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竹林崇先生のコラム

リモートリハビリテーションとしてのConstraint-induced movement therapyに関する最新のランダム化比較試験について

UPDATE - 2022.2.4

<抄録>

 脳卒中後の上肢麻痺に対するアプローチとして,Constraint-induced movement therapy(CI療法)やロボット療法など、高い練習頻度を必要とする練習形態が望まれている.しかしながら,世界各国の保険診療の現状などを鑑みても,多くの練習量を対象者に提供できる余裕はほとんどないと考えられている.さらに,昨今のコロナ禍のなか,対面でのリハビリテーションが困難な状況もあり,リモートリハビリテーション(テレリハビリテーション)の普及が主張されている.本コラムでは,脳卒中後の上肢麻痺に関するテレリハビリテーションの現状と効果を最新のランダム化比較試験の結果から解説することとする.

     

1.脳卒中後の上肢麻痺に対するリモートリハビリテーション

 脳卒中後の上肢麻痺に対するアプローチとして,高い練習頻度を要する集中的なリハビリテーションが必要と言われている.米国脳卒中学会のガイドラインにおいても,反復的な課題指向型アプローチ,Constraint-induced movement therapy(CI療法),ロボット療法等,が推奨されているが,そのどれもが集中的な練習を必要とするものである.
 しかしながら,世界各国のリハビリテーションを取り巻く保険診療等の医療環境は厳しく,経済的にも,肉体的にも,対象者に多くのリハビリテーションを提供することがリソース的に困難な場合が散見される.
 それらに加えて,2020年より世界的に蔓延しているCOVID-19の影響により,対面によるリハビリテーションを提供する機会も少なくなっている現状がある.そう言った背景から,現在,リモートリハビリテーション(テレリハビリテーション)といった取り組みが注目を集めている.
 特に,国土が大きいなど,元々医療アクセスが脆弱である世界にいくつかの国々においては,先行的にこれらの取り組みは進められており,検証作業も進んでいる.

     

2.脳卒中後の上肢麻痺に対するリモートリハビリテーションの効果について(ランダム化比較試験の観点から)

 CI療法に関するテレリハビリテーションの歴史としては,2006年のLumら2の研究が最も古いもので報告されている.この研究では,自宅にて複数の練習を実施可能とする通信機付きの大型の機器であるAutoCITE(Automated constraint-induced therapy extension)を送付し,実施する練習形態である.この研究では,慢性期の脳卒中患者7名に対して,10日間,3時間のAutoCITEを用いた介入を実施し,Motor Activity Log(MAL)やJebsen-Taylor Hand Function Testにおいて,介入前後で大きな効果量かつ有意な変化を認めたと報告がなされている.
 次に,2020年にSmithらが,脳卒中後に上肢麻痺を呈した慢性期の対象者に対し,軽症例と重症例にカテゴリ分けを実施し,それぞれに対し,リモートリハビリテーションと対面を併用したリハビリテーションを実施している.インターネットセッションとして,週2回,1日1時間の介入を,対面セッションとして,週1回,1〜1.5時間,合計週3回実施している.特に,対面セッションでは,集団的に実施され,参加者同士の交流の場を設け,その中で,作業に基づいた介入を実施している.これらの介入の中で,軽症群,重症群ともに,Wolf-Motor Function Test,Fugl-Meyer Assessment,MALにおいて,介入前後で有意な変化を認めている.
 さらに,2021年には,CI療法の開発元のアラバマ大学バーミンガム校のUswatteらも報告をしている.彼らの報告では,慢性期の対象者24名を,CI療法をリモートリハビリテーション実施する群と,通常の療法室にてCI療法を実施する群にランダムに割付け,比較検討を実施している.各群には35時間にわたる集中練習が実施されている.リモートリハビリテーションを実施する群には,センサーとビデオを内蔵したワークステーションが設置され,インターネットを通して,専門家が練習全体のモニタリングを実施している.これらの結果,両群ともに,介入前後および1年後においても,有意な実生活における麻痺手の変化を認めている.さらに,CI療法をリモートリハビリテーションにて実施する群は,通常の療法室にてCI療法を実施する群に比べて,実生活における麻痺手の変化に有意な差を認めなかったと報告している。
 これら3つの研究の結果から,従来型の対面でのリハビリテーションとリモートリハビリテーションの間に,大きな結果の差は認められない可能性が示唆された.しかしながら,これらの結果を鑑み,全てをリモートリハビリテーションに切り替えるのは時期尚早とも考えられる.リモートと対面環境におけるそれぞれの特徴や役割を吟味し,持続可能なプロトコルの作成と,リモートリハビリテーションとしてのCI療法に関するランダム化比較試験を用いたメタアナリシスの実施が今後期待される.

     

引用文献
1.Bernhardt J, Chan J, Nicola I, et al. Little therapy, little physical activity: rehabilitation within the first 14 days of organized stroke unit care. J Rehabil Med 2007; 39: 43–48.
2.Lum P, Uswatte G, et al. A telerehabilitation approach to delivery of constraint-induced movement therapy. J Rehabil Res Dev 2005; 43: 391-400.
3.Smith MA, Tomita MR. Constraint-induced movement thrapy for individuals with chronic hemiparesis. Int J Telerehabil2020; 30: 51-62.
4.Uswatte G, Taub E, et al. Tele-rehabilitation of upper-extremity hemiparesis after stroke: Proof-of-concept randomized controlled trial of in-home constraint—induced movement therapy. Restr Neurol Neuroci 2021; 39: 303-318, 2021

     

<最後に>
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