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竹林崇先生のコラム

リアルタイムに提供されるウェアラブル端末からのフィードバックは,脳卒中後の麻痺手の使用頻度に影響を与えるのか?(1)

UPDATE - 2022.12.21

<抄録>

 脳卒中後,対象者のQuality of life(QOL)の低下につながる症候の一つとして,麻痺手の使用行動の減退がある.QOLの向上を考えた際に,一部の研究者は,国際生活分類における麻痺手に関わる身体機能・構造のアウトカムよりも,活動・参加のアウトカムの向上の方が,寄与率が高いと述べている.しかしながら,脳卒中後手の機能が中程度に保たれていたとしても,多くの対象者は日常生活において麻痺手の使用を大幅に減らすと考えられている.そこで,近年ウェアラブル端末からリアルタイムに提供されるフィードバックの効果が様々なシチュエーションで検討されている.本コラムにおいては,2回に渡り,ウェアラブル端末によるリアルタイムのフィードバックが脳卒中後の麻痺手の使用行動にどのような影響を与えるかについてまとめ,解説を行う.

     

1.上肢麻痺を呈した対象者に対するウェアラブルセンサによるリアルタイムフィードバックに関する研究について

 現在,脳卒中は世界で3番目に多い死因として考えられている.以前に比べると延命率は高まっているものの,恒久的な後遺症によりQuality of life(QOL)の低下を生じる疾患とされている.さて,そのQOLの向上を考えた際に,一部の研究者は,国際生活分類(ICF: International Classification of Functioning, Disability and Health)における麻痺手に関わる身体機能・構造のアウトカムであるFugl-Meyer Assessmentの上肢機能項目,Action Research Arm Test,Wolf Motor Function testよりも,活動・参加のアウトカムであるMotor Activity Logや活動量計と言った使用行動の変化を示す値の改善が,QOLの向上に寄与することが一部の研究者によって示されている1.
 脳卒中後のリハビリテーションにおいて,麻痺手の使用行動に変化を与えるための方法はいくつか存在する.その中でも有名なものがConstraint-induced movement therapy(CI療法)である.さて,それらの方法に加え,近年注目されている方法にリアルタイムに提供されるウェアラブル端末からのフィードバックを用いた手法が注目されている.
 これらの手法は,過去に歩行による全身活動量に関わる研究において,様々な検討がなされている.例えば,ウェアラブル技術を用いた歩行活動の増加について,障害を有さない健常人においては,健康を促進する上で,有用であることが複数の研究によって示されている2, 3.また,歩数の目標を定めた上でのリアルタイムフィードバックは,歩行活動を増加させ,それに伴い肥満度や血圧などの生活習慣病に関わる幾つかの健康状態を改善するための効果的な方法とも言われている4.
 これらの研究結果を参考に,最近では歩行数と言ったパラメータを手の使用頻度に置き換えて,脳卒中後の麻痺手の使用行動を測り,そのフィードバックによって麻痺手の使用行動に行動変容を及ぼすことができるかどうかを検証する試みが多く場所で実施されている.
 近年の研究をレビューすると,まずは慢性脳卒中患者を対象としたパイロット研究にて,麻痺側の手首に装着した加速度計による麻痺手の動作量の測定に基づいて,療法士が定期的かつ詳細なコーチングセッションを実施したものがある.この研究では,麻痺手の活動に対する対象者の意識は非常に強くなったが,実際の活動量の改善は認めなかったと報告している.
 さらに別の研究においては,対象者の活動のレベルに応じて,振動刺激を提供するリストバンドが考案され,使用されている(対象者の活動レベルがある一定の閾値を下回った場合に,振動によってフィードバックが与えられ,麻痺手の使用への意識が喚起されると言ったシステム).この研究は,麻痺手の使用をウェアラブル技術によって提供されるリアルフィードバックにより,対象者に『使うことを思い起こさせる』ことを目的としたアプローチとして設計されている.この研究の結果,振動刺激を提供するリストバンドを,プロトコル上推奨されている時間(午前8時から午後8時)の約79%において,対象者が装着することができたと報告されている(33名の脳卒中発症後0から3ヶ月が経過した対象者).さらに,対象者が,1時間に1度程度の振動刺激の頻度を好み,より頻回の振動刺激によるフィードバックは好まないことを示した.また,この研究においては,フィージビリティースタディーのため,介入前後における麻痺手の使用行動の改善は認めたものの,対照群を設定していないため,その結果は限定的なものとして取り扱われている6.

     

引用文献

1. Kelly, Kristina M., et al. “Improved quality of life following constraint-induced movement therapy is associated with gains in arm use, but not motor improvement.” Topics in stroke rehabilitation 25: 467-474, 2018.

2. Izmailova E.S., Wagner J.A., Perakslis E.D. Wearable Devices in Clinical Trials: Hype and Hypothesis. Clin. Pharmacol. Ther. 2018;104:42–52

3. Sidman C.L., Corbin C.B., Le Masurier G. Promoting Physical Activity among Sedentary Women Using Pedometers. Res. Q. Exerc. Sport. 2004;75:122–129

4. Bravata D.M., Smith-Spangler C., Sundaram V., Gienger A.L., Lin N., Lewis R., Stave C.D., Olkin I., Sirard J.R. Using Pedometers to Increase Physical Activity and Improve Health A Systematic Review. JAMA. 2007;298:2296–2304

5. Whitford M., Schearer E., Rowlett M. Effects of in home high dose accelerometer-based feedback on perceived and actual use in participants chronic post-stroke. Physiother. Theory Pr. 2018;36:799–8096. Da-Silva R.H., A Moore S., Rodgers H., Shaw L., Sutcliffe L., Van Wijck F., Price C. Wristband Accelerometers to motiVate arm Exercises after Stroke (WAVES): A pilot randomized controlled trial. Clin. Rehabil. 2019;33:1391–1403

     

<最後に>
【12月6日他開催:姿勢制御に関係する各要因の臨床応用】
本講習会は前回の「姿勢制御に関係する各要因の基礎知識」の応用編になります。前回の内容を踏まえ、加齢や疾患が各要因へ与える影響や、臨床での評価方法やアプローチ方法などを紹介することで、聴講者が臨床で姿勢制御障害に対峙した時の引き出しを増やすことを目的としています。
https://rehatech-links.com/seminar/12_6/

     

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