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竹林崇先生のコラム

脳卒中後の上肢機能アプローチにおける多様性とは

UPDATE - 2021.10.15

<抄録>

 脳卒中後に多くの対象者は片麻痺を呈する。その中でも、上肢麻痺は後遺症の一つとされており、多くの対象者が抱える問題と言われている。さらに、一部の研究者は、上肢麻痺は脳卒中罹患後の対象者のQuality of lifeの低下に関与している可能性を示唆している。これらの上肢麻痺に対して、長い期間を経て、様々なアプローチが構築されてきた。しかし、様々なアプローチが発展する中で、アプローチ間の対立が鮮明になった時期も過去にはあったと聴いている。本コラムでは、アプローチ間の対立の現状とそれらに対する個人的に考える対処法について、解説を行う。

     

1.脳卒中後に生じる上肢麻痺に対する多くのアプローチ

 脳卒中患者の多くは、疾患罹患後に片麻痺を呈する。その中でも,上肢麻痺は日常生活における能力障害に関与すると言われており、対象者のQuality of lifeの低下に大きく関わると報告されている。このような背景から、歴史的にも多くの臨床家、研究者が様々なアプローチを開発し、世間で頒布がなされている。それらのアプローチは多岐にわたり、それらのエビデンスも様々である。

 様々なアプローチが台頭する中で、それぞれのアプローチは研究会や学会などを形成し、各々のアプローチ方法に関連する知識や技術が頒布され、それぞれが会員数を増やし、発展を遂げてきた。しかしながら、発展を遂げる一方、アプローチを支持する団体間の信念対立は深くなり、お互いのアプローチを認めず、全面的に否定しあうといった時期が一部の団体の間で存在したと聴いている。

 しかしながら、2000年以降から、本邦の作業療法領域の中では、お互いの手法を知り、尊重しようと言った大きな流れが生まれ始めた。具体的には、各々のアプローチの代表者が集まり、同じ機会の中で、合同でセミナーを行うと言った催しを開催するといったものであった。それらの会には、『ボバースコンセプト/活動分析アプローチ』、『認知神経リハビリテーション』、『Constraint-induced movement therapy』、『反復促通療法』等の代表者が集まり、講義の中でもお互いの良い点を強調し、コラボレーションを掲げ、協調路線を歩み始めた。

 これらの流れの中で、各アプローチの代表者間での交流は盛んとなり、お互いのアプローチを尊重するといった流れが加速した印象がある。ただし、一部の現場においては、過去と同様の新年対立は根強く残っており、それらの対立が臨床におけるコラボレーションの妨げとなっている可能性も否定できない。

     

2.お互いのアプローチを知る必要性

 脳卒中後の上肢麻痺に対するアプローチにおいて、お互いのアプローチを理解することが必要となる。ただし、多くのアプローチについて、各々の研修会等に参加するのは非常に時間もかかり、効率が悪く、困難が多い印象がある。そこで、書物や研究論文の内容から、それぞれのアプローチの特徴を具体的に理解する必要が考えられる。そこで、非常に便利な手法が、ランダム化比較試験の結果(アウトカム)の違いを読み解くということが重要と考えている。

 例えば、HuseyinsinogluらのボバースコンセプトとCI療法の比較研究における結果を用いて、読み解いていく。この研究では、ボバースコンセプトは合計10時間の介入、CI療法は合計30時間の介入を実施した結果、Wolf Motor Function Testにおいては両群間に有意差がなかったが、実生活における麻痺手の使用行動においてはCI療法の方がボバースコンセプトに比べ有意な改善を示していた。この結果は、ボバースコンセプトはCI療法よりもより機能的なアウトカムの改善効率に長けており、CI療法はボバースコンセプトに比べ、麻痺手の機能を生活に活かすための方略として長けている可能性を読み取ることができる。もちろん、一本のランダム化比較試験によって、それぞれのアプローチの特徴を断定することは危険であるが、このような手続きを踏めば、リーズナブルにそれぞれの方法の特徴が見える可能性がある。

 ただし、これらの考察を行うためには、正確なデザインによるランダム化比較試験の存在が、絶対的に必要となる。各手法を統括する立場の代表者は、先にあげた観念をもち、それぞれの手法の効果を検討し、発信する責務があると言っても過言ではない。

     

3.一つの療法に固執しないために

 2では、それぞれの特徴を理解する方法について述べた。これと同時に、療法士は、できるだけ新人の頃から、1つのアプローチに特化した学びを深めるよりも、いくつかのアプローチを並行して学ぶことが望ましいと考えている。おそらく、1つのアプローチだけを学ぶよりも言語や理論が異なることで、混乱を生じることもあるかもしれない。しかしながら、それらの違いに療法士人生の初期から触れることで、公平な視点から、特徴をより吟味でき、手法の取捨選択の幅がとりわけ広がるように感じている。適応を含めたそれぞれのアプローチの特徴をしっかりと吟味し、信念対立を起こさないような療法士個人によるアプローチのマネジメントが非常に重要となる。

     

引用文献

  1. 1.Huseyinsinoglu BE, et al. Bobath Concept versus constraint-induced movement therapy to improve arm functional recovery in stroke patients: a randomized controlled trial. Clin Rehabil 26: 705-715, 2912

     

<最後に>
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