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脳卒中後の重度感覚障害に対するアプローチの評価と実際(2)

UPDATE - 2022.9.14

<抄録>

 感覚障害は脳卒中後に生じる障害において,最もポピュラーなものの一つである.感覚障害によるフィードバックの欠如は,時に運動障害にも影響を与え,身体のパフォーマンスを低下させる恐れがある.本コラムにおいては,それらに対するアプローチの実際と評価について,論述を行うものとする.

     

1.脳卒中後の感覚障害に対するアプローチの評価と実際(2)

 2010年までの挙げられている脳卒中を含む神経疾患における感覚障害に対する測定方法の検討に関するシステマティックレビューでは,2つの測定方法が頑強性の基準をみたし,臨床においても比較的使いやすい評価として示されている1.2つの測定方法とは,Fugl-Meyer Assessment(FMA)の感覚のセクション2と,Nottingham sensory assessmentのErasmus MCバージョン(改訂版)3とされている.特に,前者のFMAの感覚セクションの評価が一般的な感覚障害に対する検査であることに対し,後者のNottingham sensory assessmentのErasmus MCバージョン(改訂版)は,軽い触覚,受動的に測定される運動感覚,それぞれの感覚に対する過敏/鈍麻と言った指標を検査の中に含んでいることが特徴とされている.ただし,両方の評価ともに,感覚障害を評価する上で,非常に重要な能動的な感覚に関する項目は含んでいない.したがって,今後,より高いレベルでリハビリテーションの成果を定量化するために,有効かつ信頼性の高い体性感覚障害に対する評価を開発する必要があると考えられている.
 まず,最初に,感覚障害を評価する際に,問題となるバイアスについて,記載する.最初に,能動的な感覚障害について述べる.感覚障害を評価する上で非常に重要なことは間違いないが,対象者に麻痺等の運動障害があった場合,測定が不可能および重大なバイアスとなりうる可能性があり,測定を実施する上で,最低限の運動基準が必要であることが考えられている.次に,認知障害について述べる.感覚機能とは,感覚・知覚・認知,と三階層に分別されており,それぞれが感覚障害の結果に影響を与えるとされている.例えば,そのうちの認知機能に大きな障害があった場合,対象者の主観に頼ることの多い感覚障害の評価においては,非常に大きなバイアスになることが考えられる.認知障害の中でも,特に影響を与える障害として,ワーキングメモリの障害が挙げられている.これらの基準について,感覚障害を評価する前にしっかりと規定しておく必要があると考えられている.
 さて,ここからは,能動的な感覚評価をはじめとした高次の感覚処理に関する測定方法の利点と欠点を簡潔にまとめていく.最初は,触覚識別テストである.触覚識別テストは,標準化された評価であり,一定空間に設けられた様々な目の荒さの隆起を能動的または他動的に人差し指で触れさせ,それらの違いを弁別させる評価である4.この評価は高い信頼性と良好な妥当性が実証されており,反応性も十分担保されている5.しかしながら,欠点としては,検査に30分以上時間を有すこと,認知機能や注意機能が低下している対象者にとっては非常に難易度が高い検査と考えられている5.
 次に,米国国立衛生研究所が開発した体性感覚ツールボックスに含むように検討された,Brief Kinesthesia testは,非常に信頼性が高い評価であるとされている6.この検査は,天井効果がなく,定量的に感覚障害を示すことができ,検査キットも低価格で,検査時間も5分程度で実施でき,加えて,統制された指示系統により,認知障害による交絡の可能性も制限することができる優れた感覚障害に対する評価である.ただし,一部の研究者によっては,いくつかの年齢層において,幅広いばらつきが記録されたと報告されいている.また,能動的な感覚評価が含まれており,最低限のリーチ能力が必要とされているが,これに必要な能動的な運動基準は記載されていない.Brief Kinesthesia Testは脳卒中後の運動機能の測定値と強い相関があり、さらに改良を加えれば、脳卒中後の対側および同側の上肢の運動感覚を測定する有用な臨床指標になる可能性があることが示唆された。

     

2.おわりに

 今回は,触覚識別テストとBrief Kinesthesia Testについて特徴を述べた,次回以降も,感覚障害を測定するツールについて,紹介を実施していく.脳卒中後の重度感覚障害に対するアプローチの評価と実際(3)に続く.

     

引用文献
1.Connell L, Tyson S. Measures of sensation in neurological conditions: A systematic review. Clin Rehabil . 2012;26(1):68-80.
2.Fugl-Meyer AR, Jääskö L, Leyman I, Olsson S, Steglind S. The post-stroke hemiplegic patient. 1. A method for evaluation of physical performance. Scand J Rehabil Med. 1975;7(1):13.
3.Stolk-Hornsveld F, Crow J, Hendriks E, Van Der Baan R, Harmeling-Van Der Wel B. The Erasmus MC modifi cations to the (revised) Nottingham Sensory Assessment: A reliable somatosensory assessment measure for patients with intracranial disorders. Clin Rehabil. 2006;20(2):160-172.
4.Carey LM, Oke LE, Matyas TA. Impaired touch discrimination after stroke: A quantiative test. Neurorehabil Neural Repair. 1997;11(4):219-232.
5.Carey LM, Matyas TA. Training of somatosensory discrimination after stroke: Facilitation of stimulus generalization. Am J Phys Med Rehabil. 2005;84(6):428-442.
6.Dunn W, Griffi th JW, Morrison MT, et al. Somatosensation assessment using the NIH Toolbox. Neurology. 2013;80(11 Suppl 3):S41-S44.

     

<最後に>
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