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竹林崇先生のコラム

臨床における研究の最初の扉 -事例検討に取り組んでみる-

UPDATE - 2022.2.21

<抄録>

 リハビリテーションに従事する療法士にとって、研鑽の方法は様々である。その中で、三本の柱と呼ばれる形態が伝統的に存在する。三本の柱とは『臨床』『研究』『教育』と呼ばれるものであり、これらを長きにわたって、伝統的に推奨してきた。現在では、働き方も多様になり、この3本の柱以外の働き方についても注目されるようになってきた。ただし、本コラムにおいては、あえて、この三本の柱における、『臨床』と『研究』の間に存在する『事例検討』について、解説をしようと思う。

     

1.療法士における事例検討の意義

 今回のコラムは基本的には、筆者である竹林と個人的な価値観で書いているものであり、これが真実かどうかはわからない。そういった前提で是非読んでいただけるとありがたい。さて、筆者が事例報告を最初に始めたのは大学病院に就職した1年目の頃からである。月に1例、誰に見せるわけでもなく、学生時代に習ったレジュメに従い、接列ながらも事例をまとめ、文書を書いていたことを思い出す。
 それらを継続して、8ヶ月程度経過した頃、筆者が所属する県の療法士会主催の新人プログラムの報告会があり、そこに提出、発表するために、先輩療法士のチェックの元、事例をまとめることとなった。事例をまとめだすと、『あれが足りない、これが足りない、ここがわかりにくい』と多くのチェックが入った。しかしながら、明確な答えはなく、いつの間にか『先輩療法士は、どうすれば、完成を通告してくれるのか?』という想いのもと、先方の好む形を模索している自分に気づいた。
 2年目は地方の学会に報告を行った。その際に、今でも師匠としたう学術実績のある言語聴覚士に発表の内容を確認していただいた際に、『これは事例まとめではない。あなたやその他の療法士がこうあってほしいと願う想像である』といった類の指摘をいただき、ハッとしたことを覚えている。そして、その時にこれが本質であり、『自身のエゴのような報告の意味のなさ』を自覚したことを覚えている。
 この経験から、臨床の療法士における事例報告とは、眼前の対象者に対し、自分で調べたエビデンスを如何に適応し、眼前の対象者に起こった事実を、客観的にまとめ、考察する、現象を言語化し、形として残す作業であるという認識に至ったのである。すなわち、臨床を科学する初手ということである。

     

2.正確な事例報告を書くために必要なこと

 1.にも示したように、筆者の場合は、学術実績を多く積み、正確かつ明快な事例報告の作成方法を理解していた科学者が近くにいた。これは非常に運が良いことであり、療法士の務める職場や卒業した大学や専門学校に、そういった人材がいるとは限らない。つまり、筆者は非常に運が良かったと言える。
 世の中には、研鑽として研究に打ち込みたいと考える療法士も一定数存在するわけだが、多くの療法士が、こういった環境に恵まれず、事例報告等をまとめる機会なく、大学院等を選択する。そこで、いきなり量的研究や質的研究といった多くの症例を用いた研究に挑戦する。こういった挑戦も全く悪いわけではないが、私の経験上、少し違和感を感じることもある。
 私の好みになるかもしれないが、まずは眼前の疑問を事例報告を通して、言語化、形態化し、それを解くために、より正確なデザインを用いた研究を推進することが、倫理的にも良好なのではないかと考えている。また、事例報告を実施する中で、感情や印象だけでなく、客観的な事実として、事象を検討することで、より解像度の高い、問題点や社会的課題に触れることができるのではないかと考えている。
 では、その研究の第一歩となる可能性のある客観的な事例報告を書くためには、どのような資料があるのだろうか。世の中には、事例報告の記載方法について、様々な書籍が出ているが、筆者自身は、恥ずかしながら、それらの本を読み、参考にしたことがない。今の世の中、非常に有用かつ正確な内容の資料は多く存在する。その代表的な例が、正確な事例報告をまとめる際のガイドラインとして、提示されている『CARE』というものがある。
 このガイドラインは、事例報告に必ず含まなかれば、いけない項目や、事例を考える際の思考について、非常に参考になるものである。また、数的な根拠(エビデンスが比較的確立されているゴールドスタンダードとしてのアウトカム)も重要視されているが、対象者の感想や様子といったナラティブな要素もアウトカムとして、重要視している点が、如何にも事例報告のガイドラインとして、良い形を示していると考えている。
 是非、これらの媒体を利用しつつ、良好な事例報告をまとめる臨床家が増えることを、切に願っている。

     

<最後に>
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