TOPICS

お知らせ・トピックス
竹林崇先生のコラム

脳卒中後の上肢機能トレーニングにおける迷走神経刺激の併用効果について(3)

UPDATE - 2022.12.16

<抄録>

 脳卒中は様々な機能障害を引き起こし,後遺症を残す疾患として有名である.その中でも四肢の運動障害は対象者のQuality of life(QOL)の低下に影響を与える障害の一つであり,それらに対する治療法の開発は急務とされている.その中でも上肢の運動障害はQOLの低下に直結すると考えられており,多くの治療法が開発・検証がなされている.近年,脳卒中後の上肢運動障害に対する治療法として,経皮的迷走神経刺激とリハビリテーションプログラムの併用に関する研究が徐々に増加している.未だ本邦においては,一般的な治療法とは言えないものの,世界的には多くの試行がなされている.本コラムにおいては,3回に渡って,脳卒中後の上肢運動障害に対する経皮的迷走神経刺激とリハビリテーションプログラムの併用アプローチに関する現状とそのメカニズム,そして,エビデンスについて,まとめた上で解説を行う.

     

1.脳卒中後の上肢運動障害に対する経皮的迷走神経刺激に関するエビデンスについて

 迷走神経刺激(VNS: Vagus nerve stimulation)に関する研究の一端については,『脳卒中後の上肢機能トレーニングにおける迷走神経刺激の併用効果について(1)』に示したとおりである.また,加えて,『脳卒中後の上肢機能トレーニングにおける迷走神経刺激の併用効果について(2)』では,VNSによる脳卒中後の上肢麻痺に関する回復のメカニズムに関しては神経可塑性の観点からGDF11(Growth differentiation factor11)といったマーカーの観点からも解説を行った.本コラムにおいては,臨床において,汎用性が確保されている非侵襲性の刺激様式を有するTranscranial vagus nerve stimulation(TVNS)とリハビリテーションプログラムの併用アプローチのエビデンスに関して述べていく.
 TVNSに関するランダム化比較試験はまだまだ限られており,エビデンスを構築するためのシステマティックレビューやメタアナリシスを実施するために,正確性の高い臨床研究がまだまだ少ないというのが現状である.例えば,Yanら1の研究においては,システマティックレビューの過程において,85の論文をスクリーニングしている.そこから,正確性の吟味を重ね,最終的には対象論文を4本にまで絞っている.4名のランダム化比較試験に含まれる対象者は合計101名であり,これらのデータを対象として,メタアナリシスが実施されている.メタアナリシスの結果は,麻痺の程度を示すFugl-Meyer Assessmentの上肢運動項目に関してはMD=3.58、95%CI [2.34, 4.82], P<0.00001, I2=0%)日常生活活動における自立度を測定するFIM(Functional independence measurement)に関しては(MD=3.86、95%CI [0.45, 7.27], P=0.03, I2=0%),麻痺手のパフォーマンスレベルの機能を測定するWolf Motor Function Testに関しては(MD=3.58、95%CI [1.97, 5.18], P<0.0001, I2=0%)といった結果が示された.これらの結果は,対照群であるリハビリテーションプログラムを単独で実施した場合に比べ,TVNSを併用したリハビリテーションプログラムは有意な上肢機能の改善を認める可能性が示唆されたことを示している.
 これらの結果から,TVNSを併用したリハビリテーションプログラムの効果は,対象論文が少ないものの,ある一定の効果を示すエビデンスが示唆された.しかしながら,TVNSを実施することによる長期効果や実生活における麻痺手の使用行動に与える影響,刺激部位の妥当性,刺激パラメータの検討,最適なリハビリテーションプログラムの選定などは,全く不明なままである.さらに言えば,TVNSを実施することによる副作用に関する検討がほとんどなされていない.今後,安全かつ効果的な刺激方法を確立するためにも,正確性の高いデザインで実施される多くの研究が必要であると思われる.

     

2.まとめ

 本コラムにおいては,VNSとリハビリテーションプログラムの併用の可能性,メカニズム,エビデンスに触れた.論文数は少ないものの,VNSおよびTVNSの可能性が垣間見えた結果であった.今後,正確性の高いデザインを採用した研究が増え,現在指摘されている限界を解決する解析が進むことが期待される.

     

引用文献
1.Yan, L., Qian, Y., & Li, H. (2022). Transcutaneous Vagus Nerve Stimulation Combined with Rehabilitation Training in the Intervention of Upper Limb Movement Disorders After Stroke: A Systematic Review. Neuropsychiatric Disease and Treatment, 18, 2095-2106.

     

<最後に>
【12月6日他開催:姿勢制御に関係する各要因の臨床応用】
本講習会は前回の「姿勢制御に関係する各要因の基礎知識」の応用編になります。前回の内容を踏まえ、加齢や疾患が各要因へ与える影響や、臨床での評価方法やアプローチ方法などを紹介することで、聴講者が臨床で姿勢制御障害に対峙した時の引き出しを増やすことを目的としています。
https://rehatech-links.com/seminar/12_6/

     

【オンデマンド配信:高次脳機能障害パッケージ】
1,注意障害–総論から介入におけるIoTの活用まで–
2,失認–総論から評価・介入まで–
3,高次脳機能障害における社会生活支援と就労支援
 –医療機関における評価と介入-
4,高次脳機能障害における就労支援
 –制度とサービスによる支援・職場の問題と連携–
5,失行
6,半側空間無視
 通常価格22,000円(税込)→8,800円(税込)のパッケージ価格で提供中
https://rehatech-links.com/seminar/koujinou/

前の記事

脳卒中後の上肢機能トレーニングにおける迷走神経刺激の併用効果について(2)

次の記事

バーチャルリアリティシステムを利用した自宅での自主練習としての上肢リハビリテーションの現在の立ち位置について