1.Neurorehabilitationの本質とは?
近年,脳卒中後の上肢麻痺に対するリハビリテーションアプローチにおいて,Neurorehabilitationという言葉が広く使われている.この内容を鑑みると,磁気刺激や直流電気刺激,等の非侵襲型の脳刺激や,薬剤(抗Nogo-A抗体製剤等)併用療法,さらには,ロボット療法,メンタルプラクティス,末梢神経電気刺激,Brain Machine (Computer) Interfaceといった脳と末梢の運動を直接的に結びつけるような,いわゆる先進的な工学機器を使ったアプローチを指している印象をもたれる人も多いのではないだろうか.これらの機器は,1)神経系の抑制機構を利用し,より効率の良い学習を促す,2)イメージや感覚入力により,より効率の良い学習を促す,3)損傷により途絶した神経の連結を代償的に補い,運動学習を促す,といった目的で実施されているものであり,リハビリテーションの真の目的の一つである,実生活(日常生活活動)における麻痺手の復権(役割の再獲得)とは意味合いが少し異なるものが多い.一般的に先行研究を鑑みても,Neurorehabilitationと呼ばれる手法に含まれるアプローチは,国際生活機能分類(ICF: International Classification, Function, disability and health)における心身機能・身体構造に関するアウトカムに影響を与えるものが多く,先ほどもあげた生活動作や日常生活活動,さらには対象者にとっての意味のある活動(作業)という観点が含まれる,活動や参加のアウトカムに影響を与えるものが非常に少ない.つまり,Neurorehabilitationという言葉がリハビリテーションという『全人的復権』という言葉を宿す限り,その本質は別,ICFでいう活動,参加のアウトカムに影響を与えうる振る舞いにあると筆者は考えている.
2.NeurorehabilitationにおけるCI療法とは?
Neurorehabilitationと呼ばれる介入の中には,療法士が対象者と対峙し,コミュニケーションと運動療法を組み合わせた,脳卒中患者の行動変容を目的としたアプローチも含まれる.1980年代から,基礎研究の結果を実臨床に応用したトランスレーショナルスタディの代表格であるConstraint-induced movement therapy(CI療法)もその代表的な一例である.CI療法の主要なコンポーネント1は,1)麻痺手の量的練習(Constraining use of the more-affected upper extremity),2)反復的課題指向型アプローチ(Repetitive task-oriented tarainig [ShapingとTask practice]),3)練習によって獲得した上肢機能を実生活に転移させる行動心理学的戦略(adherence-enhancing behavioral; strategies [Transfer package]),から構成されている.
また,それぞれの項目にはサブコンポーネントが存在しており,1)には,①ミットによる抑制(mitt restrain),②対象者に麻痺手を使うことを思い起こさせる様々な仕掛け(any method to continually remind the participant to use the affected upper-extremity ),2)には,①ShapingとTask-practice,3)には,①日々のMotor Activity Logの自己管理(daily admiration of the Motor Activity Log),②麻痺手の使用に関する日記の記載(home diary),③日常生活に活動における麻痺手を使用するための障壁を取り除く問題解決技法の指導(Guidance of problem-solving to overcome apparent barriers to use of the affected upper extremity in the real-world situation),④麻痺手の使用に関する対象者との行動契約(Behavioral contract),⑤麻痺手の使用に関する対象者の家族(介護者)との行動契約(Caregiver contract),⑥練習によって獲得した上肢機能の生活動作への割り付け(home skill assignment),⑦日々の臨床場面での療法士による対象者の練習内容の記録(Daily schedule)が含まれる.
これらのコンポーネント及びサブコンポーネントを用い,CI療法は対象者が考える麻痺手を利用した実現したい生活(生き方)を援助する.これがCI療法の本質の一つである.実際に臨床研究においても,これらの反応は色濃く示されている.
引用文献
1.Morris, DM., et al. Constraint-induced movement therapy: characterizing the intervention protocol. Europa medicophysica, 2006, 42.3: 257.
<最後に>
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