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竹林崇先生のコラム

Constraint-induced movement therapy(CI療法)は,対象者にとって,どのように感じられているのか? −対象者はCI療法に対して,どのような興味,満足度を抱いているのか−

UPDATE - 2022.1.31

<抄録>

 脳卒中後の上肢麻痺に対するアプローチ方法にConstraint-induced movement therapy(CI療法)がある.CI療法は,多くのランダム化比較試験によって,その効果が証明されている.その結果,世界の様々なガイドラインにおいて,高い推奨度が示されている.一方,CI療法は,長時間の練習時間が必要なリハビリテーションアプローチであり,その手法については,保険診療,療法士のマンパワー,対象者自身のCI療法に対するネガティブなイメージと言った観点から,否定的な報告も認められる.本コラムでは,CI療法に対するネガティブ,ポジティブ,双方の対象者の主観的な評価について,解説を行っていく

     

1.Constraint-induced movement therapy(CI療法)に対するネガティブな評価

 Constraint-induced movement therapy(CI療法)は,脳卒中後の上肢麻痺に対するリハビリテーションアプローチの一つである.1990年代初頭より,多くのランダム化比較試験によって,その効果が検証され続けている.その結果,現在では,世界中の多くのガイドラインにおいて,効果をもたらすことができるアプローチとして,高い推奨度を誇っている.ただし,CI療法は,従来のリハビリテーションアプローチに比べ,1日の練習時間が,0.5時間から6時間と長く,非常に長時間の時間を有する手法である.したがって,本邦において,CI療法が展開され始めた際にも,学会等で「保険診療の枠を超えているため診療報酬の観点から問題が大きい」,「療法士のマンパワーが足りない」,「対象者の心的なストレスが膨大で,悪影響がある」と言った意見があり,相対的に「効果のエビデンスは高いものの,本邦における実臨床では使用不可能」と言った意見が大勢であった印象がある.
 そして,こう言った問題は,日本だけの問題ではなく,米国においても同様の意見があった.例えば,2002年に出版されたPageらの論文を紹介する.この論文では,218名の脳卒中患者に郵送または電話インタビューによるアンケートを実施した.また,理学療法士または作業療法士85名にも,CI療法に対する雑感に関するアンケートを実施した.アンケートでは,学術論文をベースに情報を抜粋した資料を使ってCI療法の説明を行い,それらに対して,主観的な意見を募った.その結果,脳卒中患者の68%がCI療法に参加することに興味がないと答えた上に,練習スケジュールや非麻痺手の拘束といった,運営上の種々の条件に対して懸念を示したと報告した.さらに,理学療法士または作業療法士は,対象者のアドヒアランスや非麻痺手の拘束や,従来の療法に比べて長い練習時間を要員とする安全性に対して懸念をあげた.さらには,療法士自身が所属する組織にCI療法を提供するための臨床的なリソースがないであろうこともネガティブな要因としてあげたとされている.ただし,この論文では,研究の対象となっている療法士も対象者も,CI療法に全く触れたことがなく,資料の上でのみ説明を受けている,という点を忘れてはいけない.実際に体験し,その効果に触れた際には,また感じ方も変わる可能性もあると思われた.

     

2.実際にCI療法を体験した対象者のポジティブな評価について

 アラバマ大学バーミンガム校のAndrabiらは,実際にCI療法を受けた脳卒中後上肢麻痺を呈した対象者が,CI療法に対し,どのように感じているのかを評価した.彼らは,CI療法に関する2つのランダムか比較試験のデータについて,二次解析を実施した.本研究では,40名の中等度から軽度の上肢麻痺を呈した対象者は,CI療法前後で上肢機能に統計学的に有意な改善を認めたと報告した.さらに,介入前に評価したCI療法の説明を受けた上でのCI療法を受ける上での困難感に対する主観的な評価は7点満点中平均4.4点(点数が高くなるほどCI療法に対する困難なイメージが大きいことを示している)であった.しかしながら,介入後には,CI療法に対する困難なイメージに有意な現象を認めたと報告していた(平均3.7点/7点).さらに,CI療法の結果に対する満足度としては,7点満点中平均6.3点(点数が高くなるほどCI療法に対する満足が大きいことを示している)と非常に満足したと言った結果となった.さらに,その満足度は,実生活における麻痺手の使用頻度の変化量と性の相関があったと述べている(R2=0.3, p<0.001).
 この結果から,CI療法に対する困難なイメージは,従来法よりも多くの練習量を必要とする点や,麻痺手を集中的に練習すると言った観点から,実際に実施する前にはネガティブなことも多いことが予測される.しかしながら,CI療法を実施し,その効果を実感し,対象者にとって大切な活動が両上肢で実施できた際に,そのイメージは若干ポジティブなものへと変革するのかもしれない.

     

引用文献

  1. 1.page SJ, Levine P, et al. Storke patient’s and therapists’ opinions of constraint-induced movement therapy. Clinical Rehabil 2002; 16: 55
  2. 2.Andrabi M, Taub E, et al. Acceptability of constraint-induced movement therapy: influence of perceived difficulty and expected treatment outcome. Top in Stroke rehabil 2021; published online.

     

<最後に>
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