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療法士になったら学会発表等はするべきなのか?

UPDATE - 2022.2.18

<抄録>

 療法士のキャリア形成の中に、古くから言われている3本の柱がある。その3本の柱とは、臨床、研究、教育、である。近年では、療法士の働き方も多様化してきたため、この限りではないが、未だにベテランの先生がコンダクトを振るう病院や施設においては、根強く残った考え方かもしれない。本コラムにおいては,3本の柱に含まれる、臨床、そして研究に関わるイベントとして、療法士になった後に、遭遇する『学会発表』をすべきかどうかについて、著者の個人的な意見を述べたものである。

     

1.学会発表とは

 多くの専門職には、その専門職の社会的な地位の維持および向上を目的とした、職能団体というものが存在する。職能団体の役割の主な部分は、先に挙げた、職種の社会的な地位に関わる役割が主であるが、付帯的な役割として、領域の発展と学術的な進歩に寄与するといったものも挙げられている。
療法士の業界で言えば,理学療法士協会や作業療法士協会がそれに当たり,1年に数回,大規模な学術学会も開催されている。これらの学会には、基本的には研究者、教育者、臨床家、と様々な療法士が集まり、最新の情報収集や関連各所との情報交換、懇親の場として利用されている。

     

2.学会発表を行うメリットとは?

 まず、最初に学会発表について、給与を上げるための直接的な手段として考えるならば、そもそもやめておいた方が無難であると思われる。学会発表は、臨床における疑問や問題点について、単一や複数の事例を通して、研究し、そこから得られた知識や技術を広く公に発信する場である。つまり、所属する組織が、この発表する行為から得られる利益がない限り、自身の給与には影響を与えることはない。この点に対する考え方に相違があると、学会発表について、様々な齟齬が生まれるため、注意をしておく必要がある。
 さて、では、何のために学会発表を行っていくのだろうか。筆者は、1)眼前の事例や臨床で抱える疑問点や問題点を解決することで、患者さんに還元することができる、2)研究行為を通して、言語化することで、自身の思考や論述に関するスキルの向上が望める、3)学会にて発表することで、自施設以外の療法士と繋がることができる(研究内容が認められれば、その分野の著名な方々からも声が掛かることもある)、4)実績が残ることで(厳密には、学会で発表したものを論文化することで)、臨床に従事した後、研究職や教育職に転職を考えた際の糧になる、などの利益がある。
 上記の目的のうち、4)は若干打算的な観点もあるが、1)〜3)に限っていうならば、直接的に自身の臨床におけるスキルアップに繋がるものと言える。従って、給料を上げることにはつながらないが、専門職としてのスキルアップを目的とした、良好な研鑽の手段の一つであると言えるかもしれない。ただし、所属する施設によっては、給与に直接的に関わる可能性が低いものであり(一部の病院、施設には学会発表を人事評価に加点するところもある)、他者から強要されるものではない。基本的には、自ら選択肢、それらを実施する中で、楽しみを感じつつ、継続できることが望ましい。

     

3.学会発表はいつ頃から挑戦すれば良いか?

 こちらについても正答はない。従って、筆者の経験的なエピソードから、主観的な勧めについて記載していこうと思う。学会には様々な階層がある。療法士の場合は、各都道府県が開催している県単位のもの、複数の県組織が持ち回りで実施している地方単位のもの、そして、協会が実施している全国規模のものである(理学療法士の場合は、これが専門によって、細分化されている)。
個人的な意見としては、県単位および地方単位の学会には、可能であれば、3年目までの比較的新人から中堅に至るまでに挑戦してみても良いかと思う。実際、全国単位のものに比べて、規模も小さく、アットホームな雰囲気で開催されることから、自身の発表に対して、何らかのレスポンスをもらえる可能性が高い。また、自身が所属する施設がある地域の療法士が集まっているため、所属する施設や病院外の療法士との懇親も図りやすい。
 一方、全国単位で行われる学会は、多くの特別講演が開催され、著名な方々も多く登壇される。情報収集の機会としては、秀逸であるが、多くの演題が発表されるため、自身の発表が相当注目されない限り、会場からレスポンスをもらえる可能性は低い。ただし、世間的に価値が高い発表ができた際には、著名な先生から声がかかり、その後のキャリア等にも良好な影響があることも少なくない。

     

4.まとめ

上記に示した通り、学会発表は給与を直接的に上げる手段ではないものの、将来の自分のキャリアに関わるスキルアップや、業績の蓄積、さらには人脈の構築に有効である可能性がある。もし、興味があられる方は、できるだけ、早いタイミングで挑戦してみるのも良いことかもしれません。

     

<最後に>
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