TOPICS

お知らせ・トピックス
竹林崇先生のコラム

ボツリヌス毒素A型施注とConstraint-induced movement therapyの併用療法の効果について

UPDATE - 2022.2.7

<抄録>

 ボツリヌス毒素A型施注は痙縮に対する脳卒中後の治療法の一つであり,世界各国におけるガイドラインやエビデンス集においても,痙縮の低下、またはそれに伴う日常生活活動の解除量の軽減につながると言われている.しかしながら,ボツリヌス毒素A型施注のみでは,上肢麻痺そのものに対する回復効果は報告されていない.そこで,一般的には,ボツリヌス毒素A型施注を実施後,効果のエビデンスが確保されている各種運動療法を併用することが望ましいとされている.本コラムにおいては,ボツリヌス毒素A型施注後に効果のエビデンスが確立されているConstraint-induced movement therapyを実施した際の上肢麻痺の回復および痙縮の低下等のアウトカムにおける効果について論述を行う.

     

1.脳卒中後に生じる痙縮に対する治療法について

 成人の脳卒中患者において,疾患罹患後に生じる上肢麻痺をはじめとした身体障害は,Quality of lifeや幸福感の低下に影響を与えると考えられている.また,その身体障害の一つに,痙縮といった障害がある.痙縮とは対象者の意志とは無関係に,四肢の筋肉が過剰に緊張し,上肢や下肢が硬直したり,突っ張ったりする症候を指す.痙縮については,対処せずに,放置することで,二次的な筋肉の短縮や関節の拘縮を引き起こす可能性もある.また,痙縮は,過剰な肘や手関節の屈曲を伴うことが多く,衣服の着脱や掌の清潔を保つなど,セルフケアにも大きな負の影響を与える.
 この障害に対して,チンザニン,バクロフェン,ジアゼパム,ダントロレンナトリウム,トルペルゾン等の薬剤処方やボツリヌス毒素の施注,フェノール・エチルアルコールによる神経ブロック等の医学的行為や,経皮的電気刺激やストレッチ,装具療法,温熱療法等のリハビリテーションプログラムや物理療法等が推奨されている.
 その中でも近年では,医学的手法としてのボツリヌス毒素A型施注に併用する形で,効果のエビデンスが確立されている運動療法を実施することが推奨されている.特に脳卒中後の上肢麻痺に伴う痙縮に対しては,ボツリヌス毒素A型施注後に,集中練習と実生活において,麻痺手の積極的な使用を促すConstraint-induced movement therapy(CI療法)の併用療法が注目を集めている.CI療法そのものの効果は,2016年に報告されたAmerican Heart Associationのガイドラインでも上肢機能の改善について,示されており,推奨度も高いものとなっている.次項では,ボツリヌス毒素A型施中とCI療法の併用療法についてのエビデンスについて,論述を行う.

     

2.ボツリヌス毒素A型施注とCI療法の併用療法の効果について

Sunら1は,生活機の脳卒中後片麻痺を呈した患者を対象に,ボツリヌス毒素A型施注後にCI療法を実施した群と,ボツリヌス毒素A型施注後に一般的な作業療法・理学療法を実施した群において,ランダム化比較試験を用いた比較検討を実施した.その結果,麻痺側上肢のパフォーマンスを測定するAction Research Arm Testや,実生活における麻痺手の使用頻度および主観的な使いやすさを示す,Motor Activity LogのAmount of useおよびQuality of movement,痙縮の程度を示すModified Ashworth scaleについて,CI療法を実施した群が通常の理学療法・作業療法を実施した群に比べて有意な改善を示したと報告している.また,両群間の差は,介入実施後3ヶ月および6ヶ月まで継続したと報告されている.
 さらに,近年では,ボツリヌス毒素A型施注とCI療法の併用療法に関するシステマティックレビューとメタアナリシスについても報告されている.Nasbら2は,PEDro scaleにおいて正確性を評価し,妥当だと判断された8つのランダム化比較試験を対象に研究を実施している.この研究においては,肘・手首・手指の痙縮を示すModified Ashworth Scaleについては,対照群に比べ,ボツリヌス毒素A型施後にCI療法を実施した群については,ボツリヌス毒素A型施注から4週間後の時点で,有意な改善を示さなかったと報告されている.一方,脳卒中後の上肢麻痺が由来する機能障害に対しては,ボツリヌス毒素A型施注後,CI療法を実施した併用療法は,対照群に比べて,ボツリヌス毒素A型施注から4週間後の時点で,有意な改善を示したと報告している.
 これらについて,ボツリヌス毒素A型施注は,そもそも神経生理学的な指標において,痙縮の軽減効果は認めるものの,臨床的な指標であるModified Ashworth Scaleにおいては,アウトカムの反応性の問題から軽減効果を認めない可能性を示唆している.これらの背景から,上記のシステマティックレビューおよびメタアナリシスの結果における結果が生じた可能性も考えられた.

     

まとめ

 本論文では,ボツリヌス毒素A型施注とCI療法の併用療法の効果について,複数の論文の治験についてまとめた.結果としては,痙縮の程度を示すModified ashworth scaleにおいては,対照群よりも有意な結果は認めていないが,上肢麻痺の機能障害については、有意な結果を示す可能性が示唆された.

     

引用文献

  1. movement therapy for chronic stroke patients with upper extremity spasticity: a randomized controlled study. Neurorehabilitation and Neural Repair. 2010; 24: 34-41
  2. Nasb M, et al. Constraint-inducedm movement therapy combined with botulinum toxin for post-stroke spasticity: A systematic review and meta-analysis. Cureus. 2021; 13: e17645

     

<最後に>
【2月3日他開催:子どもの発達支援に必要な発達評価の視点】
小児期特有の疾患に関わるセラピストにとって有用となる評価の視点について解説します。
https://rehatech-links.com/seminar/22_02_03-2/

     

【オンデマンド配信:高次脳機能障害パッケージ】
 1,注意障害–総論から介入におけるIoTの活用まで–
 2,失認–総論から評価・介入まで–
 3,高次脳機能障害における社会生活支援と就労支援
  –医療機関における評価と介入-
 4,高次脳機能障害における就労支援
  –制度とサービスによる支援・職場の問題と連携–
 5,失行
 6,半側空間無視
 通常価格22,000円(税込)→16,500円(税込)のパッケージ価格で提供中
https://rehatech-links.com/seminar/koujinou/

前の記事

リモートリハビリテーションとしてのConstraint-induced movement therapyに関する最新のランダム化比較試験について

次の記事

COVID-19の蔓延下にて自宅環境におけるロボット療法の新たな形態