大きく発展している.遠隔リハビリテーションの目的としては,疾患罹患後の廃用症候群の予防や再発予防が主に挙げられている.
 遠隔リハビリテーションプログラムの効果については,Chenら(1がシステマティックレビューが挙げられる.彼らの報告では,遠隔リハビリテーションプログラムは,運動機能の向上,従来の対人によるリハビリテーションと同等の質の提供,対象者の日常生活活動の拡大,と言った複数の利点を対象者に提供できることが明らかになっている.また,Laverらの報告では,遠隔リハビリテーションプログラムは,運動機能の拡大が期待できることから,対人のリハビリテーション プログラムの後のフォローアップにも利用できる可能性があると示唆されている(2.
 しかしながら,在宅におけるリハビリテーションプログラムは,伝統的に「自主練習」として実施されてきていたものの,モチベーションの問題等から継続性が課題と考えられてきた.そこで,近年注目されている手続きとして,ICTの技術を利用したゲーム(娯楽性の要素を含む)を用いて,遠隔リハビリテーションプログラムを遂行する試みが多数実施されている.これらには,市販のゲームプログラムを用いたものから,専用の端末やアプリケーションを有するものまで,多くのプログラムが開発されている.
 Mat Roslyらは,システマティックレビューにて,遠隔リハビリテーションプログラムに関する支援ツールについて,Exergames(エクサゲーム:エクササイズの要素を含むゲームプログラム)という名称の定義を行なっている.また,Perrochonらは,脳卒中を含む神経筋疾患において,上肢および下肢の機能練習としてのエクサゲームズの効果についてシステマティックレビューとメタアナリシスを用いて検討を行なっている.結果,下肢に対する遠隔リハビリテーションプログラムについては,身体機能に与える影響においては,従来の療法士による対人のリハビリテーションプログラムと少なくとも同等の効果があったことを述べている.しかしながら,上肢に対する遠隔リハビリテーションプログラムについては,特に明確な結論が出せないと論じており,この点に関する検証試験が今後の課題と考えられている.
 脳卒中を罹患した対象者の多くは上肢の機能障害を有しており,これらに対するアプローチは,直近の課題と言われている.この点に関しては,上記に示したとおり,遠隔リハビリテーションプログラムにおいても同様で,より効果的な遠隔リハビリテーションプログラムの開発が期待されている.特に,脳卒中後の上肢麻痺においては,麻痺の重症度に応じて,実生活における麻痺手の使用活動の低下が認められると報告されており,その結果から特に目標設定を機能練習に合わせて明確に行う重要性が述べられている(4.
 最近では,遠隔リハビリテーションプログラムにおいても,最適な練習強度などに関する検討もなされている.Tollarら5)は,1日2回の高強度のエクサゲームズは,1日1回の低い強度のエクサゲームズおよび低強度の1日1回の通常のケアと比較して,亜急性期脳卒中後の上肢の運動障害およびQuality of lifeの改善につながったと報告されている.これらの結果から,在宅リハビリテーションにおけるエクサゲームズについては,今後も検討が必要だが,量的な強度を調整することにより,効果は向上する可能性が考えられた.

     

引用文献

1.  1.Chen Y., Abel K.T., Janecek J.T., Chen Y., Zheng K., Cramer S.C. Home-based technologies for stroke rehabilitation: A systematic review. Int. J. Med. Inform. 2019;123:11–22. 

2. 2.Laver K., Adey-Wakeling Z., Crotty M., Lannin N., George S., Sherrington C. Telerehabilitation services for stroke. Cochrane Database Syst. Rev. 2020;1:80. 

3. 3.Mat Rosly M., Mat Rosly H., Davis OAM G.M., Husain R., Hasnan N. Exergaming for individuals with neurological disability: A systematic review. Disabil. Rehabil. 2017;39:727–735. 

4. 4.Lai S.-M., Studenski S., Duncan P.W., Perera S. Persisting Consequences of Stroke Measured by the Stroke Impact Scale. Stroke. 2002;33:1840–1844. 5. Schneider E.J., Lannin N.A., Ada L., Schmidt J. Increasing the amount of usual rehabilitation improves activity after stroke: A systematic review. J. Physiother. 2016;62:182–187.

     

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