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竹林崇先生のコラム

臨床における脳卒中後上肢運動障害に対するミラーセラピーに関する効果のエビデンス (2)

UPDATE - 2022.12.5

<抄録>

 ミラーセラピーは脳卒中後の上肢運動障害に対するアプローチの一つであり,効果のエビデンスもメンタルプラクティスと並んで保証されている.また,鏡と簡単に使用できるボックスがあれば,実施可能なアプローチであり,臨床における一般汎化性も高い.多くの研究において効果が検証されているが,一般的にはミラーセラピー単独のアプローチではなく,他の効果が保証されたアプローチに付随する形で実施することが推奨されている.本コラムにおいては,脳卒中後上肢運動障害に対するミラーセラピーの効果について,2回に渡り,解説を行っていく.第二回は,脳卒中後に生じる後遺症に対するミラーセラピーの臨床試験の結果から得られた効果に関する知見を解説する.

     

1.臨床における脳卒中後上肢運動障害に対するミラーセラピーに関する効果

 脳卒中後の上肢運動障害に対する効果は多く報告されている.例えば,Parkらは,生活期の脳卒中後上肢麻痺を呈した対象者に対し,ミラーセラピーの効果を検証するために,偽ミラーセラピーの比較を目的としたランダム化比較試験を実施している.その結果,ミラーセラピーを実施した群のほうが,Fugl-Meyer Assessmentの上肢機能評価,Box and Block Test等の機能評価において,有意な改善を示したと報告した.
 また,運動障害に対する効果以外の部分でもいくつかの研究において報告がなされている.例えば,脳卒中患者の痛みに対するミラーセラピーの効果については,ミラーセラピーは様々な状況で生じる痛みの軽減に有効であることが示されている2, 3.また,半側空間無視についても,Dohleら4は,ミラーセラピーによって無視側に対して事故誘発運動が認められることで半側空間無視を軽減することを示した.さらに,体性感覚障害に対してもミラーセラピーは効果を示すとされている4, 5.これらのように,臨床研究において,脳卒中後の様々な後遺症に対して,ミラーセラピーの効果が示されている.

     

2.臨床における脳卒中後上肢運動障害に対するミラーセラピーに関するエビデンス

 ミラーセラピーに関しては,多くのランダム化比較試験による効果の検討がなされている.よって,それらの結果についてシステマティックレビューとメタアナリシスによる効果のエビデンス探索までなされている.
 Thiemeらは,コクランデータベースのシステマティックレビューにおいて,脳卒中後の対象者が有する後遺症である上肢運動障害,疼痛,半側無視に対するミラーセラピーの効果について,検討を行っている.この研究では,1982年以降に実施された研究を対象に,ミラーセラピーに関する正確性の高い論文を62編選択している.62編の内訳は,57編がランダム化比較試験,5編がランダム化クロスオーバー試験であった.
 対象者の平均年齢は59歳であり,研究に含まれたミラーセラピーの実施頻度は,週3-7回,1セッション15-60分(60分ミラーセラピーを実施するのは非常に驚きを感じた)で,実施期間は2-8週間行われた(平均週5回,1セッション30分,4週間).これらの研究を対象に対照群との比較についてメタアナリシスを実施したところ,ミラーセラピーは運動障害および日常生活活動に対して中等度の効果のエビデンスが示された.しかしながら,対照群に実施されたアプローチの強度が高い場合,有意差は認められていなかった.また,上肢の運動障害や日常生活活動の他に,半側無視と疼痛に関しては,低質の効果のエビデンスが示された.

     

まとめ

 ミラーセラピーについては,脳卒中患者の上肢運動障害,日常生活活動,半側無視,疼痛に対して中等度から低質の効果のエビデンスが示唆された.ただし,上肢の運動障害や日常生活活動においても,対照群に用いられたアプローチの強度が低い時に限られるとも言われている.また,アメリカ心臓/脳卒中学会のガイドラインなどでは,ミラーセラピーやメンタルプラクティスは単独で使用するよりは,他の効果のエビデンスが確保されたアプローチと併用することを進めている.したがって,これらの知見を理解しつつ,ミラーセラピーの臨床での利用を勧められたい.

     

引用文献

  1. 1.Park JY, Chang M, Kim KM, Kim HJ. The effect of mirror therapy on upper-extremity function and activities of daily living in stroke patients. J Phys Ther Sci 2015;27(6):1681-1683.
  2. 2.Bowering KJ, O’Connell NE, Tabor A, Catley MJ, Leake HB, Moseley GL, et al. The effects of graded motor imagery and its components on chronic pain: a systematic review and meta‐analysis. Journal of Pain 2013;14(1):3‐13
  3. 3.Thieme H, Morkisch N, Rietz C, Dohle C, Borgetto B. The efficacy of movement representation techniques for treatment of limb pain: a systematic review and meta‐analysis. Journal of Pain 2016;17(2):167‐80
  4. 4.Dohle C, Pullen J, Nakaten A, Kust J, Rietz C, Karbe H. Mirror therapy promotes recovery from severe hemiparesis: a randomized controlled trial. Neurorehabilitation and Neural Repair 2009;23(3):209‐17
  5. 5.Acerra NE. Is early post‐stroke upper limb mirror therapy associated with improved sensation and motor recovery? A randomised‐controlled trial [PhD thesis]. Sensorimotor Dysfunction in CRPS1 and Stroke: Characteristics, Prediction and Intervention. Brisbane, Australia: University of Queensland, 2007

     

<最後に>
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