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脳卒中後上肢麻痺に対するエンドエフェクター型ロボットとエクソスケルトン型(外骨格型)ロボットの効果の違いについて

UPDATE - 2022.2.14

<抄録>

 脳卒中後の上肢麻痺に対する効果のエビデンスが確立されているアプローチの一つにエンドエフェクター型のロボットとエクソスケルトン型(外骨格型)のロボットが存在する.元来,ロボット療法に関するランダム化比較試験が少なかった頃は,さまざまなロボットのメーカーや制御形態に関わらず,全てのロボットを『ロボット療法』と一括りにした上で,エビデンスが算定されていた.しかしながら,近年では,脳卒中後の上肢麻痺に対して,用いられるそれぞれのロボット毎にランダム化比較試験がある一定数実施されるようになり,制御方式毎のエビデンスが求められ始めている.本コラムにおいては,脳卒中後上肢麻痺のリハビリテーションにおいて,多く用いられるエンドエフェクター型ロボットとエクソスケルトン型ロボットの効果の違いについて,述べる.

     

1.エンドスケルトン型ロボットとエクソスケルトン型(外骨格型)ロボットの背景

 脳卒中後の上肢麻痺は,患者の85%に生じ、そのうち50%は慢性的な後遺症として,残存することが言われている.また,脳卒中後の上肢麻痺は日常生活活動の障害をきたすとともに,社会参加に関わるアウトカムの低下を導くと言われている.
 昨今の脳卒中後の上肢麻痺に対するリハビリテーションにおいて,練習量は機能改善の重要な要素の一つと言われている.しかしながら,多くの国における公的保険制度では,脳卒中発症後に療法士によって対象者に提供できる練習量には限りがある.また,療法士のマンパワー等も不足しているのが現状である.
 さて,脳卒中後のロボット療法は,効果のエビデンスが確立されているアプローチの一つである.アメリカ心臓/脳卒中学会のガイドラインにおいても,『比較的重度の上肢麻痺を呈した対象者の練習量を確保するために勧められる手法』といった立ち位置を確立している.そういった背景の元,様々なロボットが開発され,ランダム化比較試験を用いた実証試験において,その効果を示されている.その中でも,最近ではエンドエフェクター型,エクソスケルトン型といったロボットの制御形態における分類がなされるようになってきた.元来,ロボット療法に関するランダム化比較試験が少なかった頃は,さまざまなロボットのメーカーや制御形態に関わらず,全てのロボットを『ロボット療法』と一括りにした上で,エビデンスが算定されていた.しかしながら,近年では,脳卒中後の上肢麻痺に対して,用いられるそれぞれのロボット毎にランダム化比較試験がある一定数実施されるようになり,制御方式毎のエビデンスが求められ始めた結果と言えるだろう.
 エンドエフェクター型のロボットは、麻痺側上肢の末梢の一部がロボットと固定されており,そこポイントを起点にロボットを制御する方式のロボットを指している。一方,エクソスケルトン型のロボットは,各関節毎といった複数のポイントで麻痺側上肢が固定されており,関節毎に正確な運動を実現しながら,ロボットを制御するようにデザインされたロボットを指す.以降の項では,これら制御方式の異なるロボットによって,脳卒中後に生じる上肢麻痺に対する練習の効果にどのような影響を与えるかについて,記載していく.

     

2.脳卒中後上肢麻痺に対するエンドエフェクター型ロボットとエクソスケルトン型ロボットを用いた練習の効果の違いについて

 Veerbeekら1が2017年に実施したシステマティックレビューおよびメタアナリシスにおいては,脳卒中後の上肢麻痺(肩・肘・前腕,または上肢全体の機能改善 [手指を除く])に対するエンドエフェクター型ロボットとエクソスケルトン型ロボットの効果の違いに関して,エンドエフェクター型ロボットは対照群に対して有意な改善を認めたが,エクソスケルトン型ロボットは対照群に対して有意な改善を認めなかったと報告している.
 一方,Bertaniら2のシステマティックレビューおよびメタアナリシスにおいては,エクソスケルトン型ロボットにおいては対照群に比べ有意な改善を認めたが,エンドエフェクター型ロボットでは,対照群よりも有意な改善を認めなかったと報告している.ただし,Bertaniらの研究では,エクソスケルトン型ロボットの研究に組入れられた論文の中に,PEDro scaleにおける妥当性審査を満たさない,小規模な研究も複数含まれていたと報告されている.
 最後に,2020年に実施されたLeeら3の試験結果について述べる.この研究では,ランダム化比較試験を用いて,脳卒中後に上肢麻痺を呈した38名の対象者において,直接的にエンドエフェクター型ロボットとエクソスケルトン型ロボットの効果を比較した研究である.この研究の結果,エンドエフェクター型ロボットがエクソスケルトン型ロボットに対して,Wolf Motor Function TestおよびStroke Impact Scaleといったパフォーマンスおよび社会参加に関わるアウトカムの有意な改善を認めたと報告している.
 これらの結果から,現在の状況では,脳卒中後の上肢麻痺に対するロボット療法の制御方式としては,エンドエフェクター型ロボットの影響力が若干強い印象がある.

     

引用文献

1.Veerbeek JM, et al. Effects of robot-assisted therapy for the upper limb after stroke: a systematic review and meta-analysis. Neurorehabilitation and neural repair. 2017; 31: 107-121
2.Bertani R, eta l. Effects of robot-assisted upper limb rehabilitation in stroke patients: a systematic review with meta-analysis. Neurological Sciences, 2017: 1-9
3.Lee, SH, et al. Comparisons between end-effector and exoskeleton rehabilitation robots regarding upper extremity function among chronic stroke patients with moderate-to-severe upper limb impairment. Science report. 2020; 10: 1806

     

<最後に>
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