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作業療法におけるConstraint-induced movement therapyはどのような位置付けか?

UPDATE - 2021.9.4

1.Constraint-induced movement therapy(C I療法)とは?

 CI療法とは,脳卒中後の上肢麻痺に対するアプローチであり,多くのランダム化比較試験により,エビデンスが確立されてきた.ただし,そのエビデンスも,麻痺側の肩・肘・前腕がある程度随意的に動くこと(Brunnstrom recovery stage [BRS]にて,stageⅢ以上),母指を含む手指の伸展が10度以上,手関節の伸展が20度以上可能なことが条件として挙げられている1.もちろん,それ以上重度な障害を有する対象者に対しても,効果のエビデンスが複数示されてはいるものの1,ガイドライン などに用いられるエビデンスの主となる部分は前者を対象としている.従って,対象が明確になっていることからも,いくら効果のエビデンスが確立されているからと言って,CI療法単独で,全ての問題点が解決するとは考えられていない.

     

2.どのようなアプローチがCI療法と呼べるのか?

 CI療法は,リハビリテーション分野においては,トランスレーショナルスタディの代表格と言われている.トランスレーショナルスタディとは,日本語で橋渡し研究と言われており,研究者らが基礎研究を重ねて発見した新しい医療のシーズを,実際の医療機関や現場で使用できる医療技術・医薬品として,実用化することを目的に実施する研究のことを指す.CI療法も,1900年代初頭から実施されてきた,サルやラットを対象とした麻痺手の積極的使用に関する研究結果を,ヒトに応用したアプローチ方法である.

 基礎研究から,ヒトに対するケース・スタディ,ケース・シリーズを経て,小規模コホート試験,ランダム化比較試験が実施され,実際のプロトコルとエビデンスを確立してきた.さらに,それらの手法は試験が終了するごとに,論文として一般に広く公表され,知識や技術を公平に公表する,臨床疫学の思想を元に発展してきた.

 そう言った背景もあり,CI療法の具体的な手法に関する特許などは存在せず,名称使用などの権利保護もほとんどなされていない(一部,遠隔CI療法を実施する際のデバイス等では特許の取得や名称独占の手続きが取られている). こう言った背景もあり,CI療法は,開発元のUniversity of Alabama, Birmingham(UAB)において,年に1〜2度のトレーニングコース(筆者も参加経験あり)を開いているものの,受講後に発行されるのはAttending of Certification(参加証明)だけであり,CIセラピスト(療法士)などのインストラクター等の資格の発行や,認定制度などは公には存在しない.UABにて,CI療法の研究やトレーニングコースに関わる理学療法士のMorris,そして作業療法士のBowmanから,筆者にメールにて,”We have not ever designated the title of UAB official CI therapist.  Actually, we don’t refer to ourselves as a CI therapist. Instead, we refer to ourselves as an OT or PT who performs CI therapy. (私たちは、UAB公式CIセラピストという肩書きを指定したことはありません。 実際、私たちは自分たちのことをCIセラピストとは呼んでいません。代わりに、私たちは自分たちのことを、CI療法を行うOTまたはPTと呼んでいます。)“と言った旨の連絡があった.

     

3.作業療法とCI療法は別の療法なのか?

 上記に示したとおり,対象者が抱える全ての問題点をCI療法のみで解決できるか?と言う問いに対して,答えはもちろん”No”である.つまり,CI療法は,作業療法を実施する上で,対象者の希望する作業を実現するための一ツールに過ぎない.したがって,対象者の病態に応じて,CI療法の限界にあたる部分については,他の手法と組み合わせ,その限界を補う必要がある.さらに言えば,対象者自身が自己実現のためのリハビリテーションにおける手法の選択に関して,CI療法以外の手法による介入を望めば,その他の手法を用いて介入する必要性も十二分にある.この点は,エビデンスを基盤とした医療や,シェアド・デジション・メイキングなどの考え方を取り入れ,対象者のコミュニケーションをよく取った上で,対象者にとって最良の結果をもたらす意思決定を促す必要がある.

 最後に,CI療法は,リハビリテーションにおける理学療法や作業療法における目的を解決するための一手法に過ぎず,その取捨選択は、療法士と対象者が合議にのっとりなされるべきである.この大前提を誤解すると,手法に依存した理学療法,作業療法を展開する恐れがあるので,十分気をつけたいところである.

     

<引用文献>

  1. 1.TAUB, Edward, et al. Constraint-induced movement therapy combined with conventional neurorehabilitation techniques in chronic stroke patients with plegic hands: a case series. Archives of physical medicine and rehabilitation, 2013, 94.1: 86-94

     

<最後に>

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