<抄録>
脳卒中後の上肢麻痺に対するリハビリテーションにおいて,効果判定やアプローチ方法の設定のために行う評価は非常に重要なものと考えられている.評価を実施していなければ,客観的な尺度をもってして,対象者の変化を評価できないことが考えられる.また,脳卒中後の上肢麻痺に対する評価も多様であり,どのような評価の使用が適切かはあまり検討されていない.しかしながら,近年,脳卒中後の上肢麻痺に対するリハビリテーションに関するガイドラインに,妥当性・信頼性が担保されている評価が多く,記載されている.例えば,International Classification of Functioning, disability, and health(ICF: 国際生活分類)における機能・身体構造のレベルにおける評価では,ゴールドスタンダードとして,Fugl-Meyer AssessmentやAction Research Arm Testなどが代表格として挙げられる.同様に,日常生活活動における麻痺手の使用頻度においては,本邦では,Motor Activity Logが使用されることが多いものの,世界においてはその他の選択肢も用意されている.本コラムでは,Arm motor Ability Testについて,その妥当性や信頼性について,紹介を行うこととする.
1. Arm motor Ability Testについて
脳卒中後に生じる上肢麻痺に対するリハビリテーションにおいて,International Classification of Functioning, disability, and health(ICF: 国際生活分類)における機能・身体構造のレベルにおける評価が着目されることが多い.しかしながら,近年においては,機能・身体構造の評価以上に,活動・参加レベルの評価が注目を集めている.脳卒中後に生じる上肢麻痺において,日常生活活動における障害の評価は,対象者の状態を把握・判断し,アプローチの計画を立て,アプローチの効果を検証するためにも非常に重要な位置づけにあると考えられている.近年では,Kellyら1が,ICFにおける機能・身体構造の評価よりも,活動・参加の評価における変化の方がよりQuality of lifeに影響を与える影響が大きいとも言われている.
さて,海外では,日本で既存に用いられている評価と同様にArm Motor Activity Test(AMAT)と言った評価が用いられている.AMATは,13の複合的な日常生活課題に対して,丁寧な質を担保した状況での実施時間の測定を実施する評価である.この評価の特徴的な部分としては,各項目に対する実施時間の測定に加えて,実生活におけるそれぞれの項目に準じた課題の使用頻度と主観的な使い易さについて6段階(使用頻度:0=全く使用していない,1=ごくわずかに使用している,2=わずかに使用している,3=中等度に使用している,4=ほぼ普通に使用している,5=普通に使用している.主観的な使い易さ:0=使用しない、1=非常に悪い、2=悪い、3=普通、4=ほぼ普通、5=普通)の順序尺度を用いる部分である.つまり,Wolf Motor Function TestとMotor Activity Log(MAL)を合わせ,日常生活に焦点を当てた評価と言えるかもしれない.
さて,AMATの信頼性については,開発当初において,評価者間信頼性は,Kappa係数にて0.95〜0.99と非常に高いものであったとされていたが,1997年にKoppら2が実施した試験では,Kappa係数0.68〜0.77と中等度程度のものであったと言われている.また,評価者内信頼性については,クロンバッファのアルファ係数にて,0.93〜0.99と言った高い信頼性が報告されている.なお,ICFの機能・身体構造の評価であるMotoricity indexの相関係数は,0.45〜0.61と中等度であったことからも,機能・身体構造とは異なる世界観を検査している評価であると考えられている.これらのことから,ICFの活動・参加を測るための評価として,従来法であるMAL等に加えてみても良いかもしれない.
引用文献
1. Kelly KM, Improved quality of life following constraint-induced movement therapy is associated with gains in arm use, but not motor improvement. Top Stroke rehabil 25: 467-474, 2018
2. Kopp B, et al. The arm motor ability test: reliability, validity, and sensitivity to change of an instrument for assessing disabilities in activities of daily living. Arch Phys Med Rehaibil 78: 615-620, 1997
<最後に>
【11月26日他開催:脳卒中後の痙縮の病態理解と介入戦略】
痙縮や痙性麻痺の病態、評価、治療、管理に関して、臨床での意思決定に繋がる内容を全6回にわたり概説する。
hhttps://rehatech-links.com/seminar/21_10_08/
【オンデマンド配信:高次脳機能障害パッケージ】
1,注意障害–総論から介入におけるIoTの活用まで–
2,失認–総論から評価・介入まで–
3,高次脳機能障害における社会生活支援と就労支援
–医療機関における評価と介入-
4,高次脳機能障害における就労支援
–制度とサービスによる支援・職場の問題と連携–
5,失行
6,半側空間無視
通常価格22,000円(税込)→16,500円(税込)のパッケージ価格で提供中
https://rehatech-links.com/seminar/koujinou/