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脳卒中後のアプローチにおける
『機能』と『行動』の関連性

UPDATE - 2021.7.2

1,過去の考え方における機能と行動の関連性


 従来のリハビリテーションにおける考え方としては,ボトムアップ的な思考が一般的なものであった.ボトムアップ的な思考とは,還元主義に則った考え方である.還元主義とは,物事の道理の中に,階層構造を見つけ出し,上位階層において成立する基本的な法則や基本的な概念は,『いつでもそれよりも下位の法則と概念で書き換えが可能』とする考え方である.リハビリテーション領域における例を出すとするならば,国際生活分類(ICF: International Classification of Function, Disability and Health)における,活動や社会参加の原因の全ては,心身機能・身体構造のレベルの問題によって全てが解決されるといった考え方があげられる.ただし,現在のICFでは,階層構造を敷いておらず,心身機能・身体構造,活動,参加の間には,階層構造は存在せず,因果関係の方向性は,そう方向性とされている(図1).しかしながら,ICFの前身であった,国際障害分類(ICIDH: International Classification of impairments, Disabilities and Handicaps)においては,階層関係が明確に示されており,前述の還元主義的な意味合いが深くなっている.

ダイアグラム

自動的に生成された説明
図1. 国際生活分類における分類表
ダイアグラム

自動的に生成された説明
図2. 国際障害分類における分類表



2,脳卒中後の麻痺手に対するリハビリテーションにおける適合モデルは?

 さて,脳卒中後の上肢麻痺におけるリハビリテーションに関して,どちらのモデルが適合するのであろうか.これは筆者の肌感覚ではあるが,上肢麻痺の程度が極重度の場合(Brunnstrom Recovery Stageにおける上肢/手指 stage Ⅲ未満)では,流石にICIDHのモデルに従うことが多い印象であるが,中等度以上の麻痺(Brunnstrom Recovery Stageにおける上肢/手指 stage Ⅲ以上)となるとICFのモデルに従う可能性が高いのではないかと考えている.その論拠は,過去の文献およびランダム化比較試験を紐解くと見えてくる.
  Andrewsら1)は,脳卒中患者が作業療法室でできている活動と実際に自宅でやっている活動の間に,大きな違いがあると述べている.全患者のうちの25-45%の患者で,実際の自宅にて,作業療法室ではできているのに,実生活においてはできていない活動が認められたと報告している.
また,Huseyinsinogluら2)や,Brazelら3)は,CI療法と他の療法を比較するランダム化比較試験の結果から,ICFにおける心身機能・身体構造のアウトカムについては,CI療法と他療法の間に有意な効果は認めないにもかかわらず,活動のアウトカムに当たる,実生活における麻痺手の使用行動については,CI療法の方が他の療法に比べ有意な効果を認めたと報告している.これらの研究の結果は,心身機能・身体構造のアウトカムが例え改善したとしても,介入方法や環境によっては,活動のアウトカムに波及する程度が変わる可能性を示唆している.つまり,還元主義的な働きだけでなく,活動に特化した何らかの要素が存在することを示唆している可能性がある.


<参考文献>


1,Andrews K, et al. Stroke recovery: he can but dose he? Rheumatoid Rehabil 18: 43-48, 1979
2,Huseyinsinoglu BE, et al. Bobath concept versus constraint-induced movement therapy to improve arm function recovery in stroke patients: a randomized controlled trial. Colin Reha 26: 705-715, 2012
3,Barzel A, et al: Home-based constraint-induced movement therapy for patients with upper limb dysfunction after stroke (HOMECIMT): a cluster-randomized, controlled trial. Lancet Neural 14: 893-902, 2015


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