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脳卒中後に上肢麻痺を呈した対象者に対するConstraint-induced movement therapy(CI療法)はQuality of lifeにどのような影響を与えるのか?

UPDATE - 2022.1.10

<抄録>

 脳卒中後の上肢麻痺に対して,効果のエビデンスが確立されたアプローチの一つに,Constraint-induced movement therapy(CI療法)がある.CI療法は,麻痺手の機能と使用行動を改善すると言われており,現在,世界各国の多くのガイドラインでも推奨されている手法である.近年の研究では,脳卒中後の上肢麻痺に対する介入において,麻痺手の使用行動の改善が重要視されており,それらがQuality of life(CI療法)の改善にも機能改善以上に影響を与えている可能性が示唆されている.本コラムでは,CI療法が脳卒中後の上肢麻痺を呈した対象者のQOLにどのような影響を与えるかについて,解説を行う.

     

1. 脳卒中後の上肢麻痺を呈した対象者に対するConstraint-induced movement therapy(C I療法)の位置づけ

 脳卒中後に生じる上肢麻痺は,代表的な後遺症の一つであり,脳卒中患者のQuality of life(QOL)にも悪影響を与えると言われている.この後遺症に対し,効果のエビデンスが確立された手法として,Constraint-induced movement therapy(CI療法)がある.この方法は,麻痺手に対し,1)量的練習,2)反復的課題指向型練習,3)集中練習によって獲得した機能改善を実生活に転移するための行動心理学的手法(Transfer package)から構成されている.特に,2),3)で示されているように,麻痺手の機能改善と同等,もしくは,それ以上に,実生活における麻痺手の使用頻度の改善を目的とした手法であると言える.実際に,複数のランダム化比較試験において,対照群に比べ,上肢機能の項目よりも,実生活における麻痺手の使用行動の改善が大きい印象もある. 

 さて,麻痺手の上肢機能よりも実生活における使用行動の改善を目的としたCI療法だが,Kellyら1が,上肢機能と実生活における使用行動の改善と,QOLの改善の関係について,研究を行っている.彼らの研究では,脳卒中後に上肢麻痺を生じた対象者において,麻痺手の機能改善以上に,実生活における使用行動の改善の方が,QOLの改善に対し,影響力が高いことを報告している.この結果からも,CI療法は,脳卒中後に上肢麻痺を呈した対象者のQOLに対し,良い影響を与えることができる方法なのかもしれない.

     

2. CI療法がQOLに与える影響について

 CI療法が,脳卒中後に上肢麻痺を呈した対象者のQOLに与える影響について,Rochaら2が,報告を行っている.彼らは,30名の生活期の上肢麻痺を有する脳卒中患者を,CI療法を実施する群,一般的なリハビリテーションプログラムを実施する群の2群にランダムに割り付けた.この研究では,上肢機能に関わるアウトカムに加えて,Stroke Specific Quality of life(SS-QOL)という,QOLを測るためのアウトカムを採用した.SS-QOLとは,質問形式のアウトカムであり,対象者の主観的なQOLを評価するものである.評価の内容としては,意欲,家庭内役割,言語,移動に関わる能力,ユーモア,人格(心理),セルフケア,社会的役割,記憶/集中力,上肢機能,視野,仕事/生産性のサブスコアから構成される評価である.これらのアウトカムを用いた結果としては,CI療法を実施した群が,従来のリハビリテーションプログラムを実施した群に比べて,Fugl-Meyer Assessmentの上肢機能,協調性,感覚,に加え,機能的リーチ検査においても有意な改善を認めた.さらに,SS-QOLにおいては,CI療法を実施した群が,従来のリハビリテーションプログラムを実施した群に比べて,移動に関わる能力,人格(心理),セルフケア,社会的役割,上肢機能,視野,仕事/生産性,総合点,において有意な改善を示したと報告している.
 これらの結果から,CI療法は,脳卒中患者の麻痺手に関わる上肢機能および実生活における使用行動を改善させるだけでなく,QOLの改善にも影響を有する可能性が示唆された.しかしながら,CI療法が脳卒中患者のQOLに与える影響について,バイアス調整等が適切に行われたランダム化比較試験の結果はまだまだ少ない.今後,多くの研究が実施され,複数のランダム化比較試験に対するシステマティックレビューおよびメタアナリシスが実施されることを注視し,結論を出す必要が考えらえる.

     

引用文献

  1. 1.Kelly KM, et al. Improved quality of life following constraint-induced movement therapy is associated with gains in arm use, but not motor improvement. Top Stroke Rehabil 25: 467-474, 2-18
  2. 2.Rocha LSO, et al. Constraint-induced movement therapy increases functionality and quality of life after stroke. J Stroke Cerebrovasc Dis 30: 105774, 2021

     

<最後に>
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