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竹林崇先生のコラム

CI療法における療法士の役割とは? 〜療法士は治療者(therapist)なのか?それとも、管理者(manager)なのか?〜

UPDATE - 2021.10.11

1. 脳卒中後の上肢麻痺に対するリハビリテーションにおける療法士の役割

本邦のリハビリテーションの枠組みは,20分1単位として,亜急性期であれば、1日最大180分のリハビリテーションを提供することができる.この時間内においては,療法士は対象者と1対1で対応するため,身体接触を伴うリハビリテーションをはじめとした,治療者(therapist)や介入者(intervener)としての側面が大きくなる印象がある.従って,対応する時間内で何らかの結果を出す,短期的な即時効果を出せることが,療法士の存在価値につながるといった主張も一部で認められる.もちろん,短期的な即時効果は価値があるという認識に間違いはない.

 例えば,国際生活機能分類における『身体機能・身体構造』に当たる部分の障害,特に痛みなど,行動を抑制する因子として明確なものに対しては,『痛みを除去する』等の短期的な即時効果も非常に大きな意味合いを持つと思われる.ただし,痛みを生じる根本的な原因が,『行動様式』によるものであるならば,短期的な即時効果だけでは,根治することは難しく,その後再発を繰り返す可能性も残存している.これらと同様の論理において,脳卒中後に生じる運動麻痺といった現象でも,実生活における麻痺手の使用行動が,麻痺手の機能障害の予後にも影響を与える可能性を秘めている.こういった症状に対しては,身体機能・身体構造の障害に対する介入だけでなく,活動・参加レベルへの長期的なマネジメントも,それらの障害に関わる療法士の重要な役割と言えるかもしれない.

      

2. 脳卒中後の上肢麻痺に対するリハビリテーションにおける管理者としての振る舞い

 脳卒中後の上肢麻痺に対するアプローチ,とりわけ効果のエビデンスが確立されているConstraint-induced movement therapy(CI療法)においては,集中的な課題指向型アプローチといった,麻痺手における身体機能・身体構造に対する介入だけでなく,どうすれば手をよくできるのか?(麻痺手を回復させるための理論や方略)といった模範的な行動を指導し,活動や参加に対してリーチする必要がある.CI療法においては,その役割を『練習内において獲得した機能改善を実生活に転移するための行動心理学的方略(Transfer package)』が担うことになる.

 さて,このTransfer packageだが,筆者らは以前に,運動学習やその上位に位置する行動学習の観点から,CI療法におけるTransfer packageのあり方について,Meta学習的な要素を持っているのではないかと考察した1.Meta学習2とは,機械学習における用語としてよく使われており,一般的に学習方法を学習する行為(Learning to learn)とされている.脳卒中後上肢麻痺を呈したモチベーションのある対象者の方で,『どのような練習をすれば良いか?』『ここではどうやって使えば良いか?』等,積極的に自身の麻痺手がよくなるための行動について,質問される方がおられる.さらには,自身で書店から,療法士向けの手法(手技や理論を含む)について記されたテキストなどで勉強される方がおられる.このように,脳卒中後生じた麻痺手に対するリハビリテーションにおいて,Meta学習とは,『麻痺手を回復させるための学習方法を学ぶことを指す.ただし,従来のリハビリテーションにおいては,Meta学習的な視点について,療法士が,対象者のモチベーションに依存していたり,自主練習という『運動療法』に特化した部分にのみリーチするなどの問題点も残存していた.それらをCI療法におけるTransfer packageにおいては,システム化し,再現性と効果のエビデンスを示している.効果のエビデンスとしては,2本の比較研究(1本はランダム化比較試験,1本は前向きの偽ランダム化比較試験)において,Transfer packageを含むCI療法を実施した群(介入群)と,Transfer package以外のコンポーネントを実施したCI療法を実施した群(対照群)を比較した結果,介入群の方が対照群に比べて,実生活における麻痺手の使用頻度を示すMotor Activity LogのAmount of use(麻痺手の使用頻度)が6ヶ月から1年後に向けて有意な改善を示したと報告している.さらに,内1つの論文は,CI療法が実施した後も,Transfer packageを実施していた群については,介入終了から6ヶ月の間,特別な他のリハビリテーションを実施することなく,Motor Activity LogのAmount of use(麻痺手の使用頻度)と麻痺手の麻痺の程度を示すFugl-Meyer Assessmentの上肢項目が有意な改善,つまり長期効果を示したと報告している.これらの結果から,若干飛躍はあるが,対象者にMeta学習を提供できるよう,療法士として行動をマネジメントするそういった役割が今後非常に重要になると考えている.

     

引用文献

  1. 1.竹林崇,他: Constraint-induced movement therapy(CI療法)におけるTransfer packageの短期効果.総合リハビリテーション39: 1193-1199, 2011
  2. 2.銅谷賢治:計算神経科学への招待 脳の学習機構の理解を目指して.サイエンス社,東京,2007, pp86,
  3. 3.Taub E, et al. Method for enhancing real-world use of a more affected arm in chronic stroke: transfer package of constraint-induced movement therapy. Stroke 44: 1383-1388, 2013
  4. 4.Takebayashi T, et al: A 6-month follow-up after constraint-induced movement therapy with and without transfer package for patients with hemiparesis after stroke: a pilot quasi-randomized controlled trial. Clin Rehabil 27: 418-426, 2013

     

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