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竹林崇先生のコラム

脳卒中後の上肢麻痺に付随する肩甲骨を含む肩機能は,Constraint-induced movement therapy(CI療法)によってどのような影響を受けるのか?

UPDATE - 2022.1.28

<抄録>

 脳卒中後の上肢麻痺に付随する障害として,肩甲骨を含む肩関節の機能障害が挙げられる.これらの機能障害を放置すると,慢性的な肩の痛みをはじめとした,二次的障害の起点となることもある.脳卒中後の上肢麻痺に対するエビデンスが確立されているアプローチにConstraint-induced movement therapy(CI療法)がある.このアプローチは,麻痺手に対する高強度の練習を実施することから,その努力性は,肩甲骨を含む肩機能を悪化させるのではないかとの批判も一部に見受けられる.本コラムでは,CI療法後の肩甲骨の動きを含む肩機能がどのような影響を受けるかについて,解説を行う.

     

1.Constraint-induced movement therapy(CI療法)が肩の機能に対して与える影響について

 脳卒中後の上肢麻痺に対するエビデンスが確立されているアプローチにConstraint-induced movement therapy(CI療法)がある.このアプローチは,麻痺手に高強度の反復的な課題指向的な練習を実施することで,麻痺手の機能障害と実生活における麻痺手の使用行動を改善するための手法である.また,米国心臓学会・脳卒中学会をはじめ,各国の多くのガイドラインにおいて,高い推奨度を誇っている.しかしながら,本邦においては,ただ無計画に麻痺手をリハビリテーションプログラムや生活の中で使うものと誤解され,一部の臨床家や研究者からは,過剰使用によって筋緊張の増悪や肩の痛みをはじめとした機能障害が併発するのではないかと言った疑念がしばしば聴かれる.
 一方,先行研究の中には,CI療法を実施することで,肩機能に良好な影響を与えると言った論文も散見される.例えば,Hansenらは,CI療法を受けた137名の脳卒中患者の肩の機能を,Wolf Motor Function Testの肩関節の運動が関わる運動課題のFunctional Assessment Scaleの値にて評価した.その結果,CI療法前に,肩の機能に障害を抱えていた17%の対象者の全てが,CI療法を実施することによって,十分なレベルの機能改善を示したと報告している.ただし,この研究では,臨床的な評価を用いて,その機能レベルを観察から検討しているのみであり,CI療法によって,肩甲骨や肩機能の運動学的な機能改善が示されているかどうかは明らかではない.

     

2.三次元動作解析装置を用いたCI療法前後の肩甲骨を含む肩機能の変化について

 肩機能を評価する際に、運動学的な観点から肩機能の変化を確認する際に,三次元動作解析装置が使われる.三次元装置を使う上での焦点としては,多くの研究者が,肩甲骨の上方回旋に着目している.先行研究では,Niessenら2が,肩痛を有する脳卒中患者では,肩の屈曲時において,肩甲骨の上方回旋角度が増加することを報告している.さらに,De Baetsら3は,三次元動作装置を用いて,脳卒中患者と脳卒中に罹患していない方を比較した結果,45度および90度の肩関節屈曲時において,肩甲骨の上方回旋の関節可動域が,脳卒中患者の方が大きい傾向にあったと報告している.さらに,複数の研究者から,肩甲骨の上方回旋の関節可動域の測定は,測定誤差が比較的少ないことからも,三次元動作装置を用いて肩機能を評価する際の重要な指標になりうると考えられている.
 さて,これらの先行研究をもとに,Hansenら4は,CI療法の前後において,肩甲骨の上方回旋がどのように変化するかについて,研究を行っている.彼らは,Wolf Motor Function Testの第5課題(低いリーチ),第6課題(高いリーチ)における肩甲骨の上方回旋を三次元動作装置を用いて調査を行った.その結果,肩甲骨の上方回旋は,第5課題においては,CI療法前が16.2度,介入直後で15.9度,介入後3ヶ月では,15.6度にまで有意な減少を示した.ただし,CI療法前後の肩甲骨の上方回旋における変化は,臨床上意味のある最小変化量を超える変化ではなかったことから,脳卒中後の麻痺手の機能改善において,肩甲骨の上方回旋が直接的に影響を与えたかは不明であると述べている.
 これらの結果から,CI療法によって,臨床的な肩の機能改善は改善する可能性が示唆されているものの,その改善に三次元動作分析装置で評価した肩甲骨の上方回旋の変化が寄与しているかどうかは,現時点では不明であるとされている.これら不明点に関しては,今後の追試が期待されるところである.

     

引用文献
1.Hansen, G.M., Svendsen, S.W., Brunner, I., Nielsen, J.F., 2018. Predicting shoulder function after constraint-induced movement therapy: a retrospective cohort study. Top. Stroke Rehabil. 5 (4), 1–7
2.Niessen, M., Janssen, T., Meskers, C., Koppe, P., Konijnenbelt, M., Veeger, D.J., 2008. Kinematics of the contralateral and ipsilateral shoulder: a possible relationship with post-stroke shoulder pain. J. Rehabil. Med. 40 (6), 482–486.
3.De Baets, L., Van Deun, S., Desloovere, K., Jaspers, E., 2013. Dynamic scapular movement analysis: is it feasible and reliable in stroke patients during arm elevation? PLoS ONE 8 (11), 79046.
4.Hansen, G.M., Svendsen, S.W., Oedersen, A,E., Kersting, U.G., Pallesen, H., Nielsen, J.F., 2021. Shoulder function after constraint-induced movement therapy assessed with 3D kinematics and clinical and patient reported outcomes: A prospective cohort study. J Electromyography and Kinesiology 58, 102547

     

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