<抄録>
脳出血は,脳内の小血管の障害による一般的な病気の一つである.これらの病態の診断や予後予測には,画像診断が非常に有効であると考えられている.1980年代初頭から,複数の研究者によって,造影剤を使用しないComputed tomography(CT)技術が発展している.造影剤を用いる検査に比べ,造影剤を使用しないCTは,脳出血に対する救急医療においても,例外なく使用されており,臨床現場や臨床試験において,血腫拡大のリスクを層別化するための安価に入手できるツールとして期待されている.また,最近では,CTによるバイオマーカーが研究され,有用な脳出血後の予後予測の指標としても注目されている.本コラムにおいては,CTによる予後予測について,解説を行う.
1.本邦における伝統的なCT技術に予後予測
脳出血は,脳内の小血管の障害による一般的な病気の一つである.これらの病態の診断や予後予測には,画像診断が非常に有効であると考えられている.1980年代初頭から,複数の研究者によって,造影剤を使用しないComputed tomography(CT)技術が発展している.脳出血に関して,CTを用いた予後予測研究では,血腫量が用いられることが多い.簡易的な血腫量の測定は,血腫量(mL)=最大長径(cm)×最大短径×スライス数×1/2,のが用いられる.ただし,これらは簡易の式であり,近年では3Dモデルを用いた報告4も散見する.脳出血に関する状況判断の指標として,金谷らはNeurological Gradingが用い,予後予測をCTの側面から予後予測を実施している(表1, 2).
金谷らの調査によると,視床出血については,ⅡbやⅢbのカテゴリにおいては,死亡例や予後不良例が非常に多くなっている.また,被殻出血についても,Ⅲb以降になると,死亡例や予後不良例が非常に多くなっている.つまり,出血範囲が多臓器に渡り,さらに脳室穿破を呈した際には,死亡例や重症な転機を辿る症例の数が増加すると考えられている.
この傾向は,黒田ら2の報告においても同様で,被殻・視床出血ともに,それらの臓器に収束せず,多臓器へ出血が広がり,さらに脳室穿破をきたした場合には,日常生活活動における自立度の予後も悪化し,死亡率も飛躍的に増加すると報告している.これらから,脳出血において損傷部位の範囲と脳室穿破の有無は,明確な予後予測因子の一つと伝統的な予後予測研究の中でも考えられている.
引用文献
1.金谷晴之,他:高血圧性脳出血における新しいNeurological grading及びCTによる血腫分類とその予後について.第7回脳卒中の外科研究会講演集:265-270, 1978
2.黒田清司,金谷春之:脳出血の画像分類.日臨51-61, 1993
<最後に>
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