TOPICS

お知らせ・トピックス
竹林崇先生のコラム

脳卒中後手に麻痺を有した対象者の実生活における麻痺手の使用は,麻痺手の機能以外にどういった要素に影響を受けるのか?

UPDATE - 2022.12.7

<抄録>

 脳卒中後手に麻痺を有した対象者の実生活における麻痺手の使用は,麻痺手の機能レベルと関連するものの,それ以外の要因も多く含まれると考えられている.それらは,実際の臨床において,臨床家が肌感覚で理解しているものもあれば,ランダム化比較試験の結果,解離を認める場合もある.しかしながら,それらの要因がどういった要素に起因するかについては,明らかになっていない.本コラムでは,最新の研究を紐解き,麻痺手の不使用に関わる要因について,解説を行っていく.

     

1.脳卒中後手に麻痺を有した対象者の実生活における麻痺手の使用は,麻痺手の機能以外にどういった要素に影響を受けるのか?

 脳卒中後,多くの対象者は上肢に麻痺を有し,それらが対象者のQuality of life(QOL)を低下させる一要因になっていると考えられている.さらに,Quality of lifeに影響を与える脳卒中後の麻痺手に関わるアウトカムとしては,国際生活機能分類(ICF: International Classification of Functioning, Disability and Health)身体機能・構造レベルのアウトカムであるFugl-Meyer Assessmentの上肢項目やAction Research Arm Test(ARAT)よりも,活動・参加レベルのアウトカムであるMotor Activity Logや活動量計の値の方が,寄与率が高いと言うことが,一部の研究者から示されている1.
 上記の研究からも,ICFにおける身体機能・構造のアウトカムの改善を如何に活動・参加のアウトカムの改善につなげるかが非常に重要であると考えられている.しかしながら,近年では,アプローチの特徴によって,ICFにおける身体機能・構造のアウトカムに影響を持つものと,活動・参加のアウトカムに影響を持つものがある可能性があるとも考えられ始めている.例えば,Huseyinsinogluら2の研究では,脳卒中後に上肢麻痺を有した対象者に対して,ボバースコンセプトとConstraint-induced movement therapy(CI療法)を提供した群の結果を比較検討している.その結果,両群間に,ICFにおける身体機能・構造のアウトカムであるWolf Motor Function Testの改善量については,有意な差が認められなかったものの,ICFにおける活動・参加のアウトカムであるMotor Activity Logについては,CI療法の方が,ボバースコンセプトに比べ,有意な改善を示したと報告している.また,Brazelら3の研究においても,同様の傾向が報告されており,アプローチ方法が,アウトカムに影響を与えうる可能性については,複数の研究でその可能性が示唆されている.
 さて,ではどういった要素を含む介入が,ICFの活動・参加のアウトカムに対して,影響を持ちうるのであろうか.この点について,Chenらが研究を実施している.彼らは,脳卒中後の麻痺手の自然環境下における使用行動について,運動能力に加え,社会認知的要因がどの程度影響を及ぼすかを明らかにするために研究を行っている.この研究の結果,研究の対象者の運動能力を考慮した上で,脳卒中後の自然環境における麻痺手の使用行動は,それぞれの対象者の社会的状況(キーパーソンがおらず,1人で生活しているかどうか)と対象者の麻痺手の能力に対する自己効力感によって有意に予測できることが明らかになった.対象者が,1人で生活をしていない場合については,麻痺手の使用行動は,両手動作,片手動作ともに,有意な増加を示した.また,麻痺手の能力に対する自己効力感をより強く感じている場合,麻痺手の使用傾向が有意に強かったと報告している.また,特に麻痺手の運動能力が重度から中等度の対象者(Fugl-Meyer Assessmentの上肢項目<50.6)については,1人でいない状況下にて,麻痺手の使用行動が有意に増えることが明らかになった.これらの結果から,アプローチ内容に『自己効力感』に対する要素が含まれていることと,対象者自身にキーパーソンとなる介助者が存在し,麻痺手の使用に対する心理的安全性が担保されていることが,実生活における麻痺手の使用行動の改善には重要な要素であることが示されている.

     

引用文献

  1. 1.Kelly, Kristina M., et al. “Improved quality of life following constraint-induced movement therapy is associated with gains in arm use, but not motor improvement.” Topics in stroke rehabilitation 25: 467-474, 2018.
  2. 2.Huseyinsinoglu BE, et al. Bobath concept versus constraint-induced movement therapy to improve arm function recovery in stroke patients: a randomized controlled trial. Colin Reha 26: 705-715, 2012
  3. 3.Barzel A, et al: Home-based constraint-induced movement therapy for patients with upper limb dysfunction after stroke (HOMECIMT): a cluster-randomized, controlled trial. Lancet Neural 14: 893-902, 2015
  4. 4.Chen YA, et al: The essential role of social context and self-efficacy in daily paretic arm/hand use after stroke: an ecological momentary assessment study with accelerometry. Arch Phys Med Rehabil. Online ahead of print, 2022

     

<最後に>
【12月6日他開催:姿勢制御に関係する各要因の臨床応用】
本講習会は前回の「姿勢制御に関係する各要因の基礎知識」の応用編になります。前回の内容を踏まえ、加齢や疾患が各要因へ与える影響や、臨床での評価方法やアプローチ方法などを紹介することで、聴講者が臨床で姿勢制御障害に対峙した時の引き出しを増やすことを目的としています。
https://rehatech-links.com/seminar/12_6/

     

【オンデマンド配信:高次脳機能障害パッケージ】
1,注意障害–総論から介入におけるIoTの活用まで–
2,失認–総論から評価・介入まで–
3,高次脳機能障害における社会生活支援と就労支援
 –医療機関における評価と介入-
4,高次脳機能障害における就労支援
 –制度とサービスによる支援・職場の問題と連携–
5,失行
6,半側空間無視
 通常価格22,000円(税込)→8,800円(税込)のパッケージ価格で提供中
https://rehatech-links.com/seminar/koujinou/

前の記事

臨床における脳卒中後上肢運動障害に対するミラーセラピーに関する効果のエビデンス (2)

次の記事

脳卒中後の上肢麻痺に対する経頭蓋直流電気刺激を用いた筋力トレーニングの効果について